管理人はつらいよ   
マンション管理最前線

銀行員の質がひどすぎる 名義変更作業が大変

2006/5 追記して書き直し


 

 
当社、梶u飯加減」のオフィスは、当マンションからずいぶん離れたところにあります。このため、フロントマンはあまり当マンションには来ません。また、銀行に関する業務も、会社側でやるのが大変なので、管理人に任せられている項目がけっこうあります。マンションの管理組合が利用する銀行というのは、マンションの近くにある銀行が多いため、会社の経理の社員よりも、管理人が行くほうが近いのです。

 そんなわけで、このマンションの管理員室には、「管理員は銀行へ行っております。○時頃戻ります」という表示板があります。というか、私が作りました。

 ところで銀行というと、合併・統廃合を繰り返し、店舗の数が激減し、行員も減り、銀行によっては過酷なリストラも行なわれているようです。そういったリストラの弊害が行員の質に、もろに悪影響を与えているような気がします。あの三菱自動車もそうですが、あれだけ世間に叩かれたら、「がんばって仕事をするしかない」と必死になる人もいれば、「毎日残業ばかりでやってられねえよ」とそっぽ向く社員も当然います。その結果、「リコールして修理したトラックが手抜き修理で再び故障〜事故」といった事例が発生し、ますます三菱の株を下げています。でも、いざ、自分がリストラされて、給料や待遇が大幅に低下したら、やはり、人間ですから、やる気・モチベーションは下がることでしょう。

 さて、マンション管理業務で、銀行関係で、年に1回大変な仕事があります。
 それは、理事長名義変更手続きです。
 1年任期で毎年役員が入れ替わる当マンションでは、毎年理事長名もかわります。法人登録していない組合ですから、理事長の名前が口座名義です。(正式には、「○○マンション管理組合理事長山田花子」というふうになっている) このため、毎年、役員人事が刷新されたあとに、全口座の名義変更をしなくてはなりません。これがなぜ大変かというと、うちみたいに大きなマンションで、財産がたくさんあるところでは、口座の数がはんぱじゃないんです。ペイオフ対策で、「一口座あたり、1000万円を超えないようにする」としており、このため、あちこちの銀行・地銀・信金などに口座を持っています。その数、20を超えます。(団地みたいに超大規模のマンションはどうしてるんですかねえ?) 

 口座がほんとややこしいのです。2005年、東京三菱とUFJが合併したため、同じ銀行で2つの普通口座を持っています。もともと「太陽神戸」「三井」「住友」にも持っていたため、合併を繰りかえした現在の三井住友銀行でも、ひとつの支店なのに、3つの口座があります。ややこしくてたまりません。
 当マンションではちょっと前に流行った「決済性預金」というのにはしていません。理事会の議題で、「いくつも口座があると事務が大変だし、ゼロ同様の金利じゃ、残高証明書発行手数料で、年間の利子が飛んじゃうよ。決済性預金はゼロ金利だけど、金額にかかわらず、預金が保護されるから、1本化したほうがいいんじゃないの?」とフロントから提案があったそうですが、「変えるのは反対」(なんでも変更は反対なんです)、「いずれ、ゼロ金利政策が終って、利子がつくようになるんじゃないの?」(これはまともな意見)という声で、採用は見送られました。管理会社の経理も大変です。(このため、他の管理会社では、「変更手続き大変ですよ。理事長ご自身に銀行に行ってもらわないとだめですし、口座がいくつもあると、丸一日つぶれます。有給休暇とってもらわないといけません。去年のままにしておきませんか? そのほうが楽ですよ」とか言って、変更しないところもあるようです。10年前の理事長の名前がそのままずっと使われていたりします。)

 銀行の中には、近くにあった支店が廃止されて、別の支店に統合されたため、自転車では行けずに、電車に乗っていかなくてはならない遠い場所の銀行もあります。はっきりいって、面倒です。中には、ちょっとした大きな工事をしたため、お金を使い、残金が10円しかない口座もあります。「10円しかないなら解約したらいいんじゃないの?」と思う人もいますが、解約となると、我々代理人が手続きできずに、理事長本人が銀行にいかなければならないため、「え? わざわざ私が会社休んで、管理組合のために、銀行まわりしなければならないの?」と文句を言われるのです。理事長本人がいかなくてすむように、解約はしないのです。

