管理人はつらいよ   
マンション管理最前線

 工事の質 工事本体以外も大事 




 以前から問題があった、マンション内公園の中にあるブランコなど遊具の経年劣化による不具合。

 理事会では、「まだ、修理品しなくてもいいんじゃないの?」と相手にされませんでしたが、当方の「事故があったらどうするんですか? 管理会社は一切責任を負いませんからね」の繰り返しの主張で、ようやく予算化され、改修工事することになりました。

 とはいえ、このマンションでは、「管理会社を通して工事をすると手数料を取られて高くなるから、自分たちで業者を探してきて直接発注する」という方針があって、今回も管理会社の手配ではありません。200世帯を超えるマンションのためか、住民の知り合いになにかしら関係業者がいるもので、「遊具の改修? それだったら知り合いの・・・・・」ということで、ある住民(Hさん)の知人の会社がやることになりました。

 今回の工事、「どうせやるなら、子供がボール遊びして、ボールが飛んでベランダに入ったりする苦情が来てるから、公園の一部にネットを張る工事もしよう」ということで、ちょっとおおがかりな工事になってしまいました。
 業者に対して、「ここをこうやってこうして欲しい」といった注文は、Hさんと工事担当役員がやったのですが、昼間の打ち合わせなら私も参加して話を聞く(特に呼ばれないんですが、聞いておかないと後で困るので、いつも無理矢理参加するようにしてます)のですが、タイミングが悪くて、電話でとか私の勤務外の時間とかに打ち合わせが行なわれ、私に情報が入ってきません。いざ工事が始まると管理人に立会いを求めるくせに、事前の情報をきちんと流してくれないのは困りものです。

 ところで、こういう打ち合わせというのは工事本体のことはちゃんと話し合われるんですが、付帯する事項のことがおざなりになりがちです。

 例えば、「工事期間中はその場所を通行禁止にするのかしないのか?」「通行禁止にした場合は、迂回路はどうするか?」「コーンやロープを使って、工事場所に立ち入らないようにしなければならない」「資材を一時保管するのはどこにするか?」「事前の広報をどうするか?」・・・・、こういった現場の実務ということを考えない人が多いのです。
 特に、マンションというのは、いろいろな住民がいますから、「いたずらざかりのクソガキにいたずらされないようにするには?」「目の悪いお年寄りにも読めるように」「外国人にも理解できるように」「中学生が隠れてタバコ吸ったりしない様に」「放火魔の標的にならないように」・・・・と、実はいろいろなことを心配しなくてはいけないのです。ですから、工事そのものよりも、その準備や付帯作業なども重要です。
 
 そんなわけで、当方も業者のやり方にはとても気になるため、直接電話したりして、いろいろと話をするわけです。何か事故があったりすると、管理会社発注の工事でなくても、「管理会社は何をやってるんだ? 管理人は何してるんだ?」と怒られますから。
 管理委託契約の業務内容に中に「各種点検・工事の立会い」という項目があり、管理会社経由でない工事でも、いちおう立会いをしなければなりません。

 今回も電話で、「うちのほうで何か準備しておくことはある? ロープとかコーンとかあるから、こっちで準備しようか?」と提案しましたが、「準備は全部当社でやりますから大丈夫です。お任せ下さい」との返答。はっきりいって、この業界はいい加減なんで信用できませんが、むこうがこういうので向こうさんに任せることにしました。

 しかし、工事3日前になっても、「事前予告案内」を出しません。「予告してもらわないと困るよ。いきなり、工事を始められても困る」と苦情を言うと、「すいません、忘れていました。恐れ入りますが管理人さんのほうで予告掲示物作って貼ってくれませんか?」との返答。結局、私が掲示物を作りました。

