管理人はつらいよ   
マンション管理最前線

 植栽計画ってないの? 


 
 ある程度の大きさのあるマンションには、植栽はつきものです。マンションの一部と考えていいと思います。特に、当マンションのように(自称)高級なマンションでは、敷地が広く、植栽もたくさんあります。隣接する境界線にはグルッと木が植えられています。

 このサイトには一級建築士の方も来訪されているみたいなので聞きたいのですが、マンションを設計する際に、植栽のこと(配置、木の種類・・・)を決めるのは誰なんでしょうか? それとも、建築の勉強の中には植物のことも入っていて、建築士の方がすべて決めているんでしょうか?

 というのも、植物というの手入れは大変だし、建物と違って成長するし、根が広がるし、虫がわくこともあるし、管理が大変なのに、「何にも考えないで闇雲に植えてないか?」というマンションが多いからです。やはり、設計の段階で、優秀な造園業者がアドバイスして、植栽管理長期計画というものも作っておくべきだと思います。

 この参考写真のマンションはまだ新しく、木も小さいですが、狭い(幅30センチくらいかな?)植栽スペースにぎっしりと木が植えられています。当マンションでも、このような狭い植栽スペースはいたるところにあり、そこの木が20年以上の歳月とともに、巨大化し、根が壁を圧迫し、傾いたり、壊してしまっているところもあります。木が大きくなると、根も大きくなるということをわかっていないんじゃないの? と、疑問に思うんです。写真のマンションも20年たつと、タイルの壁が倒れるかもしれません。植栽管理で上物は切りますが、根のことまで管理しているところは少ないです。お金もかかります。ものすごい広大なスペースがあり、いくら根が伸びても構わない、というならいいんですけど、マンションの場合は、そんなわけにはいきませんから、けっこう狭いところに無理して植えています。設計の段階で、「このスペースなら、何年たってもあまり大きくならない、根も広く貼らない、この種類を植えよう」といった長期的視野にたった計画を立てないんでしょうか? 建物は長期修繕計画というのがありますが、植栽にも必要です。

 桜とかケヤキとか大型の樹木を植えているマンションでは、根によって、地面が隆起したり、電柱が傾いたり、大きな被害が起きています。新築マンションの広告の中には、「桜並木を配置しました。数年後の春には立派な花見ができます」などと宣伝しているところもありますが、この分譲会社、根のことはちゃんと考えているんでしょうか?

 ただし、設計者がきちんと計画を作成しても、それがうまくいくとは限りません。住民の中に「土を見ると何か植えたくなる病」の人がいっぱいいるからです。専用使用権のある専用庭でもなく、完全な共用部分なのに、勝手に、無断で植物を植えてしまうのです。草ならまだいいんですが、木を植えられると困ります。草花はけっこうまめに水をやったり、可愛がるんですが、木は植えたらそのまま、というケースが多いのです。伸びても剪定などしません。虫がわいても知らん振りです。長い年数の間には、「勝手に植えた人が転出していってしまった」という樹木も多く、「持ち主がわからない」「もともとあった木なのか、あとから植えたのか判別不能」というものがたくさんあります。建築設計図には、植物のことは書いてありません。ただ、建設当初の写真を見ると、今ある樹木の半分以上は、あとから誰かが勝手に植えたものだと推測できます。当マンションくらいの規模だと、植栽にかかる費用は年間で100万円を超えますが、これの50万円以上は「私物にかかわる費用」だということです。私的な費用を管理組合の会計から出しているのです。昨年の秋、台風で、大きな樹木が1本倒れました。その際、駐車場の車両を傷つけました。持ち主は当然「組合で弁償してくれ」と要求しました。役員の中には、「共用部の樹木なんだから、組合で払うべき」という意見が多かったですが、「あの木は、あとから誰かが植えた木だよ。だから、マンションのものじゃない。マンションで修理代を払うんじゃなくて、植えた人間に払わせるべき」と議論になったこともありました。
  「植えるのはやめて、鉢植えとかプランターにしてくれ」と言いたいところですが、これだと、強風で倒れたりすると困るんです。こういう人たちって、自分の鉢植えなのに、面倒みなかったりするからです。結局、台風のあとなど、管理人が、倒れた鉢、こぼれた土を後始末します。

 また、植栽に関しては、住民によって、意見がばらばらです。「緑は好きだから、たくさんあればあるだけいい」「地球環境保護のためにはCO2対策が大事だ。雑草だって、酸素を出している、雑草も刈るべきではない」なんて人もいます。「緑嫌い」「虫がわくから嫌い」「はっぱがベランダに入ってきて掃除が大変。切って下さい」という人もいます。上の階の人は、見てるだけなのであまり関心がなく、「緑は、あったほうがいいんじゃない」程度の消極的な好きな人もいれば、下の階の人は、虫の被害などで、「植栽もっと切って」という人もいます。下の階の中でも、「日が当たらないから切って」「目隠しとして大事だからもっと植えて、高くして」「西日をさえぎるから木は有効」「木で隠れていると空き巣が入りやすいから、切って、見通しをよくして下さい」と、意見はバラバラです。

 それに、隣地との境界にある樹木に関しては、その隣の人の意見も大事です。

 植栽管理の基準って、いざ作ろうとしたら、すごく大変かもしれません。管理会社に任せられたら、きっとフロントマンは逃げるでしょう。

 ただ、いずれにしても、共用部分に、組合に無断で勝手に自分の好きな木や草を植えるのはやめて欲しいです。自分専用の私有地じゃないんですから。

 やはり、分譲時点で、長期計画や植栽管理基準を決めておき、重要事項説明でそれを納得してもらって購入してもらうのがいいんじゃないでしょうか? 設計士さんの能力が問われます。


2005/8

ここは連結送水管です。緊急時のことを考えると、ほんとは植栽にしないほうがいいんだけどね。
ひどいマンションになると、植栽が伸びて、送水管が消えてしまっているところもあります。