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マンション管理最前線

東横イン 違法建設事件 実は当マンションでも・・・






 現在(2006/2)、世間を騒がす「東横イン」ビジネスホテルチェーンの事件。”竣工検査の際は、法令を遵守しているようにみせかけて、その後に、違法改造をする”という手口です。東横インの半数近くのホテルで行われていたそうです。(調査が進むと、おそらくもっと増えるでしょう)

 最初の社長の会見で、「こんなことは全国どこでも行われていることで (たいしたことじゃない)」と言っていました。ふざけた会見ですが、この後、ネットでマンション関係のサイトを覗いてみたら、たしかに、「どこでもやっていること」みたいです。

 マンションの場合、建設時は、許容容積率ギリギリに建てるのが普通です。ですから、建設後に増設などはできません。しかし、実際にはあるそうです。

<A 駐車場をつぶして、集会室を建てた>
<B 屋外の青天井のゴミ置き場に屋根をつけた>
<C 空きスペースに屋根つきの駐輪場を増設した>

 Aに関しては、「それはまずいんじゃないの?」と素人考えでも思いますが、実際にはけっこうあるらしいです。
 BとCに関しては、私のようなド素人が思うに、「何の問題があるの?」というレベルです。

 しかし、建築基準法では、駐輪場に屋根をつけただけでも、それは建設物としてみなされるそうで、その結果、建設物としての申請が必要だし、容積率もオーバーして、その結果、違反となるそうです。いやあ、こんなことはじめて知りました。法律って厳しいですね。私もえらそうに、「東横イン、法令を遵守しろ!」とか、言ってましたが、はてさて、自分の足元を見ると。

<今から5年前、私が赴任する前に、駐輪場の増設工事が行われている。屋根つきである> うわ〜、これって違反じゃないですか? それに、今、ゴミ置き場の、猫やカラスによる荒らし対策として、周囲を囲むことが検討されています。これも、場合によっては違反になるかもしれません。ゴミ置き場の屋根って、たとえば、ネットで覆うことも屋根になるのか? フェンスで囲むことも屋根になるのか、どっちなんでしょうか? おそらく、現実的には、西武ドームのように、通風のため、完全な建物のような形式にはせずに、フェンスで囲って、天井部分だけは雨避けのために、ビニールシートを張るかなにかにすると思うのですが。

 上記のような違法行為が、なぜ、日常的に行われているか?も疑問です。でも、知り合いのマンション管理士さんに聞いたところ、「ばれなきゃいい、とみんな思っている」「他人に迷惑をかけることではなく、むしろ、生活の向上にために行われていることで、罪悪感がない」「自転車置き場の屋根ごときを建設物とする、法律のほうがおかしい」「マンション住民は法律などしらずに注文する」「工事業者は違法だと知っているが、罰則が軽いので、工事をしてしまう」「ばれて、指導された時は、その時だけ、屋根を外す。そして、ほとぼりがさめたら、また元に戻す」
・・・・ なんてことらしいです。

 たしかに、自転車置き場に粗末な屋根をつけただけで、「建設物」というのは、法律のほうがおかしいと思います。一戸建ての場合も、あとから、駐車場にアクリルの屋根をとりつけたりしてますよね。新日軽とかが。ああいうのも、本当は違法になる場合があるそうです。今回の東横イン事件が発端になって、「法令を厳密に守れ!」となったら、日本中がパニックになるかもしれません。

 とはいえ、最初から2重図面用意したり、身障者を差別したり、法令を知りながら改造したり、従業員がみんな黙っていたり、・・・ 東横インのやり方は悪質極まりなく、経営陣は全員逮捕すべきでしょう。

2006/2/1

<追伸>
 2/7時点で書いています。

 昨日(2/6)に東横インの西田社長が国交省内で会見を開き、ひたすら謝っていました。ただ、謝り方が尋常ではなく、「自社で調査したんですか?」の質問にも「私が悪いんです」、「社内で処罰はあるんですか?」にも「全部私が悪いんです」、「社長としてどう責任を取るんですか?」にも、「私が悪いんです」・・・・・、これだけです。経営者としての説明責任をまったく果たしていません。

