管理人は超つらいよ   
マンション管理最前線

中国残留孤児問題を考える



 ちょっとマンション問題から離れます。

 2005/7/6、大阪の中国残留孤児32人が「永住帰国が遅れ、現在も苦しい生活を強いられているのは国の責任」と訴えた裁判、大阪地裁は国の責任を認めず、また、「国には自立支援義務はない」と明言し、原告側の要求を退けました。

 残留孤児はほとんどが高齢になってからの帰国で、日本語を覚えられず、生活保護受給家庭が6割という悲惨な状況で、ひきこもりになっている人もいます。また、あまり報道されませんが、こういった貧困家庭の中で、外国人差別を受けながら育った残留孤児の子供、孫たちが、裏社会に入り込み、「残留孤児子孫マフィア」という犯罪者集団も作られており、社会問題となっています。

 なんで、この話題を取り上げたか、というと、実は当マンションの中にも、「あの家族、残留孤児なのよ」という噂をされている世帯があるのです。あくまでも噂で、私もご本人に確認したわけではないのですが、どうやら、本物のようなんです。

 マンションの1室を買う資力があるのですから、”生活に貧窮している”というわけではないのでしょうが、”ギリギリの生活”という感じです。この前も、ゴミ置き場に置いていあった本棚を、「これ、もらっていっていいかな?」と持っていかれました。
 管理人として困っているのは、”言葉”です。日常生活のギリギリの語彙はあるようですが、とにかく、何を言っているのかわからないのです。向こうは一生懸命しゃべっているのに、こっちは、「え? 何ですか? え? どういうこと?」という感じでちんぷんかんぷんなんです。そんなようなこちらの態度に、むこうもイライラして、怒ってしまわれることもよくあります。

 中国残留孤児は、血としては日本人ですが、中国人として育てられていますから、性質的には中国人です。「自分たちが一番偉い」という中華思想を持っている気がします。中国人というのはサービス業としての接客態度は悪いですが、客は店員に対してえばります。「そんなこと管理人に頼むことかよ」と思うような依頼事項も言ってきます。そして、こっちが言葉がわからないと、「理解できないお前の方が悪い」という態度をとります。また、「日本人だったら、そんなことしないだろう?」といったこともするので、いっそう困ります。

 管理人からすると、「わけのわからない言葉を一方的に話す」「管理人の仕事じゃないことまで頼んでくる」「共同生活のマナーがわかっていない」・・・・など、けっこう困りものです。それでも、私としては、「中国人を蹂躙して迷惑をかけた日本人の子孫として、償いの意味もこめて、なるべく親切に対応しよう」と思っていますが、限界があります。とにかく、言葉が通じないのはどうしようもないです。せめて、ゆっくり話してくれれば、まだ理解しやすいのですが、どういうわけか、向こうは言っている言葉はメチャクチャなのに、スピードは早いんです。

 私も中年ですから、「年取ってからは言葉は覚えられない」ということをよく理解できます。残留孤児の皆さんは、帰国後20年たっても、覚えられない人は覚えられないのです。「だめだ」とあきらめた人は引きこもり、いっそう覚えようとしなくなります。孤児同士の世界がすべてで、日本社会に溶け込めません。これでは何年たっても、日本語は話せません。悪循環です。
 そういった状況を放置しておけば、周囲の人間から差別されるのは当然です。こちら側は普通に対応しているつもりでも、中華思想で育てられた頭脳には、「差別されている」という被害意識も持つでしょう。

 日本国は「連れ帰る」だけではなく、その後のケアをほとんど何もしませんでした。国に自立を支援する義務はあります。ほったらかしで済む様な問題ではないのです。

 「戦後補償の問題は解決済み」と国はいいますが、本当にそうなんでしょうか? はなはだ疑問です。
 小泉の靖国問題が語られる際に、古賀率いる「遺族会」の存在がクローズアップされますが、職業軍人の遺族というのは手厚い待遇を受けています。私の知り合いに、レイテ沖で戦死した海軍大尉の未亡人がいますが、この婦人は戦後莫大な遺族年金を受け取っています。ご本人はなにも働かずに、息子2人を大学に入れることもできました。結婚期間はわずか1年だけです。しかし、士官の遺族ということでこういった厚遇を受けるのです。同じ、「戦争で死んだ」のでも、沖縄の激戦で死んだ民間人には何も補償されていません。東京大空襲もそうです。広島長崎の原爆では、原爆症かどうかの認知の差で、お金をもらえる人と、一銭ももらえない人が分かれています。同じヒバクシャであっても。
 外国に関しても、例えば、日本軍が占領して、ほとんどの財産を没収したシンガポールでは、日本軍は奪った財産の代わりに「軍票」という通貨を与えました。しかし、敗戦と同時にそれは貨幣としての価値は無になり、シンガポールの人たちは、奪われたままです。何の補償もありません。
 太平洋戦争で負けて、「すべてを無にして再出発」というならわかるのですが、戦争時の地位に対しての年金が支払われる人もいれば、全財産を盗まれたのにそのまま、という人もいます。後遺症で苦しむ人への医療費支給は必要ですが、それ以外は、「出さないなら全部出さない」「出すなら全部出す」と、公平に行なうべきじゃないでしょうか?
 それに、”自国民”である残留孤児になんの援助もできない国が、外国にODAを垂れ流すのも理解できません。今、日本は国連安保理入りに情熱を傾けていますが、この票集めのために、また、ODAを増やそうとしています。国際貢献は悪いことではありませんが、まず、自国で苦しんでいる国民=同胞を救ってからじゃないでしょうか? 順番が違います。

 2世3世のおぼっちゃん政治家にはそういうことは理解できないのかなあ? 情けない国だ。

 天下りなどの公務員の無駄を省けば、年間100兆円の予算を捻出できるでしょう。金がないわけではありません。



2005/7

暑中お見舞い申し上げます。