管理人はつらいよ
マンション管理最前線
徘徊老人に振り回された |
ある居住者宅から電話。「管理人さん、迷子なのよ。警察呼んだから、あと頼むわね」「ちょちょちょちょっと待ってください。迷子って?なんですか?」「おばあちゃんなのよ」「はあ?」「おばあちゃんが迷子なの。とにかく警察呼んであるから大丈夫よね?」「大丈夫って言われても・・・」「いえね。あたし、今からお医者さんに行かなくちゃならないの。おまわりさんが来るのを待ってられないから。じゃあ、あたし出かけるから」 ガチャン。
なんだかさっぱりわかりません。その居住者(この人もおばあちゃん。便宜上Aさんとします)が、出かけようとするので、急いで管理事務室を出て、「どういうことですか?」と聞くと、傍らに、別のおばあちゃん(迷子。Cさんとします)がいます。
「いえね。この人が、下の道路から手を振るのよ。”迷子になっちゃったから助けて”って。話を聞いてもよくわかんなくて、あたしも病院の時間があって急いでいるから、110番したのよ。これで。息子が買ってくれた、ツーカーの携帯電話。あの、小林桂樹が宣伝しているやつ。いいわよ、簡単で・・・・・」「電話の話はいいんですけど」「とにかく任せるわね」 Aさんは、マイペースでしゃべって、タクシーが来たので、乗って行っちゃいました。
このAさん、悪い人じゃないんですけど、痴呆が始まっているみたいで、時々訳のわからない事を言い出して、困らせます。家族はいません。3ヶ月前まで息子がいたんですけど、出ていってしまいました。(普通、自分の母親が痴呆になったら、出て行けないよね。親捨てといっしょだよ)
それで、当事者である迷子のCさんに話を聞いたわけですが。「おばあちゃん、お名前は」「あるよ、ひとつ」「数じゃなくて、お名前?」「娘はヨウコ」「娘さんじゃなくておばあちゃんの」・・・・・
「何してたんですか?」「散歩」「ご住所は?」「3丁目」「どこの町の3丁目ですか?」「むこうの町」「向こうじゃなくて、町の名前があるでしょう?」「忘れた」「どうして迷ったんですか?」「迷ったんじゃない」「え? でも、迷ったから、Aさんに助けを求めたんでしょう?」「うん、そう。迷った」「家族はいるんですか?」「娘が東京に居る」「東京じゃなくて、おばあちゃんのお家に誰か家族は居るの?」・・・・・・・
どうも要領を得ません。どうやら、徘徊みたいです。Aさんじたいが痴呆の気があるため、Aさんの言葉を全部信用することもできず、当人のCさんはこの有様だし、警察が来ても、どう説明してよいやら。
それにしても、警察が来ません。15分たっても来ません。遅すぎ。そんな時に、清掃局の回収が来てしまいました。ゴミ集積場に行かなくてはなりません。
ゴミの立会いが終わって戻ったら、あれま? Cさんがいません。警官の姿も見えません。警察が連れて行ってくれたんならいいけど。なんか心配です。といっても、居住者じゃないから心配する義理はないけどね。でも、交通事故も多いからやっぱ心配だなあ。その時、ちょうど郵便配達の人が来ていたので、聞いたら、「警察なんか来てませんよ」とのこと。え? もしかして110番したのもウソ? どうなってるの? おばあちゃんどこ?
3日後、このおばあちゃん、また来ました。当マンションの玄関前でボーっと立ってます。住民が、「変なおばあちゃんがいるわよ」と私に言って来ました。ありゃりゃ、どうしようか? とりあえず、また警察に電話するか・・・・・。 と、管理事務室に戻って110番したら、あれま、いつのまにかいなくなってました。疲れるなあ。
2005/11
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