 私が勘ぐるに、「車椅子の身障者がホテルに押しかけられては困る。今はただ、謝り倒して、ほとぼりが冷めるのを待とう」という、腹の中では、「まったく反省していない」、実は笑っている、会見だったと思います。実際、「直させてください」とかいいながら、横浜のホテルでは、「増設した客室を取り壊すと、配管や構造上問題がある」などとして、「取り壊しではなく、客室を閉鎖することによって乗り切ろう」としています。本気で元に戻す気なんてないんです。お金も莫大にかかりますから。ヒューザーと同じです。
 
 ところで、今回の事件、マンション偽装同様、行政側の監督責任も厳しく追及されるべきだと思います。だって、東横インというのは、省力化のために、ネット上での予約を推進するIT企業です。ネット上で部屋の構成もほとんどわかります。つまり、「身障者用の客室はまったくない」ということは、HPを一瞥するだけで容易にわかるのです。それなのに、行政は何もしませんでした。何もしないどころか、一度違反を見つけて注意をしたのに、その後の検査をせずに、放置していました。東横インは行政指導に従わず、改造を続けました。行政はほったらかしです。行政も悪質です。担当役人は減俸にすべきです。

 さて、以前書いた通り、私自身もこのホテルに宿泊したことがあります。その時の感想はおおむね「良」だったのですが、ひとつ気になったのは、「朝食会場でもあるロビーが狭い」ことです。このホテルは「パンとコーヒー」もしくは「おにぎりと味噌汁」が無料なので、朝、大勢の人がロビーに集まって朝食をとります。しかし、テーブルは少なく、席が足りません。また、席と席の間隔が非常に狭く、動きにくいのです。このあたりに、「効率優先」の思想が垣間見ることができました。また、室内に関しても、バスルームに入る際の段差が非常に大きく高く、足の悪い人には不便な感じがしました。(ただし、この工法のほうが安上がり) 部屋もそんなに広くはありません。ただ、ベッドの下に大きな荷物を置けるような広い空間を設けてあったり、空間の利用方法がうまいのです。あと、「この経営者はケチだな」と思った点は、テッシュペーパーの箱がハーフサイズのものだったことです。これって、非常に使いづらいんですよね。鼻をかむときも、はみ出しちゃうことがあるんですよ。アンケートに「普通の箱にしたほうがいい」と書きましたが、その後改善されていないそうです。
 東横インは、客室にアンケート用紙があって、客がいろいろ意見をかけるようになっているのですが、私が考えるに、会社創立時は、このアンケートをもとに「何を客が望んでいるか」と、ニーズを真摯に探求したと思えるが、その結果がまとまり、ある程度の指針ができてからは、このアンケートは無視しているんではないか? ということです。つまり、アンケートをいまだに続けることによって、「お客様のことを考えてますよ」という表面的なつくろいだけしているのではないか、ということ。私もサービス業のはしくれとして、気になったことを事細かく書いて提出しましたが、それに対する返答はありませんでした。ちゃんとしたホテルというのは、アンケートや苦情に対する返答をよこすものです。特に今は電子メールという便利なツールがあるのですから。

 ところで、当サイトでは、「東横イン青物横丁ブログ」にリンクを貼っています。ブログということで、客からの書き込みもあるだろうと、細かく読んでみました。何件か、客からのコメントが寄せられています。しかし、青物横丁店は違法改造がなかったこともあり、概ね、励ましの言葉ばかりで、非難のコメントはほとんどありません。
「経営者が悪い。従業員は悪くない」
「フロント従業員は矢面にさらされて大変だね。がんばって」
「罪をにくんで人を憎まず」・・・・・

