管理人はつらいよ　　　
マンション管理最前線

　貧乏人である私にとって１００円ショップ（または９９円ショップ　税別）は身近な存在です。

　この夏、どこへも遊びにいけなかった私は、「ちょっと遠出して川遊びでもするか」、と、突然思いつき、キャンプの準備をしました。といっても、準備するのはツェルト（テントの簡易版）とランタンだけ。カセットコンロと鍋とカップ麺を食事用にします。

　ところが、ランタンが壊れていました。「学生の頃からずっと使っていた年代ものだし、別のを買おう。でも金がないから１００円ショップで探そう」と、買い物に行ったら、いいのがありました。単２電池４本用の立派なしっかりしたつくりのプラスティック製のランタンです。「これが１００円か？　それにしてはしっかりした作りだなあ。普通、山の専門店に行けば、最低でも２０００円はするのに、１００円ショップはすごいなあ。今回１回だけ持てばいいから、これを買おう」と、買って帰りました。家に戻って、電池を入れて点灯させると、思った以上に明るく、配光性もよく、広い範囲を明るく均一に照らします。「こりゃいいなあ。めっけもんだ」と、さっそくキャンプにＧＯ！

　でも、落とし穴がありました。ランプの玉がたった３０分で切れてしまいました。その後は、念のために持っていった懐中電灯でしのぎました。「つくりはしっかりしているのに、肝心の電球が粗悪品じゃ、しょうがねえなあ」と思ったしだいです。本物のランタン（電灯式）だと、必ず、内部に予備電球が入っているのですが、１００円には当然ありません。家に戻って再度１００円ショップにいって、交換用の電球を探したのですが、売ってませんでした。最初から使い捨ての発想なんですねえ。でも、３０分で１００円じゃ、高いなあ。

　さて、１００円ショップというのは、「こんなに安くていいの？」と思うものもあるものの、いざ使ってみると、「全然切れない鋏」「水をいっぱいにいれると、取っ手が壊れるバケツ」「正確ではないメジャー」など、バッタモンがいっぱいあります。でも、客は、「１００円だからしょがねえや」と、あきらめて文句を言いません。レジの横の壁にも、「１００円なりの品質です」と、開き直った声明が貼られています。

　ほんと、１００円ショップって面白いです。なんでも１００円にするために、”文房具屋で５０円で買える分度器も１００円で売られている”という、「普通よりも高いじゃん！」という商品もあります。



　さてと、管理人の話に戻ります。

　日本人は、物に関する価格については、わりと正確に判断できる観念を持っているものの、人的サービスについては、よく理解できていない気がします。
　一銭でもお金を払ってサービスを受けていると、「この店員は、金をもらっているのに、この態度はなんだ！」とか、真剣に怒る人がいます。時給７５０円のハンバーガーショップの店員に怒るよりも、時給５０００円くらいもらっている高級公務員の仕事っぷりを批判したほうがいいと思います。ハンバーガー屋より働かないよ。働かないうえに、無駄遣いや横領に必死になってるし。最悪。
　今さかんに公務員の人数を削減することがうたわれていますが、雇用の確保を考えると、人的削減よりも、給与削減のほうがいいんじゃないでしょうか？　高級官僚は９５％カット、下っ端職員も５０％カット。それでも一般の中小企業の待遇よりはいいでしょう。ただし、能力のない人間、働かない人間、不祥事を起こした人間は、クビにしていいです。民主党の言う、削減額なんてすぐに達成できます。

　管理人に対する苦情にしても、管理人がいくらもらっているのか全然知らないで、とにかく怒る人がいます。「私たちの管理費から金をもらっているくせに、ちゃんと働かない」とか、よく言えますね。経験豊富な大の大人が、高校生なみの時給で働いているというのに、それも、あなたがたが知らないところですごい苦労しているというのに。規則を守らずに他人に平気で迷惑をかける悪質住民ほど、文句も声高にいいます。

　それとは別に、管理会社の発表している「管理員人件費」を鵜呑みにして、「こんなに給料もらっているのに、たいして働かない」と、怒る人もいます。これは管理会社側の責任なので、住民に罪はないのですが、実態は、あんな数字はただのつじつま合わせに過ぎません。正確ではありません。「福利厚生費」「研修にかかる費用」「採用にかかる費用」「人事の事務手数料」といった、こじつけの理由で持っていかれるピンハネもすごいです。まあ、もっとも、住民が「人件費＝全部管理人の懐に入る」と勘違いすること自体、世間知らずだと思います。人材派遣会社が、派遣先の会社からもらっている「人件費」を全額その人に渡したら、会社経営をやっていけないでしょう。

　ですから、公明正大にするなら、「管理人の給与明細」を公表させるのが一番です。

　当社「�株ﾑ加減」では、委託費の中の管理員人件費は変わっていないのに、「会社が不況なので」と、全社員の給与カットが行なわれました。でも、これもおかしいですよね。組合さんからもらっている額はかわらないのに、給料を下げるなんて。ある種の契約違反のような気がします。
　
　管理員というのは、１００円ショップのランタンなんです。本当は２０００円以上の価格にしないと、きちんと機能するものが作れないのに、無理やり１００円にしているのです。ですから、粗悪品なのは当然です。そういう人間しか雇用できないのですから。管理人に文句を言いたい人、批判したい人は、２０００円払ってください。１００円しか払わないくせに文句をいうなんてとんでもないです。また、１００円のランタンに予備電球がないように、１００円の管理人だと、代務員も本当は派遣できません。
　ただし、１００円ショップの中にも、「これは当たりだ。良品だ」というものが、まれにあるように、「こんな安い給料で、こんなに優秀な勤務をしてくれるんだ。」という人もいます。こういう人には素直に感謝してください。８割方は無償ボランティアみたいなものです。

（ただ、「５０円の分度器を１００円で売る」のように、委託で払っている料金の価値もないほどひどい管理人も実在しますが）


　今、どこのマンションでも時流に流されて、「管理委託費削減」（管理会社に払っているお金）を是にしているところが多いですが、管理会社としての儲けを減らしたくないと考えている連中は、下請けの費用を削ろうとします。管理人なんてまっさきに削られます。１００円が７０円になってしまうのです。これじゃ、まともな管理なんてできません。

　組合の皆さんは、人件費の「費用対効果」をよく考え、きちんとコスト計算して、「なんでも削る」ではなく、「必要なものは、むしろ値上げする」「不要なもの、不当に高いものは削る」というふうに、委託費の各項目について、個別に考察して、トータルで削減していただきたいと思います。

　まあ、とにかく、管理人の仕事っぷりに文句をいいたいなら、最低でも、年棒３００万円（管理人が実際にもらう額として）は払うべきです。直接雇用が一番いいと思いますけどね。


　なんかいろいろ考えてきたら、公務員＝マンション管理会社に思えてきました。どちらもボッタクリです。
　そういえば、マクドナルドの残業代不払いも、ものすごい金額だったそうで、ほんと、ひどい会社です。「ドナルドハウスに寄付をして、病気の子供たちを助けています」なんて宣伝する資格なし！
　

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2005/9

ゆっくりと山登りでもしたいなあ。金も暇もないけど。