管理人はつらいよ   
マンション管理最前線

 案内書 新入居者のためのマンション生活ガイド 




事前に正確な情報を伝えることが大事です

 マンション管理に特許なんてないですから、いいことはどんどん真似します。

 他のマンションで「新入居者のための、○○マンション生活ガイド」という冊子を作っているところがありました。これは、そこの管理人さんが苦労して独自に作ったものですが、イラスト入りのなかなかの力作です。

 彼がなぜ、そういうものを作ったのかというと、原因の一端は、不動産屋のいい加減さです。

 「マンションを仲介する不動産屋っていうのは、ほんといい加減なんだ。ろくすっぽ調べもしないで、口からでまかせを平気で言う。
”大型バイクですか? なんとかおけますよ”
”廊下の端の部屋ですから、部屋の前に廊下に自分の荷物を置いても大丈夫ですよ”
”ゴミの出し方は適当でも、あとは管理人がなんとかしますから”
”ペット、OKですよ”(飼育細則の内容には触れない)
”自転車が3台? 平気平気置けますよ”
”防犯? 大丈夫です。来年には防犯カメラつけるそうです”
”衛星放送のアンテナですか? 自由に付けられますよ”
”一部屋を苦悶式の塾として使いたい? 大丈夫です”
・・・と、何の根拠もないのに平気でOKOKと連発するんだ。だいたい、一度も管理人に挨拶も質問もせずに、マンション内の細かなことが部外者にわかるわけないじゃろが? なんであんなに平気でウソがつけるのか不思議でしょうがないよ。買う客も客で、不動産屋の言うことを鵜呑みにして信じる方がおかしいよ。客も一度も管理人に正確な情報を聞きに来ることがないんだから。どっちもどっちでひどい奴ばかりだよ。そういうのがいざ入居してくると、”そんなの聞いてなかった””禁止だなんて知らなかった”とトラブルになるんだよ。だから、事前に正しい情報を与えておかないといけないんだ。それで私の方で独自で(組合も管理会社も作ってくれないから)、こういう冊子を作って配ってるんだよ」

 この冊子の中には、「ペット飼育は管理規約で禁止されています。ただし、現在特例措置で”一代限り飼育を認められた人”がいます。これは、分譲時の不動産会社の説明で誤解があったための非常救済措置であり、今後新しく入居する人はあくまでも完全に禁止です」といった、大事なことがわかりやすく記載されています。

 その他にも、わかりにくい管理規約をわかりやすく噛み砕いて平易な文に変えて書いたり、生活に直接役に立つ情報を組み込んでいます。また、内容に変更(ゴミの回収方法など)があれば、すぐに新版を作り変えて、常に新鮮な情報を提供しています。

「自転車置き場は、各部屋1台分ずつ用意されています。地面に部屋番号が書かれているので、ご自分の場所をご確認下さい。なお、共用部分に自転車を置くことは管理規約で禁止されています」
(□ちゃんと言っておかないと、「他の人が廊下に置いているからいいと思った」と平気で置きます)
「廊下に私物を置くことは、、”共用部の不法占拠”になりますし、消防法でも禁止されていますのでおやめください。鉢植えもだめです」
「当マンションにはオートバイ置き場はありません。マンション前歩道に置かないで下さい。警察に通報します」
(□何も聞かないで大型スクーターを持ってくる人いますからね)
「駐車場は現在空きはありません。12名の方が待っている状態です」
(□こうやって人数を書いておくと、待つ方も参考になります)
「生ゴミは火曜と金曜。プラスティックゴミは水曜、ビン缶は木曜日・・・・・ ゴミに関する細かな情報は清掃局(123-4567)または、市役所で聞いてください。詳しいパンフレットをもらって、よく読んで覚えてください。なお、当マンションでは、生ゴミはだいたい午前10時くらい・・・・・に回収に来ます」
「当マンションは地元のCATVに加入しているため、契約すれば、いろいろな番組が見られます。また、月々3000円の付加サービス料で30Mの高速インターネットが利用できます。」
「地上デジタル放送には対応していません。当地区の対応年は2007年です。なお、当マンションで受信設備を整えるのは2010年の予定です」