 書き込む人は、皆さん善人ばかりです。それに、東横インのHPでは、各ホテルの稼動状況もわかるんですが、稼働率はほとんど落ちていません。つまり、「不買運動」のようなものは、起きていないということです。まあ、ホテルですから、事件発覚前に予約していて、「いまさら変更するのは大変」というのもあるでしょう。「安いんだからいいんだよ。よそに行く気はしない」というのもあるでしょう。テリー伊藤は「泊まんなきゃいいんだよ!」と力説しましたが、みんな泊まってます。
 でも、どうなんでしょかねえ? これだけ悪いことをしても、何の処罰もないというのはおかしくないですか? 法律もザル法ばかりで、営業停止処分もできないそうです。おそらく現場の従業員はなんら反省しないと思いますよ。私のところにメールで寄せられた意見の中にも、「チェックインの際に、事件のことをフロントの女性に言ったら、”社長が勝手にやったことです。私たちは関係ないです”と返答した。このスタッフはなんら悪びれたところがなく、びっくりした」というのがありました。


 警察の不祥事があっても、交番の巡査は「そんなのごく一部のことですよ。私たちは悪いことはしてません」と平気な顔をしてますが、裏金事件は組織的犯罪でした。「ごく一部」なんかじゃないんです。天下りの問題も、公務員は「ごくごく上層部だけの問題です」とかいいながら、大阪市の職員なんて、全部の部署で一般常識では信じられないような特別優遇を受けていました。特殊団体の職員なんか、末端に至るまで税金泥棒ですよ。ろくな仕事もせずに、高給をもらってます。
 三菱自動車のリコール隠し事件も、「営業所は関係ない」なんて言って、リコール後の修理を手抜きして、その車が事故を起こしています。松下も、修理後の製品でまた重症事故が起きています。これは、末端の職員が、「俺には関係ネエ。なんで俺たちがこんな目に遭うんだ」と、”加害者側”であるにもかかわらず、”被害者意識”を持っているからです。

 不祥事を起こすような会社というのは、不祥事を起こさせるような会社の風土というのがあります。これは大きな組織になるほどそうです。会社と自分は別物だと考えるからです。

 私自身、部下の横領事件に巻き込まれ、この責任を取らされてリストラされました。この時も、実はずっと前に、「会社内でこういう仕組みにしていると、従業員の横領があり得る」ということを上層部に忠告をしていました。しかし、こういう忠告をする人間が他にはおらずに、私だけが上から煙たがられていました。そして、予想通りに横領が起きました。それも不幸なことに、自分のところで。そして会社側は、「横領が起きないように努力していた人間を、逆に、横領事件の責任を押し付けて」辞めさせました。これは私の辞職後わかったことですが、信じられないことに、横領の直接の犯人である元部下が、「証拠不十分」として、免職になっていませんでした。それどころか、その2年後に昇進しているのです。もしかして、私は、はめられたのかもしれません。

 さて、今回の東横インの事件。法令違反は半数以上のホテルで見つかりました。従業員が「私は知らなかった」で済む話ではないでしょう。ホテルが開業する際はかなり前から準備をします。竣工検査が終る時期には、接客やベッドメイクの訓練も行われているはずです。つまり、自分の目で、「昨日まで駐車場だったのが、ロビーに変わる」光景を見ているはずです。また、身障者用客室だったのが、従業員のロッカー室に変わっていれば、「なんかおかしい」と気づくでしょう。また、支配人やフロント主任クラスであれば、消防法を始めとした各種法令の知識もあるはずです。(研修をちゃんとやっているのならの話。おそらく東横インは、ど素人の女性を安く雇用していますから、こういう知識のない初心者をろくな研修もせずに使っていると推測できます。)

 とにかく、「気づかないのもおかしい」「気づいたのに、声に出さないのもおかしい」のです。(一部では内部告発もあったそうです) ですから、「違法行為は経営者の責任で、私たちは関係ない」というのは言い逃れでしかありません。全従業員が責任を痛感し、反省し、諸法令を勉強して、謝罪すべきは謝罪し、再スタートを切らなくてはいけません。フロントという、お客様と接する末端であればこそ、「すいませんでした」と、会社の顔として謝罪するのが筋だと思います。

