管理人は超つらいよ   
マンション管理最前線

管理委託契約読んでますか?





 新幹線の車内。廊下を通る車掌を呼び止め、乗客が、「車掌さん、俺、肩が凝った。揉んでくれ」「今年、息子が受験なんだ。相談にのってくれ」「ウォークマンの調子が悪いんだ。直してくれ」なんて言ったら、あなたはどう思いますか? 「この乗客、アホか? 何、馬鹿なこと言ってる。そんなの車掌の仕事じゃないだろ」と思うでしょう。

 しかし、マンションの中では、そういう馬鹿なことが日常茶飯事なのです。「湯沸かし器の調子が悪いんだよ。直してくれ」「蛇口から水がポタポタ落ちるのよ。直してよ」なんてのがしょっちゅうあります。「ちょっと様子を見てくれないかな?」じゃなくて、いきなり、「直してくれ」ですよ。管理人をマンション内のことはなんでもやる「便利屋」だと思っているようです。
 
 また、近所の住民から、「お宅の住民のガキがうちの店の看板に落書きした。あんたから注意してくれ」なんていう苦情をもらうこともあります。これも、とりあう必要はありません。


 管理会社と管理組合の間で交わされる「管理委託契約書」は、非常に大事な書類です。しかし、はたしてどれくらいの区分所有者が理解しているでしょうか? 契約書の中には、最初に「管理委託の範囲」として、「マンションの敷地内で、専有部分以外・・・」とされています。ですから、しっかりと「管理員マニュアル」が制定されている大手管理会社などでは、「部屋の中のことは管理人は関係ありません」と、きっぱり断る人がいます。「管理人さんに直してくれとは言わない。せめて、こういう修理をやる業者を教えてくれないか?」という要望に対しても、「関係ありません」とつっぱねる人もいます。「管理人さん、マンションの前の道路で、猫が車に轢かれて死んでるよ。掃除しておいて」と言われても、契約上は、掃除する必要はありません。

 管理費の滞納に対する処置についても、基本的には組合がやるものです。管理会社は、「初期対応(半年間 督促状や電話などで支払うように要請する)だけする」となっており、1年以上も溜めている人には、組合が対策を講じなければいけません。もちろん、裁判にする場合も、原告は理事長であり、理事長が裁判所に出頭することになります。管理会社が裁判を起こすのではありません。そんなことを知らずに、「管理会社は何をやってるんだ。こんなに管理費を滞納している奴がいるぞ」と理事会で怒る役員がいますが、怒る対象は自分自身なんです。管理費の督促業務は、合理化しにくい、手間のかかる仕事ですから、全部管理会社に任せたいのなら、それなりの経費を支払って特約を結んでください。なんでもかんでも管理会社が委託契約料金の範囲内でやると思うのは甘いです。死亡保険だけの生命保険に対して、「医療保険」「火災保険」「地震保険」「損害保険」・・・・その他全部の補償を求めているのと同じです。

 、マンションに関する法律も強化され、委託契約の内容は厳正かつ細かくなりました。しかし、はたしてその内容を住民側が理解しているのかどうか? これが問題です。最初の契約の際は、契約書の全文を全戸配布し、年度更新の際も、重要事項説明書を配布するようになっています。でも、誰も読んでないでしょう。
(とはいうものの、以前管理人に注意されたことがあり、管理人をよく思わない人は、逆に委託契約を勉強して逆襲することがあります。「おまえなあ、マンションの敷地の外は管理人は関係ないんだよ。俺の犬がどこでションベンしようと文句言うんじゃネエ」と、反撃してくる人がいます)

 生命保険の契約書も、その内容は難解で細かく、とてもじゃないですが、全文を熟読なんか出来ません。このため、いろいろとトラブルが起きています。明治安田生命みたいに詐欺をはたらく会社もあります。やはり、大事な書類である管理委託契約書はもっとわかりやすく書くべきです。最新の携帯電話は機能が増えて増えて、取扱説明書が辞書みたいに分厚いです。そこで最近は、「本編」と「初心者がなんとか基本的な機能を使えるための簡略版(字も大きく、図も豊富でわかりやすい)」の2種類が同梱されていることが多いようです。
 管理委託契約書も、マンガイラスト入りかなんかにして、わかりやすいものを作ったらどうでしょうか? そのマンションの住民の知識レベルに合わせて、バカでも○○○でも、わかるような平易なものを作らないとだめだと思います。

 それに、契約書の署名捺印も、理事長だけでなく、組合員全員のものが必要じゃないでしょうか? 現実的には無理かもしれませんが、「理事長が勝手に押印した」程度にしか思っていない住民がたくさんいます。「委託契約書なんて、俺はしらない。ハンコも押してない。契約書うんぬん、生意気なこと言わずに、働け!」なんていう荒っぽい住民もいます。こういう人に契約の意味を教えるためにも、全員の署名捺印が欲しいです。




 
ところで、専有部分内の小修繕ですが、「完全につっぱねる」管理会社もあれば、「積極的に受け付ける」管理会社もあります。後者の場合、自分の息がかかった工事業者に仕事をやらせて、手数料を稼ぐのです。ただでやるわけないです。ただし、「どういうところがおかしいのか?」「原因はなんなのか?」などの初期対応は管理人にやらせます。これは本来の業務外のただ働きです。働かせるのなら、管理人にも手当をつけるべきです。

 当マンションでは、「専有部分外のことは範囲外です」と断った上で、「”このマンションによく出入りしている業者を紹介して欲しい”ということなら、紹介しますよ」というサービスを行なっています。これは私の独自判断によるものです。つっぱねてもいいんですが、そうすると、「前の管理人はもっと親切だったわよ」とか、「あの管理人働かない」などと中傷されるため、最低限のことだけは協力します。
 よく出入りしている業者のほうが、気心も知れてるし、文句もいいやすい、という面もあります。全然知らない業者に来られるよりはいいです。もちろん手数料はないです。たまに、煎餅とかもらいますけど。私歯が悪いので、もらってもうれしくないです。

 引越なんかも、当マンションのことを良く知っている業者が専属みたいに来てくれればいいなあ、とよく思います。「きっちり」「丁寧」なんてのはテレビCMの中だけの話で、現実はひどい引越業者が多いです。先日(管理人休日)来た業者、エレベーターの養生もせずに、キズをつけ、また、廊下やエレベーター内には、何か、粉みたいなものが筋状に落ちていました。作業後の掃除をしていないんです。エレベーターマットの掃除は大変なんだぞ。



2006/2




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