管理人は超つらいよ   
マンション管理最前線

自分の所有マンションを賃貸にするのであれば、
区分所有者としての責任を持って欲しい
管理する不動産会社もちゃんとしてくれ





 マンション管理における「賃貸部屋」というのは、管理会社からすると、「ガン」といっても過言ではないくらいの、お荷物です。賃貸部屋のために、どれだけの労力が浪費されるか? ほんと、大変なんです。

 賃貸で入居している人が起こす「いろいろなトラブル」、これは本当に多いです。「自分の部屋ではない」ということからの無責任感や、「役員をやらない」ということからの「無関心」「協調性のなさ」。「ゴミ出しマナーの悪い」のも賃貸部屋に多いし、「駐輪費を払わない」のも賃貸に多いです。「子供のいたずら」なんかも、賃貸部屋ばかりです。

 また、事務的なことでも、「ひとつの部屋について、賃貸入居者と区分所有者の、2名が存在する」ということから、いろいろ面倒です。総会の開催通知や議事録も、通常であれば、集合ポストにポンと入れれば済むのに、賃貸の場合、わざわざ、切手を貼って、外部に住む区分所有者へ郵送しないといけません。おまけに、外部居住者は、組合運営に無関心だから、委任状もなかなか送ってこないし。

 外部居住の区分所有者は、役員にならなくていいので、管理組合の仕事は何もしません。このため、居住して、役員にも就任する住民から、「不公平だ」という声が多く上がります。「ブロック」の中に賃貸の部屋が多いと、本当は、「10部屋で1名員就任」という単位が「5部屋で1名就任」となっているブロックもあって、「なんで、Aブロックは10年に一度なのに、うちのブロックは5年に1度役員にならないといけないのか? おかしいだろ?」っていう不満の声もあがります。

 まあ、とにかく、いろんな面で、管理する側からは、「賃貸は嫌だなあ。面倒だなあ」という存在です。

 そういうこともあり、今、マスコミなんかで「アベノミクスの不動産における効果」とかで、投資用マンションの話なんかが出てきて、タレントの松居一代とかが、「投資用マンションをいくつも持っている。購入時は、現場に行ったこともなく、現物を見ることなく、図面見ただけで買った」とかえらそうに言ってるのを見て、「ふざけるな!」と憤慨しています。こういう、購入時に、「そのマンションのことを調べない」「管理規約も読まずに誓約書にサインだけする」「部屋の管理は他人任せ」「儲けることしか考えていない」っていう、無責任な奴(オーナー)が大嫌いです。

 賃貸にしている部屋でも、そのオーナーは区分所有者であり、「管理組合員」です。当然、管理組合員としての義務があります。また、店子が起こしたことに対する責任もあります。管理規約の中にも、「賃借人に、きちんとルールを守らせる義務がある」と書かれています。
 しかし、たいていの「オーナー」は何もしません。そして、「その部屋のことは、不動産業者に任せてあるから、私は関係ない」とか言います。区分所有者である限り、「自分は関係ない」とか、言ってはいけないのに。無責任すぎます。
 今まで、たくさんの「賃貸部屋」でトラブルが起きていますが、オーナーが「うちの賃借人がご迷惑をおかけしまして」と謝罪に来た例は皆無です。


 さて、今起きている問題をご紹介します。
 
 暑くなってきた今、5月だというのに、30度越えとかになり、みなさん、そろそろ、「冷房」を使い始めました。賃貸部屋のBさんも、エアコンを使おうとしたのですが、なんと、故障。動きません。それで、まずは管理室にやってきました。

「管理人さん、エアコンが壊れてるんだけど」
「Bさんのところは、賃貸の部屋でしょう。だったら、それは、大家さんの責任だから。大家さんに連絡して、修理してもらってください。我々、管理会社は関係ありません」
「あ、そうなんだ。でも、オレ、大家さんの電話番号なんか知らないよ。どうしたらいいんだろう?」
「だとすると、大家さんに代わって、不動産業者とか、管理会社が、管理を任されてるかもしれませんよ。そういうの、契約の時に聞かされませんでしたか?」
「あ、そうだそうだ。Cマンションサービスとかいう会社に、年会費1万5千円もとられて、”管理はうちでします”とか言ってたよ」
「そう、それですよ。その会社に電話をしてみてください」
という会話がありました。

翌日、Bさんがまた管理室にやってきました。
「管理人さん。困ったよ。C社に電話をしたんだけど、C社が言うには、”エアコンの修理は、大家さんの了解がないとできません。大家さんに連絡を取りますから、待っていてください”ってことなんだよ」
「ああ、そういうもんですよ。間に管理会社が入ると面倒なんですよ。他人に管理を任せるのはやめて欲しいですねえ。ほんと。面倒なんだから」