 工事初日当日。まず困ったのが、職人3人がそれぞれ1台ずつの車で来たこと。オイオイ、普通は相乗りしてくるだろ? 駐車場のないマンションに3台の車でなんか来るなよ。おまけにそのうちの1台は、完全にヤンキー仕様のグロリアでシャコタンです。そんなのがマンション内に置いていたら住民が怖がるよ。
 次に。この職人たち、「立入禁止」のロープも何も持ってきてません。工事に必要な資材と道具しか持ってきていません。けっこう朝早く来たみたいで、もう資材は搬入してました。それも、打ち合わせとは違う場所に。「ちょっと待ってよ。ここに置けなんて言ってないよ。向こうだよ」と押し問答。「あれ、どうしたの、話聞いてないの?」と聞くと、「何にも聞いてない」。早速業者の事務所に電話すると、「すいません、間違えました。」「ロープは?」「それも忘れてました」。まじかよ、ちゃんとやって欲しいなあ。
 などと、プンプン私が怒っている間に、クソガキが一人、資材をいたずらして、ガラガラガッチャーン! きちんと並べておいた資材が崩れてしまいました。「やばい!」と思って、その子供を見ると、なんとか子供は無傷。「良かった、ケガしなくて」と私は思ったのですが、工事業者のオッサンは子供の体のことなどどうでもよくて、「ばか野郎! 苦労して並べたのをぶっこわしやがって! このバカガキめ! 親はどういう躾してるんだ!」と烈火のごとく怒ってます。「ちょっと待ってよ、クソガキとはいえ、住民は発注者なんだからあんたにとって客だろ! 客に向かってその態度はないだろ! もともとあんたがたがちゃんとその場所を囲んで置かないのが悪いのに」と私も苦言を呈して、その職人とケンカになってしまいました。
 結局、私のほうで、ロープ張ったり、立ち入り禁止の看板を作ったり、全部やりました。

 なんやかんやで工事が始まると、こんどは、「ネットの高さが違うんじゃないの?」という問題が発生。私が以前聞いていた高さと明らかに違うんです。しかし、その職人は「○○cmで間違いねえ。そう聞いてる」と譲りません。「いや、たしかに、△△cmと打ち合わせの時に言ってた」と私は反論。工事担当役員(平日なので会社にいる)に電話して確認。それから、工事業者の事務所にも電話して確認。当方の言うほうが正しいことが立証されました。が、しかし、「うちのほうはそんなこと聞いてねえ。この高さのネットしか持ってきてねえ。今日は工事できネエ」となってしまい、ネットは後回しになってしまいました。

 この混乱の原因は、「下請け制度」にあります。今回の工事、ある住民の知人の業者が受注し、その業者の社長自らが事前調査に来たのですが、実際の工事は下請けにやらせているのです。社長が来るくらいだから、小さな工務店だと思っていたのですが、今回は元請けとして請けたみたいです。そして、下請けには詳しい話は全然伝わっておらず、図面しかもらってないようです。当然、このマンションに来るのも初めての人間が来ました。「電気はここから取る。延長コードが50mくらい必要だよ」と言っておいたことも聞いておらずあたふたしてます。混乱を聞いて別の社員がやってきたのですが、こいつがまたややこしい。どうやら、今回の工事には、元請・下請・孫請の三段構造になっていたのです。作業しているのは孫請でした。そして、急遽、事態収拾にやってきたのは下請の社員です。打ち合わせに来た「元請」の社長は、「今日は別の現場が忙しくてそちらには行けません」とのこと。おいおい、下請→孫請と話をしているうちに伝言ゲームみたいに、おかしなことになって、注文内容が変わっちゃったんじゃないの? 別に急ぐ工事でもなく、いつでもいいんだから、社長自らが来れる時にやればいいのに、なんで孫請なんかにやらせるんだろう? そんなでかい工事じゃないよ。

 ほんと、この業界、構造的な欠陥があります。

 こっちは管理会社通しての工事じゃないため、一銭の利益もないのに、こんなに苦労させられて、何か問題が起これば、(本当は無関係で責任はないのに)、「管理会社は何してるの?」と怒られます。

 まじ、損な役回りです。

 




2005/12



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