 
 ところで、口座名義の変更手続きは、本当は理事長が自らやるものです。銀行側も「本人が来店してください」といいます。しかし、「平日に休みが取れる」「有給休暇が簡単に取れる」など、平日日中に時間がとれる理事長ならいいんですが、そんな人ばかりではありません。「無理無理、だいたい、一文にもならない管理組合の仕事で、大事な有休なんか使いたくない」と断られることも多いです。「管理をお宅に委託してるんだから、管理会社でやってよ」とも言われます。そんなわけで、管理人が代理として銀行へ出向きます。(理事長が休める時でも、頼りなさそうな理事長の場合、手続き間違いをする可能性が高いので、付き添います)
 ただし、最近は銀行のセキュリティが非常に高くうるさくなっており、昔のように、管理会社の人間が理事長印だけ借りて、代理で手続きできた時代は去りました。今は、そう簡単には行きません。代理手続きのときは、委任状というのが必要になります。また、委任の証拠書類として、顔写真付の身分証明書が必要です。これも、「本物でないとダメ」という銀行や、「コピーでいいですよ」という銀行があり、銀行によって、厳しさのレベルが違うのです。このため、事前に必要書類を集めるのが一苦労なんです。正直言って、この準備作業だけで丸2日はつぶれます。といっても、この間、管理人が終日マンションを不在にするのもまずいため、1週間くらいに分散してやります。また、身分証明書の他にも、「この人物が、定期総会によって新理事長に選出された」という証拠が必要です。これは、総会議事録です。総会議事録の作成が遅いと、名義変更手続きもできません。また、書式がきちんと整っていない議事録や、3名以上の署名がない議事録(いい加減なマンションだと、議長1名の署名しかないことがある)は、「正式なものではない」と判断され、はじかれることもあります。ほんと年々うるさくなっています。

 このように、20以上の口座それぞれに合わせた必要書類の用紙を揃えるだけで本当に大変です。「何年かぶん、もらっておけばいいんじゃないの?」と思うかもしれませんが、合併で銀行名が変わったり、支店が統廃合で場所や支店番号がかわったり、名義変更に関する用紙が変更になったり、必要書類の種類が変わったり、など、毎年いろいろ変更があるのです。いざ、理事長のハンコをもらってから、「昨年の用紙は使えません」とか言われたことが過去にあるため、必ず、毎回全行を回って、最新の用紙を揃えます。そして、その用紙に記入する作業だけで、また、丸一日かかります。理事長に書いてもらう事項も、理事長が記載を間違えることが多く(なにせ初めて見る書類だから無理もないです)、やりなおしをお願いすることもあります。(こういう事態に備えて、用紙は2枚ずつもらっておきます) 
 理事長によっては、妙にプライドが高い人がいて、こういう書類の記入間違いを異常に恥じる人がいます。それが災いして、キレてしまい、「この程度の間違いくらいなんだ! 受け付けない銀行のほうがおかしいんだ!」「君の説明が足りないのが悪いんだ。僕の落ち度ではない」と開き直って怒ってしまう人もいます。こういう理事長を扱うのは一苦労です。極力、「署名捺印だけでOK」のように準備をするんですが、3枚複写の1枚目しか押印していないとか、あります。懇切丁寧&具体的な説明書きを加えて、理事長へ渡してるんですが。印鑑の押し方も、ちょっと薄いだけでも「受付不可」となることもあります。このため、新理事長には「新朱肉」も購入して渡します。

 顔写真付の身分証明書といえば、運転免許証なんですが、車通勤の理事長の場合、「え?、困るよ、貸せないよ。毎日乗ってるんだもん。不携帯で捕まるよ」と断られることがあります。また、免許を持っていない人、パスポートを持っていない人もいます。この場合は、健康保険証ということになるんですが、保険証は写真がないため、信用度が低く、「保険証プラス、他の身分証明書(社員証とか)も持ってきて下さい」という銀行があります。理事長側の必要書類を揃えるのも一苦労です。

