管理人は超〜つらいよ
マンション管理最前線
こんな難癖つけられたらやってられないです |
管理人にとって、一番嫌なのは、自分や組合役員をスルーして、会社に直接苦情を言う人たちです。特に、その苦情が”難癖としか思えない言いがかり”の場合は困ります。
ネット上の或るサイトで発見した、「管理人への苦情」ですが、詳細はわかりませんが、現場からすると難癖としか思えないものでした。そして、その苦情に対してのレスが、「その管理人はやめさせろ」というものばかり。情けない人ばかりです。
<内容>
○苦情主は、主婦。妊娠中で体の動きが多少不自由がある。
○市のゴミ回収のルールでは、「ダンボールはたたんで出す」ということになっているが、「私は妊娠中のため、ダンボールをたたむことはできない」という主張。
○そのマンションには、たたまないで出す人がたくさんいるらしく、掲示板ではなく、エレベーター横に、「ルールを守ってください」という掲示が出されていた。「掲示は掲示板だけにして欲しい」。
○清掃局に質問したら、「妊婦の人はたたまなくてもいいですよ」と言われたらしい。
○清掃”業者”にそういわれたので、たたまないで、ゴミに出した。
○その後、管理人から手紙が来て、「きちんとたたまないとだめです。今回は私がかわりにたたんでおきました」と書かれていた。
○清掃局に「たたまなくていい」と言われたのに、なんで注意されなくてはいけないのか、憤慨。
○どうやって、そのダンボールを出した人間の名前を知ったのか? その管理人が気持ち悪い。
○「いつも、その管理人に監視されているのではないか?」という脅迫観念で、精神的に不安になり、ストレス。
○夫が、管理会社に対して、「管理人のために妻が精神的不安定になっている。もし、流産でもしたらどうしてくれるんだ!」と苦情を言った。
○管理会社の対応は、「2日間の出勤停止」だけだった。これではおさまらない。やめさせて欲しい。
これを見て、読者の皆さんはどう思われるでしょうか? 「そうだそうだ、そんな管理人はやめさせてしまえ」と思いますか? 私はそう思いません。この管理人は、仕事熱心な優秀な管理人だと思います。
<私の反論>
○「ダンボールをたたんで出す」というのは、その地域の自治体で公式に表明された市民のルールである。ルールを守らないゴミは回収してもらえず、その場に残される。ルール違反者のために、管理人は無償でたたんであげる作業を行なわなくてはならない。代わりにたたんで出してくれるなんて、素晴らしい管理人である。
○ルール違反者に対して、注意を行なうのは、「理事会がしっかり機能していない組合においては、しかたなく管理人がやらなくてはいけない、非常にストレスのたまる、嫌な仕事」である。それをしてくれるなんて、素晴らしい管理人である。
○現在、通販を利用する人が多く、そのダンボールをゴミに出す場合、送り状をはがさずに出す人が大勢いる。本当は、「送り状を含め、粘着テープ類はリサイクルの支障になるため、はがしてから出してください」と指示されているはずだが、剥がす人はごくごく少数。送り状が残っていれば、誰かを特定することは至極簡単。ゴミに関しては、注意しないと、その人は違反を繰り返すため、いやいやでも、注意せざるをえない。
○このダンボールが妊婦からだされたものかどうか、などは、わからないし、関係ない。ゴミのルールに例外を作るなら、そのことを詳細に説明した文書を、その自治体は配布すべき。管理人は、決められたルールに従うしかない。
○掲示板を毎日きちんと読む人は少なく、どうしても読んで欲しい重要な連絡事項は、一番目立つエレベータに貼ることはよくあること。掲示板を読まない人がいることが悪い。
○「私は妊婦で力がありません。ダンボールをつぶすことができないので、仕方なく、そのまま出させていただきました。このことは、清掃”業者”に電話して許可を得ています」といった説明文を書いて、ダンボールに貼ってくれれば、管理人も清掃局員も理解できて、「しかたない」と回収してくれるだろうが、何も書かないで、出せば、ただの違反ゴミでしかない。
(ちなみにわがマンションでは、律儀な住民がいて、「もうボロボロなので、この古着はリサイクルできないので、燃えるゴミとして出しました。これは清掃局の人に聞いて確認をとってあります」と、説明書きをつけて出してくれる人がいます。頭が下がります)
管理人に理由を説明することもしないで文句を言うな。
○この苦情主、「自分は妊婦でも、だんながいるでしょう。ご主人にたたんでもらえばいいじゃないですか」という、別の人からの批判に対して、「夫は普通とは違う時間帯の勤務をしており、ゴミを出せないんです」と弁解。おいおい、ダンボールをたたむ作業は、家の中で、だんながいる時間にやってもらい、奥さんが、すでにたたんでおいたダンボールを、朝出せばいいだけの話。たたんであるほうが、部屋からゴミ置き場に運ぶのも楽なはず。この弁解、まったく理由になっていない。