その翌日、また、Bさんがやってきました。
「困ったよ。大家さんが捕まらないんだって。把握していた携帯電話は現在、”使われておりません”状態なんだって。電話がだめなんで、C社のほうで、郵便を出して連絡を取ろうとしているところなんだって」
「そりゃ、大変ですね。しかし、自分の部屋の管理を他人任せにしているくせに、その会社に、ちゃんと連絡先を教えておかないってひどいですねえ」

その3日後、また、Bさんがやってきて。
「エアコンが壊れて以来、記録的な暑さが続いて、もう、毎日毎日、暑くて、夜も熟睡できなくて。頭がおかしくなりそうだよ。参ったよ。まだ、エアコンを修理してもらえないんだ。それにしても、今年は、このへんの暴走族、うるさくない? 窓を開けて寝てるから、暴走族の爆音がもろに聞こえてきて、うるさいの、なんのって」
「このへんの暴走族は悪質ですからねえ。改造バイクで爆音撒き散らして走ってますもんねえ。なんで、警察は全然取り締まらないんでしょうか?? ほんと、警察ってひどいですよねえ」
「それでさあ、大家さんなんだけど、大家さんの両親とは連絡がついたらしいんだけど、どうやら、日本にはいないみたいなんだよ。」
「え? なんですかそれ?」
「転勤かなにかみたいだね。でさ、大家さんの両親が、その行き先の電話番号を教えてくれないらしいんだ」
「はあ? だって、自分の子供でしょう?」
「そうなんだけど、”もう、成人した大人だから、自分とは関係ない”とか言ってるらしくて」
「だったら、もう、その親に、頼んで、修理をするようにしてもらえばいいじゃないですか?」
「管理会社も、そう交渉したんだけど、”決めるのは息子だ。オレじゃない”とか言ったらしく」
「じゃあ。このままではずっと修理しないままで、エアコン使えませんよ。昨日なんか、熱中症で死者も出ているというのに」
「そうなんだよ。オレだって死にそうだよ。息子も息子なら、親も親だよなあ。ひでえ、親子だ」
「ところで、Bさんの部屋には扇風機とかあるんですか?」
「いや、それがないんだよ。最初からエアコンでなんとかなると思って入居したからねえ」
「じゃあ、管理室の扇風機を一時的に貸してあげましょうか?」
「あ、そりゃ、助かるよ。ありがとう」
ということで、扇風機を貸してあげました。しかし、本来なら、こういうことは、その部屋の管理をしている業者がすべきことですよねえ。

その2日後、また、Bさんがやってきて。なんか、顔色も悪く、げっそりして疲れた顔です。
「管理人さん。扇風機はありがたいけど、さすがに、最高気温33度とかになると、扇風機じゃ無理だよ」
「え? まだ、エアコンの修理が終わってないんですか?」
「そうなんだよ。”まだ、オーナーと連絡がつかない”らしいんだよ。ひどいよねえ。管理会社も」
「でも、Bさん。その管理会社って、なんか、年会費とか徴収して、そういう支援サービスをやってるんじゃなかったでしたっけ?」
「そうなんだよ。オレもあのあと、契約当時の書類を見たら、家賃の他に、その管理会社宛に、”安心サポートパック”というのを払っていたんだよ。そのパンフレットを見ると、”エアコンや湯沸かし器など、設備の故障の際にも迅速に対応しますから安心です”って書いてあるんだよ」
「でも、何もしてないんでしょ。全然、安心なんかじゃないですか?」
「ほんとだよ。高い金取っておいて、何もしないなんて、詐欺だよ」
「ひどい会社ですねえ。私もいろいろ経験してますが、ほんと、不動産関係の会社ってひどいですよ。それで、Bさん、これからどうするんですか?」
「いやあ、このまま、暑い中暮らしても、眠れないし、体は衰弱してくるし、熱中症で死ぬかもしれないよ」
「そんなこと言わないでくださいよ。室内で、人が死ぬと、管理人は大変なんですから」
「いやあ、マジで死にそうだよ。今日だって、最高気温32度の予報でしょ? 湿度も高いし」
「じゃあ、もう、ここに住むのはやめて、ホテルにでも移ったらどうですか? 当然、ホテル代は、その管理会社に請求して」
「あ、そうか、そういう手もあるなあ。なんたって、有料の安心サポートパックに入ってるんだから、それくらいする義務があるよなあ」

なんていう会話をしています。

 いい加減な区分所有者と、いい加減な不動産会社に、こっちも迷惑を受けています。

 それにしても賃貸マンションに、「安心サポートパック」(全然、安心じゃないけど)とかあるんですねえ。なんか、あの手この手で金を払わせようとするんだなあ。ひでえ業界。金とるなら、ちゃんとその分の義務を果たして欲しい。

 


2014/6

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