「集会室は誰でも利用できます。2時間500円です。管理員までお申し込み下さい」
「過去の総会議事録・理事会議事録は集会室に保管してあります。閲覧申込書にご記入の上お申し込み下さい」
「当マンションでは、2001〜2004年の間に、3件の空き巣被害、5件の痴漢被害にあっています。この地区は治安は悪いです。ご自分で2ロックにする、インターホンをカメラつきにするなど、防犯対策をとられる場合は、組合の許可は不要です」
(□こういうことは不動産屋は隠しますが、正直に言っておいたほうがいいんです)
「引越しの際は、必ず事前にご連絡下さい。なお、引越し業者から必ず管理室に電話を入れさせて、当日の注意事項を聞いてください。」
(□実際に作業を行う業者と管理人が打ち合わせすることが大事です)
「区分所有法という法律で規定されている通り、マンションに入居すると同時に、あなたは組合員になります。規約を守る義務、組合活動に参加する義務が生じます。管理規約冊子は必ず、前所有者からもらってください」
(□「マンション生活=自由 何してもいい」と誤解しているおバカさんがたくさんいますから、法律のことも教えてあげないと)
「賃貸入居者は所有者から必ず管理規約冊子のコピーをもらって下さい。賃貸入居者も規約を守らなくてはいけません」
「管理員と清掃員の勤務時間は以下のとおりです。昼休みなど、勤務時間以外に用を申し付けないで下さい。緊急時は、セコムセンター(電話123-4567)へご連絡下さい。40分以内に警備員が来ます」
「部屋の中にある”緊急”ボタンは警備会社につながっており、ボタンを押すと自動的に警備員がやってきます。けして、いたずらしないで下さい」
「エレベーターは毎月1回3時間程度、点検のため停止します」
「管理費の払い込み方法は以下の通りです。なお、3ヶ月以上滞納すると、延滞金(年利15%)が加算されますのでご注意下さい。また、名前が公表されることもあります」
「管理組合は、・・・・・・。10名の役員で理事会が組織されていて、任期は2年です。各階から1名ずつ輪番制で選ばれます・・・・。拒否はできません」
「当マンションは分譲時の約束で、全員が地域自治会に入ることになっており、毎年、管理費より、一世帯あたり、3000円の年会費を払っています」

・・・・などなど。役立つ情報や「最初に知っておけばあとで揉めない」情報がいっぱいです。

 これを作った管理人さん、「ベテランだなあ」と思うのは、賃貸入居者のこともよく考えて、これを作っているところです。
「所有者は部屋の管理を不動産屋には任せっきりにしないで下さい。管理規約上、賃借人の行動には所有者が責任を持つことになっています。”不動産屋に任せているから”という言い訳は通用しません」と明記してあります。ちょっと、強気で傲慢に思えるかもしれませんが、これくらい書いておかないとだめなんです。なかなか素晴らしいです。

 「よくこれだけひとりで作りましたネエ。大変だったでしょう?」と聞くと、「こんなもの、1回ワープロ打っちまえば、あとはちょこちょこっと直せばいいだけの話さ。簡単なもんよ。毎回毎回相手に口で詳しく説明するよりは、こういう紙にしたもので説明する方が楽だし、相手もわかりやすいんだよ。証拠も残るしな。でも、本当は管理会社じゃなくて、管理組合が作るもんだよな。じゃなきゃ、せめて、管理会社で雛形つくっておいてくれるとずいぶん楽なのに、会社はそういうことは絶対にしないな」「なるほど。ごもっともですね」(この管理人さん、PCはだめですが、富士通のオアシスというワープロを自宅から持ってきて、文書を作成してます)

 私は、この管理人さんにお願いして、この案内書を一部もらって、自分のマンションに合わせてアレンジを変え、マッチしたものを作り直しました。
 その際、私は、自分のところで使用するにあたって、ひとつ改善しました。それは、この冊子を、新入居者だけでなく、不動産業者にも渡すということです。というのは、不動産業者に事前に正確な情報を与えておかないと無意味だからです。仲介専門の業者というのは、分譲業者と違い、「そんな、たった一部屋売るだけなのに、そのマンションの詳しい内容なんていちいち調べてられねえよ。適当に言っておけばいいんだよ」と、適当なことをいいます。(もしくは大事なことを黙っている) 
 これが諸悪の根源なわけで、すでに契約して買ってしまった客に伝える前に、扱う不動産屋に言っておくことが大事だからです。ですから、私の場合、理事長を説得して、「当マンションを仲介する業者さんは、仲介を開始する際に、”取引開始届”を最初に組合に提出して下さい。届がない業者がマンション内に立ち入ること、お客さんを連れて来ることを禁止します」という看板を貼りました。もちろん、そんな看板なんか「関係ネエよ」という悪質不動産業者もたくさんですが、一部まじめな業者はきちんと届を出してくれます。(こういうものが入口に貼ってあるだけで、「管理がいいマンションだなあ」「防犯のことも考えているなあ」と外部に思わせる効果もあります) その際に案内書を渡して軽く説明すれば、多少なりとも内容をわかってくれます。そうすれば、「ペットOK」なんていう、いい加減な広告は作りません。「ペットは条件付で飼育可能」という広告になります。悪質業者の場合でも、何か質問があって管理室に来た時や、巡回中に「こいつ怪しいなあ。誰だ」「不動産屋です」と会話した時に案内書を渡して、極力正確な知識を与えるようにします。もちろん馬耳東風の業者もいますが。

 とはいっても、今は、居住者も「売ることになりました」と報告してくれる人が少なく、下手すると、契約を終えても報告してくれない人までいるという状態ですから、事前にこの案内書を渡すことができるのは半数に満たない現実です。それでも、ないよりはあったほうがいいです。何事もやらないよりはやったほうがいいのです。

 管理人の仕事は、50%報われたらバンバンザイの仕事です。




2005/7


マンション内でスーツ着ている奴は怪しい。