管理人は超つらいよ   
マンション管理最前線

広報誌配布の仕事でケンカが勃発






困った役員連中だ。


 以前、当マンションでは、自治体などから「月に1回」配布される「広報誌」を、マンション内の全世帯に配布する重労働を管理人1名で行なっていました。これはほんと大変な仕事でした。ですから、毎月1日は恐怖の日でした。

 さて、なんで「過去形」で書いているかというと、実は、昨年2011/3/11の震災以降、制度が変わったのです。

 震災のあと、いろいろな仕事が増え、ものすごく大変な時期がありました。計画停電なんかは電気会社も役所も、詳しい情報を全然伝えてくれないため、私が自分でネットで調べたりしてました。ほんと、地域は大パニックでした。
 そんな忙しい時に、広報誌がまとめてどさっとマンションの玄関に置かれたのですが、「広報の配布なんかやってる時間はない。計画停電の対応でてんてこまい」ということで、すぐに配布しないで、放置しておきました。そうしたら、ある住民が、「管理人が広報を配布しないで仕事をさぼってる」とか苦情を言ったようです。私にもその苦情が来たんですが、さすがに私も頭に来て、理事長に対して、「震災対応でものすごくがんばって大忙しだから、できないんです。1日や2日程度待ってくれてもいいでしょ! 本当なら、計画停電の対応とか、行政とかの折衝は、組合さんがやるべき仕事ですよ。それを、管理人が無償ボランティアでやってるんじゃないですか!」と、半分キレ掛かって、理事長に文句を言いました。

 「だいたい、広報の配布の仕事は、もともと、役員さんの仕事ですよ。それを私が好意で代わってやってあげただけのことです。(その当時の担当役員が体が不自由だったため) 管理委託契約にもないことです。無償でやってあげているのに、そんなことで文句を言われたらたまりません。元通りに、役員さんの仕事にして下さい!」と啖呵を切ってしまいました。

 そういう経緯で、その翌年度から、元通りに、「組合の役員の中から、配布担当者を2名決めて、その人がやる」ということになりました。私はずいぶん助かりました。私はこれで、「配達されてきた広報を台車でそのまま集会室に持っていく」だけの仕事になりました。

 さて、この「広報配布」の仕事なんですが、意外なことに、新年度の役員が集まって、「役割分担きめ」をした時の理事会では、「人気職種」だったそうです。
 このマンションは、世帯数が約250のため、役員の総数もそこそこの大所帯です。そうなると、いわゆる「無役」(なんにも担当業務がない)の役員も多いです。無役というのは、普通の感覚だと、
「何もしなくていいんだから、けっこうなことじゃないの?」
と思うんですが、人間というのは不思議なもんで、「良かった、何もしなくていいんだ」と喜ぶ人がいる一方で、「何もないのも嫌だ。なんか簡単なものでいいから、なんらかの役職につきたい」という、わがままな人もいるんです。
「だったら、理事長をやってよ」と思うんですが、そういう人は、ただ「肩書きが欲しい」だけなので、大変な仕事は嫌なんです。単に「無役は嫌だ」ってことなんです。(今の民主党の大臣みたいだなあ)

 管理組合のことをよく理解している、頭のいい人の場合、「副理事長」とか「監事」に立候補して、「肩書きは立派だけど、実際は何もしない」という手法を使いますが、そういう知識のない人にとっては、「広報配布業務」というのは、「頭も使わないし、責任も発生しないし、毎月1回ちょっと軽い肉体労働をするだけ。こりゃ、いい仕事だ」と思われたらしく、役職決めの際、この「広報配布」の仕事に関しては、なんと、6人が立候補し、じゃんけんで決定するという異例の事態が発生したそうです。そうやって、2名の配布担当役職者が決定したわけです。

 ただ、問題は、この「ジャンケンで勝った2名」が、仲が悪い人同士だった、ということ。

 大変な仕事なんですから、二人で仲良く協力してやればいいんですが、いつも、「先に、広報誌が届けられたほうが、1人だけで配布してしまう」ということになってしまっているのです。ですから、6月はAさん、7月はBさん、8月もBさん、9月はAさん、10月もBさん・・・・といったふうに、仕事の取り合いを毎月しているんです。仕事をとられて、自分の仕事がなくなったほうは、ぶつぶつ文句を言っています。11月の時なんか、「管理人さん、広報誌が来たら、まずは私に最初に連絡してね。あの人には言わなくていいわよ」と「シュークリーム」1個とともに頼まれたことがあります。これじゃ、買収です。まいったなあ、ほんと。板ばさみになった管理人は、毎月、どっちかから苦情を受けます。仲良く二人で協力してやって下さいよ。

 そんなわけで困った状態が続いていたんですが、なんと、今月は、広報誌がまとめて置かれている集会室の中で、このAさんBさんがバッティングしてしまったらしく、「あたしがやるわよ」「いいえ、あたしがやるわよ」「あんたはいなくていいのよ」「あんたこそ、帰りなさいよ。夕食の支度でもしてなさい」・・・・・とケンカになってしまったようで。集会室近くの部屋の住民から、「集会室で誰かがケンカをしている」と通報がある事態になってしまい。トホホ。

 まいったなあ、ほんと。いっそ、奇数月はAさん、偶数月はBさんとか、分担できないもんだろうか? 理事長、裁定してよ。


 上記のようなことがあった1年が過ぎ、翌年度は、この仕事が人気職種となってしまったために、定員2名から3名に増やしました。そして、3人で仲良く配布することになりました。
 そうやって、うまく行っていたのですが。

 今年の総会が終わり、新役員が決まり、いつものように、「広報配布担当役員3名」も決まって、最初の、「市の広報」が管理室に届けられた時。やってきたのは、昨年度の広報配布担当役員3名。
 「え? **さん。新年度になったんだから、もうお役御免でしょ?」「いや、いいのよ。この仕事好きだから」と言って、3人で集会室へ・・・・・
 その後、本来の、今年度の担当役員が管理室に来て。「管理人さん、届けられた広報ってどこにあるの?」「いや、あの〜 **さんが集会室に持っていってしまいました」「え? 何言ってるのよ。あれは私たちの仕事よ。横取りは許さないわ!」

 そのあと、集会室では、なんか騒ぎがあったそうですが、私は関与しません。

 それにしても、他の役員業務は嫌がるくせに、なんで、広報配布の仕事だけは、こんなに人気なんだろう? 不思議だなあ。




2014/5 追記



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