管理人は超つらいよ
マンション管理最前線
持ち込んでいいんでしょうか? 外来客のペット |
今年って、戌年なんですね。なんかマスコミにも犬の露出が多くて、この仕事を始めてからすっかり「犬嫌い」になってしまった私にはつらい1年です。
年末年始にちょっとしたトラブルがあったようです。年始の住民との会話でいろいろわかってきます。
50平米もない小さな部屋に家族5人で住んでいるDさん。人間だけでなく、犬も2匹います。「あんな狭い部屋にどうやって暮らしてるんだろう? ペットへの過度の接触は、免疫力の弱い子供にとって、ペット由来感染症に罹患する可能性が非常に高くな、危険なんだけどな。狭い部屋でペットをたくさん買う親は、自分の子供を殺したいのかな?」などと思っている私にとって、実に不思議です。(正月のテレビ番組では小池栄子がチンパンジーに顔を噛まれたそうで、ケガしてました)
そして、「類は友を呼ぶ」、年始にこの家に、親戚の来客があり、この親戚がこれまた、犬を2匹連れ込んできたのでした。この親戚、自動車をマンション内に違法駐車した段階で、御近所から睨まれ、そして、連れてきた2匹の犬と、もとからいる2匹の犬が合流し、4匹になったら、なんか仲が悪くて、大暴れ。けたたましい大きな声で吠えまくり。御近所迷惑甚だしい。おまけに、そのうちの3匹が、こどもが家のドアを開けた時に外に逃げ出し、これまた大騒ぎ。(結局、近くの公園で発見)
そんなこんなの苦情が私に寄せられたわけ。といっても、管理人にはどうしようもないです。でも、ここでちょっと気になったのは、「訪問客がペットを持ち込むことに関して、なにか決まりみたいなものは、ないんだっけ?」という住民からの質問。
なるほど。居住者のペット飼育に関しては、各マンションで規約や規則で決めているでしょうが、訪問客のことも決めているもんなんでしょうか? 私も疑問に思いました。
まず、このマンションの規約や規則を調べましたが、一切、記述はありませんでした。
他のマンションも聞いてみました。ほとんどのマンションで訪問客のことの規定はありません。でも、他の管理人さんも言ってましたが、「お店は、”犬連れは困ります”と明記しているところが多いんだから、マンションだって、”ペット連れの訪問はお断りします”って書いてもいいよなあ」、この意見同感です。特に夏休みとか年末年始の場合、数時間の滞在ではなく、数日間の滞在ということもあるわけで、ペット飼育禁止マンションであれば、来客のペット持ち込みも明確に禁止すべきでしょう。狭いエレベーターの中で犬といっしょになるのを嫌がる人もいるんですから。
いろいろ訪ねたうちのひとつのマンションでは、きちんと「細則」で来客のペット連れを禁止してあり、かつ、マンションの玄関の目立つところに、「このマンションはペット禁止マンションです。ペットを連れた訪問も禁止されています」と貼り紙がされていました。う〜ん、これは素晴らしいです。
管理人さんに話を聞くと、「3年前の理事長がすごく優秀な人で、数年来懸案であったペット問題をひとりで解決させた努力の人だった」とのこと。興味が沸いたので詳しく話を聞きました。
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もともと、「ペット禁止」と使用細則に明記してあるマンションだった。しかし、禁を破って飼いはじめる悪質住民が出現。そして、この犯罪者(飼い主)が、ほんと迷惑な人間で、他人に迷惑をかけてばかり。ペットだけでなくゴミだしマナーも悪く、違法駐車もするし、「犬を飼っている3軒の家はどうしようもない奴ばかり、管理組合として毅然とした態度で対決するべきだ」と居住者の多くも思い、その声に押されて、当時の理事長ががんばったそうです。
単に「ペット禁止」というのではなく、「熱帯魚などの小魚の飼育以外の動物は飼育してはならない」と明確化し、かつ、当時法律化されていた「盲導犬などの補助犬の飼育に関する規定」も制定しました。もちろん総会を開いて、多くの住民のコンセンサスをとって決めたのです。まるまる1年かかったそうですが、ペット飼育の実情調査、アンケート、すべての情報の公開、頻繁な理事会開催、そして全理事会への一般居住者への参加要請、専門家を呼んでの説明会開催など、懇切丁寧な手続きを踏んで、最終的に総会を開催して実現させました。
そして、規則制定後は、犬を飼っている家に対して、飼育禁止命令を出しました。このマンションでは幸いなことに、「犬を飼っている悪質住民はすべて賃貸入居者だった」「ペットを飼っていることだけでなく、生活全般で問題児だったため、他の住民から嫌われていて、排除しやすかった」という点があり、事がうまく進んだそうです。 結局、犬を飼っている入居者は引っ越していきました。私からすると、「うらやましい限りの、尊敬すべきマンション」です。こんなにうまくいくケースは他ではなかなかありません。
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ところで、なにもかもうまく行ったように見えますが、内実は大変だったようです。飼い主の中で、「この犬は私のものではない。近所に住む私の母親の飼い犬であり、私は時々預かっているだけ」と弁解する者がいたのです。
要するに、「規則でいう”飼育”にはあたらず、"保管”であるとの主張です。これは完全な詭弁で、他の居住者からの情報を集め、「毎日のように犬を連れて散歩に出かける光景を目撃されている」(こういうバカは、こそこそ階段を使って移動すればいいのに、堂々とエレベーターに乗せるから始末が悪い。そのため、目撃証言が多数集まった) 。「実際はこの人が飼っている」ということが判明し、「だめだよ」ということになりました。それでも最後まで「自分が飼っているんじゃない」と往生際の悪さを見せましたが、理事長が、「だったら、あなたのお母さんが飼い主なら、あなたのお母さんが保健所に提出した書類とかあるでしょ。それ出してよ」と突っ込んだところ、書類は当然出せませんでした。
おまけにこの過程で、理事長はその部屋の所有者に対して、「所有者(=組合員)は、賃貸入居者が規則を守らせるようにする義務がある。あなたは誓約書を組合宛に出しているはずだ」と強く迫ったところ、「え、ちょっと待ってください。うちの部屋にはそんな名前の人は住んでいないはずです」「なにそれ??」 (数日後) 「契約者がまた貸しして、別の人が住んでいるみたいです。賃貸契約違反です」ということになり、この賃貸居住者が本来の居住者ではないことが判明しました。賃貸契約の際も、「部屋が傷むし、規則で禁止されているから、絶対にペットはだめ」と念を押したそうですし、単身者としての契約なのに、実際は二人で住んでるし、ほんと救いようのない、バカ者だったようです。そして、こういう馬鹿者ほど犬を飼いたがります。そんなわけで、所有者としても「賃貸契約違反だ。出て行け」ということになり、退出させたそうです。
そんな経緯があったため、新規則には、「マンション居住者は、その居住者宅を訪問する人がペットを連れ込まないようにする義務がある」と制定されており、これがマンション内の目に付くところに掲示もされているわけです。
なるほどねえ。ちゃんとした理事長が組合運営をすれば、よくなるんですねえ。ペット問題で悩んでいるマンションは全国にたくさんあると思いますが、来訪者のペットのこともよく考えて対策を考えましょうね。
2006/1
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