それに管理人はいちいち、すべての家庭内の事情を知っていなければいけないのか? 精通できるはずがない。一軒一軒の事情に合わせて管理しなければならないのか? そんなの聖徳太子だってできないよ。ルールにしたがって画一的な仕事をするしかない。だいいち、家庭内のことを理解しようとする管理人は、個人情報保護至上主義の現代、けむたがられる。 「家庭内のことを知れば怒られる」「家庭内のことを知らないと怒られる」、どっちにしても苦情が来る。そんなに優秀な管理人が欲しいなら、それなりの委託費を払ったらどうなのか? 安い給料でこきつかっておいて、高級な文句を言うな。
○この苦情主、清掃局のことを、「清掃局」といったり、「清掃業者」といったり、マチマチ。行政のことをちゃんと理解していない。
○「いつも管理人に監視されているようで怖い」なんていうのは、被害妄想であり、管理人はそんなに暇ではありません。被害妄想の責任まで押し付けられ、「もし流産したら、どうしてくれるんだ」なんていう、言いがかり、脅迫としか思えない、おかしな苦情を受ける会社もたまったもんじゃないです。管理人に、知られたくないなら、きちんと粘着テープを剥がして出せばいい話です。(本当に「妊婦だけに異常に執着する変態」だったら、怖いけどね)
とにかく、こんな難癖でクビにされていたら、たまらないです。結局は、ルールを守れない不良住民の犠牲です。
By the way
自治体の役人の対応の「ムラ」にも、我々管理人は迷惑を受けています。
管理規約とか使用細則とか法律や条令、自治体のルールなど、そういった明文化されたものを我々は根拠にして働いています。その根拠にブレがあるのは困るのです。今回も、「妊婦だったらいいですよ」と軽い気持ちでいったのでしょうが、ゴミの主が妊婦かどうかなんて、こっちはわからないです。違反は違反なんです。収集員だってわからないんです。いい加減なことは言わないで欲しいです。
役人サイドとしても、ゴミのルールを決めた部署と、実際に収集にあたる清掃局員とで、見解の相違があります。「納豆のプラスティック製容器もきちんと洗ってください」と、ルールの説明書には書いてあっても、実際に運用が始まって、「そんな面倒なことやってられないわよ」「洗う洗剤や水、下水、などを考えたら、リサイクルしないで燃やしたほうが、トータルでは環境負荷は低いでしょ」と苦情を言われれば、「リサイクルしなくていいです」と、口を滑らす人もいるでしょう。現場のことを良く知らない、家庭内でゴミの処理をろくにしない、市役所本庁の男性役人が考えたルールなんてザルです。いざ運用が始まると不都合なことがいっぱい出てきます。苦情が来ると、役人は打たれ弱いので、「できる範囲でいいですよ」とか、適当なことをいって、苦情主の矛先を変えようとします。また、苦情に対応して、分別ルールを微妙に変えていたりしますが、このマイナーチェンジをきちんと広報していないため、混乱が起きています。
実際に回収する係員も、「ルールどおりに選別してたら、ほとんどのゴミを積み残ししなくてはいけない。しょうがないから、ルール違反でも、持って行こう」という考えの人と、「持って行ってしまうと、”分別は適当でいいんだ”と安心してしまい、ルール違反を続ける人がいる。ゴミ置き場が汚くなるけど、我々はあえて、規則をきちん守って、違反を許してはいけないんだ」と残していく人もいます。
事務方の対応もマチマチ、現場の収集員の対応もマチマチだと、我々は何を基準にしていいのかわからなくなります。実際問題、「この分別はだめですよ」と住民に注意したら、「駅前のゴミ置き場でも、私と同じ出し方のゴミがあったけど、回収して行ったわよ」などと反論され、「管理人のくせに、いい加減なこと言わないでよ」と逆に注意されてしまうこともあります。真面目にルール守って、地球環境保護にがんばればがんばるほど、住民からの評価が下がったりするのです。やりきれないです。面倒くさがりやの管理人の中には、違反ゴミをまとめて、別のビニールに入れて、適当にカモフラージュして、持って行ってもらう人もいます。たしかに、この方が楽ですが、「リサイクル工場の人があとで大変だろうなあ」とか「リサイクルできるものを燃やしてしまうなんて」「地球に負担かけちゃうなあ。温暖化が進み、南の島の人が水没するかもしれない」・・・・といろいろ心配してしまう、「民度の高い」管理人にはそういういい加減なことはできません。
役人さん、ルールを決める時は、もっと詳しく実情を調べ、念入りに準備して、完璧なルール(実用上問題ないもの。例外規定を作るなら、それもきちんと明記する)を策定してください。実用化にあたり、ムラがあるのは困ります。我々もよりどころがありません。
それにしても難癖としか思えない苦情を、「そうだそうだ」と思う人が多いという現実、つらいです。「真面目に政策論議をしても誰も聞いてくれなかった」と嘆いている岡田民主党代表(9/12現在)、今のあなたなら、我々の気持ちを理解できるでしょう。