 そして、いざ、変更手続きです。これも、半日仕事を3日くらい続けます。自転車と電車を駆使して、各地を回ります。管理人がこんなに苦労しているのに、一般居住者は、「なんでいつもいないの? 銀行へ行くとか言って、実はさぼってるの?」とか、勝手な文句を言う人がいます。また、こういう時に限って、マンション内でなにか問題が起きることが多いのです。嫌なジンクスです。


 さて、銀行へ行ってからの話です。手続きが順調に終わればいいんですが、このごろの銀行はミスが多くて、時々、うまくいかないで困ることがあります。「今年度の総会の議事録を持ってきてください」だったのに、銀行窓口に行くと、「過去3年間の議事録が必要です」とかのたまう行員がいるのです。「おい、先週来て私が聞いた時には、”今年度”って言っただろう。ふざけたことを言うな」と声を荒げてしまいます。また、「期日は書かないで下さいね」といって、理事長に頼んだのに、理事長が勝手に、自分が記入した日の日付で、日付欄に記入してしまっていて、「今日の日付と違います。これじゃ、受けられません。訂正印押してください」「訂正印って、理事長印のことだろう。無理だよ。いったん戻ってまた理事長に頼まないと」「規則ですから、そうしてください」と怒られます。また、もらっていた書類が、古いフォーマットのもので、「この書類は5/1から変更になって、新しくなっています。古いのは受理出来ません」「おいおい、5/7に来た時にもらった書類だぞ。おたくの行員が渡したのがこれなんだ。そりゃないだろ!」と揉めることもあります。

 当方側のミスなら、「すんません。出直してきます」と引き下がるのですが、最近は銀行側のミスが多くて頭にきます。そして、彼らは自分たちのミスを認めようとせず、あやまりもしません。


 修繕積立金口座から、管理費口座にお金を移し変える作業があったのですが、銀行側の手違いで、どこか別の口座に振り込んでしまったようです。入金を確認したら、入っていなかったため、銀行に文句をいったら、「すいません。こちらのミスです。やり直しておきます」との返事。ここまでは許せます。しかし、まだ、うまく振り替え作業が完了しません。再度文句を言ったら、「おたくから、預かった書類のとおりに振り替えた。当行の責任ではない」とか反論してきました。「そんなはずはない」とこっちも反論です。そうしたら、「これがお宅から預かった伝票です」と、証拠を出してきました。当然、私ではありませんし、筆跡も違います。「よく見ろ。これが俺の字だ。俺は"卒”を「卆」と書くが、この伝票には"卒”と書いてあるだろう。明らかに俺の字ではない。いい加減なことをいうな!」とカウンターを蹴飛ばして店を出てきました。
 数日後、「あの伝票は、そちらから苦情をいただいた際に当行の行員が作成した伝票でした、その際に、また、間違えて番号を書いてしまったために、振り替えができませんでした」という電話が来ました。「その担当者を出せ」「はい」「おい、あんたが○○さんか? あんたのミスのせいで、私が疑われた。あんた、何をやってるんだ。間違えたのはあんただろう?」「あ、はい〜。どうやら私が間違えたようです。でも、なんで間違えたんですかねえ。よくわかりません」「ふざけるな。バカ野郎! なんでかなんて俺が知るか?」、また怒ってしまいました。
 この行員、最後まで謝りませんでした。いったい、どういう社員教育をしているのか、していないのか?

 これに限らず、ここのところ、銀行のミスが多すぎて、私も会社も困っています。ミスをしたのが銀行でも、組合側に事情を説明して謝罪するのは、こちらの仕事ですから。やってられないです。
 

そんなわけで、マンション管理をとりまく環境は面倒くさくなるばかりです。

 しかしまあ、わずかな利子のために、多数の口座を維持しているのですが、そんな利子なんか、年度末の「残高証明書発行の手数料」で簡単に消えちゃうんですけど。ほんと、しょうもない組合だなあ。


2005/9初稿 2006/5再構成