管理人はつらいよ   
マンション管理最前線

 駐車場の料金を考える 



 
 今期の役員の中には駐車場を利用している人が多いです。理事会というのは、その年毎の、「○○に関連する人が多い」と、それに関連する話題が取りあげられやすくなることが、よくあります。例えば、小さな子供を持つ親が多いと、「砂場が汚いから、なくそう」「いや、砂を入れ替えよう」・・・、子供に関係する議題があがりやすくなります。

 さて、前回の理事会で、駐車場料金のことが突然話題になったそうです。「最近の不動産のチラシとか見ていると、”駐車場無料”とかよく見るんだけど、うちのマンションはなんで15000円もするの?」「そうだ、世の中デフレの時代なんだから、もっと安くすべきだ」「そうだそうだ」・・・・と、意見が相次いだそうです。まあ、よくあることなんですが、今期は駐車場利用者役員の人数が多いので、けっこう大きな声になったそうです。

 マンション内の駐車場というのは、昔は「一部の人しか置けないような、少ない台数」でした。この場合、「マンション内駐車場を借りられる人と、借りられずに別の場所の駐車場を借りる人との間に、大きな不公平がないように」という配慮から、マンション内の駐車場の使用料は、近隣の月極め駐車場の60〜80%程度に設定していました。今の新築マンションのように、無料とか、1000円などといった格安にはできません。

 そういうわけで、当マンションの場合、現在15000円です。バブル期の一般的な月極駐車場の相場は3万円を越えていましたが、今は、17000円程度だそうです。これくらいの僅差だと、「どうしても、マンション内に置きたい」という人はそんなにいません。そういうわけで、空きが出たときに、ウェイティングリストの1番の人に連絡しても、「いやあ、うちはいいよ。2番目の人に譲るよ。でも、リストには載せておいて」と、断られることがあります。
 理由を聞くと、「今、借りている場所って、うちの部屋の窓から直接見えるところなんで、安心なんだよ。」とか、「今の駐車場のほうが左右の幅が広くて置きやすいんだ。今度空いた場所って、両側にパジェロが置いてあるところでしょ、あれじゃ、狭くって置けないから、やめとくよ」といった答えが返ってきます。いずれにしろ、マンション内の料金が、さほど魅力のある安さではないため、「空いたの! よかった! すぐに入るよ」ということにはならないようです。

 今の新築マンションというのは、「100%駐車場完備」というところが多くなりました。これですと、全世帯分あるのですから、「借りられる人」と「借りられないので、外部の駐車場を利用する人」の格差を考える必要はありません。ですから、自由な料金設定ができます。そのため、「無料」「1000円」「3000円」といった、激安の料金になっているところが多いのです。まあ、駐車場料金が安いことは、不動産会社の分譲販売戦略にとって、大きなアドバンテージになりますから、販売時は「なるべく安く」という設定にしがちです。
 ただ、「一部は平置き、一部は機械式・・・・」というように、条件がすべて同じではない(機械式は出し入れが面倒)ところでは、公平にするために、「平置きは5000円だが、機械は2000円」というように、差をつける場合もあります。

 さて、新築マンションのチラシを見ていると、「うちのマンションの15000円は高すぎる」と思ってしまう利用者さんたち、「値下げする議案を出そう」などと、言い出してしまいました。

 こうなると、うちのフロント社員は、素人にもわかるように説明をしなければなりません。

 「駐車場利用料というのは、全部あわせると年間764万円にもなります。他の、”管理委託費がベラボウに高い、管理会社ボッタクリマンション”では、このお金も管理費会計に組み込んで、それを管理会社がかすめとっていくようなことをしているケースもあります。しかし、管理委託費が安く、健全な運営をしている当マンションでは、駐車場利用料は全額、修繕積立金へまわしています。このため、当マンションは貯金が多く、大規模修繕にあたっても、潤沢な資金があるのです。しかし、駐車場の利用料を値下げすると、修繕積立金が減少することになり、将来、”積立金の値上げ”や”一時金の徴収”が必要になるかもしれません。ですから、安易に駐車場料金を下げることはできません。皆さんが見ているチラシのマンションでは、駐車場の収入を積立金に回すことができないため、たいてい、どこのマンションでも、数年後に積立金の値上げが行なわれています。その結果、駐車場が無料で、「安くていい」と思って買っても、住民が月々払うお金は、そんなに安くない、ということになります。」

 「ふ〜ん、そうなんだ。駐車場を値下げしても、その分、積立金が値上げになったら、意味ないなあ。じゃあ、今のままでいいや。外の駐車場より安いのはたしかなんだし」ということで、一応、落着しました。

 たしかに、素人は、新築マンションの「駐車場100%、そして無料!”といったコピーには惹かれます。これが、不動産屋が売り切るための一時的、そのばしのぎの作戦であることは知りません。だいたい、機械式駐車場で、駐車場料金を無料にすることなんて無理です。機械の維持更新に莫大なお金がかかるのですから。

■ところで、最近の駐車場100%マンションにも、悩みがあります。それは、「全部埋まらない」もしくは、「数年経過したら空きが目立ってきた」ということ。そりゃそうかもしれません。全員が車を持っているというのはそんなにないし、高齢になって手放す人もいるだろうし、「息子が独立したので車といっしょに出て行った」なんてこともあります。こうなると、金額は安いとはいえ、貴重な収入が減ってしまいます。来客用に使ったりするところもあるようですが、手っ取り早いのは、月極め駐車場として外部の人に貸すこと。これだと、一般相場の料金で貸せますから、大きな収入になります。

 しかし、注意しなければならないのは、「1台分でも、外部の人に貸すと、”課税対象事業”とみなされて、駐車場全体の利用料に税金が課せられる」ということです。例えば、100台ある駐車場の場合でも、たった1台分を外部に貸すことで、100台分全部の駐車場料金に税金がかかってくるそうです。気をつけましょう。(「申告しなければばれないよ」と脱税しているマンションもあるそうですが)
※これ、素人考えだと「外部に貸した分の料金だけに課税されるのでは? 全体というのはおかしい」と思うんですが、いろいろなマンション管理士さんとかのサイトを見ていても、みんな「全部」と書いてあります。でも、その根拠がかいていなくて、よくわかりません。なんでなんだろう??
ちなみに最新(2011)国税庁のHPを探してみたら、http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/shitsugi/shohi/02/26.htm

マンション管理組合は、その居住者である区分所有者を構成員とする組合であり、その組合員との間で行う取引は営業に該当しません。
 したがって、マンション管理組合が収受する金銭に対する消費税の課税関係は次のとおりとなります。

イ 駐車場の貸付け………組合員である区分所有者に対する貸付けに係る対価は不課税となりますが、組合員以外の者に対する貸付けに係る対価は消費税の課税対象となります。

ロ 管理費等の収受………不課税となります。

と書いてありました。これを文面どおりに読むと、「組合員以外に貸した場合、その分は、課税される」と解釈できます。つまり、「全部」ではない、ということです。「組合員」という括りなので、「賃貸入居者」がどうなるかが微妙ですが。とにかく、わかりやすい表現ではなく、解釈が難しいところです。




2005/7   2011/12追記