 

 ところで、ここで、「なぜ、東横インはここまで悪いことをしてまで、経営効率を求めたのか?」を考えて見ます。最大要因は社長が「がめつい極悪人だから」ということです。自宅もものすごい豪邸です。おまけに、近隣には「3階建てです」と予告しておいて、実際は5階建ての豪邸を建てて、いま、日照権のことでもめているそうです。そして、苦情を言いにきた近隣を住民を脅しているそうです。

 東横インが、なぜ、こんなに急速に店舗数を増やせるか? 会社にそんな資産はあるのか? と不思議に思う人が多いでしょう。実は、あの敷地も建物も、実際は東横インの持ち物ではありません。(初期のものはわかりませんが)
 バブル崩壊で、全国で空き地が目立つようになりました。地主は、「遊ばせておくのも困る」と、利用方法を悩んでいました。そこへ、話を持ちかけるのが東横インです。(帽子のおばさんの会社も同じ手法です) 「地主にホテルを立ててもらい、そのホテルを借りて、商売を行なう。30年契約でホテル借用料を払い続ける」という方法なのです。地主側は初期費用がかかりますが、アパート経営よりも、確実に高額&定額の家賃が入ってくるので話に乗ります。まあ、東横インはどのホテルも、なかの構造・装飾・備品はまったくおなじだそうです。つまり、たくさん建てれば建てれるほど、スケールメリットを生かせて安上がりに出来るのです。「ロビーにパソコン設置」と宣伝してますが、全部デルの安物です。初期投資はたいしたことはありません。それに、「2台だけじゃ少なすぎる、増やせ」という要望も多いそうです。(しかし、西田は増やさない) 
 この借用料というのは、ホテルの客室稼働率がおよそ80%を超えると払えるような金額設定になっています。つまり、「最低でも80%は稼動しなければいけない」「80%を超えないと会社としての利益が出ないから、西田としては100%を求める」ということになるのです。とにかく、「高回転率=命」の会社なのです。普通のビジネスホテルであれば、80%の稼働率は「よくやってるよ」と褒められる数字です。
 ですから、違反してまでも、客室数を増やそうとしたのです。75%以下になると支配人はペナルティを課せられるそうです。ただ、ホテルは立地条件で決まりますから、品川の店舗のように、だまっていても「連日100%」のところもあれば、山形米沢のように、70を切ってしまうようなところもあり、支配人も赴任地によって、運不運があります。借用料が定額のため、宿泊費を下げるということはなかなかできず、とにかく稼働率を上げるために、各支配人が努力しています。「チェックアウト時間を1時間延長し、長く滞在してもらえます」「近隣の博物館の入場券を差し上げます」「ビジネス客以外に観光客を取り込む」「セミダブルのベッドを使っていることを利用して、ラブホテルとして使ってもらう (ただし、隣室からは苦情が出る)」「夕食にカレーライスを無料サービスします(カレーが一番コストが安く、手間もかからない)」「終電過ぎの客をカプセルホテル並みの料金で取り込む」といった店舗ごとのサービスで、率をあげようと必死です。東横インはとにかくノルマのレベルが高いのでたいへんなんです。
 
 従業員サイドになって考えると、「今回は営業停止処分がなくてよかった」「でも、今後客室が減ると、売り上げが減って、その分、我々の待遇が悪くなるかもしれない」と心配です。

 この会社、おそらく労組はないでしょう。あったとしても、現場がバラバラで横のつながりが薄い業態ですから、団結して運動することはむずかしいと思います。しかし、今回、これを機に、団結して、「西田退陣」を求めたほうがいいと思います。西田という極悪人が経営者である以上、この会社はよくなりません。


2006/2



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