管理人は超つらいよ　　　
マンション管理最前線

共用部分に私的な工事　どうしたものか？

　

　　古いマンションというのは、建設時にバリアフリーの思想がないため、「各所に段差がある」「廊下の幅が狭い」「エレベーターのボタンの位置が高い」・・・、いろいろと使い勝手の悪いところがあります。また、バリアフリーの問題というのは、「自分自身が障害を持たないと実感できない」「身近な家族に高齢者や障害者がいないと理解できない」という点があり、「点字ブロックがあるとゴツゴツして歩きにくい。あんなもの取っ払ってしまえ」と、某東横インの社長みたいな考え方の人もいて、なかなか全員が賛成しないものです。
　また、工事というのは、お金がある程度かかるものですから、「自分が恩恵を受けないものに支出するのはイヤだ」という役員が少なからずいて、当マンションでも、私からは「玄関ホールに車椅子用にスロープをつけましょう」と以前から何度も進言していますが、「そんなの必要なのはせいぜい５〜６世帯だろ。少数の人のために、組合のお金を多額に使うのは許可できない」などと、いまだ実現していません。

　さて、当マンションのようにスラム化したマンションでは、「公私の区別」がつかない住民が非常に多く、植栽部分に自分専用の家庭菜園を作ってしまったり、外部階段にふとんを干したり、共用廊下に物置を置いたり・・・・　枚挙に暇がありません。こういうのは当然、組合や管理人に無断でやるものですが、先日、以下のような相談を受けました。

　この部屋の住民は、４０歳くらいの男性と、その母親（８０歳くらいか？）の二人暮しです。お母さんが病気で倒れ、車椅子生活になってしまったそうです。そのため、部屋の中に、電動ベッドを搬入したり、いろいろとバリアフリー工事を自室内で行ないました。この時、「部屋の玄関ドアの前のところに、車椅子用にスロープを作りたいのだが、いいだろうか？」という相談を受けたのです。この男性、ルールをきちんと守る人なので、黙って勝手に工事をするといったことはしません。許可を得てから工事をしたい、という、きっちりとした人です。さてと、困りました。部屋の前の廊下部分は、共用部分です。私物を置くのも、本当は管理規約違反になります。当然、工事もだめです。しかし、この部屋は、ちょうど廊下の端にある部屋で、この部屋の住民以外が通行する部分ではないのです。
　という事情もあり、「誰にも迷惑をかけないから、スロープをつけてもいいだろうか？」と相談しにきたのです。こういった、端っこの部屋というのは、当然のことながら、建物の両端に全階あります。たいていは、自転車が置かれたり、大きな植木鉢が置かれたりと、共用廊下なのに、現実には私物化されており、理事会でも時々話題になっています。

　私の個人的心情では、事情が事情なので、「許可してもいいのでは」と思い、理事会に「審議してくれるよう」提案しました。でも、今年の理事長はやる気はないし、役員の中には、「なんでも反対する人」「管理人をよく思わない、犬の飼い主」がいます。そして、その３人はいずれも若く元気で、車椅子の人のことなど考えるような広い心の持ち主ではありません。自分勝手なわがままな人です。

　理事会の席上では、「ふだんは、”共用廊下の上に私物を置くな”と言っている管理組合が、私物であるスロープの設置を許可するのはおかしい」という文句が出て、結局許可されなかったようです。なんなんでしょうね。こういう事情なんだから、スロープくらいいいと思うんですが。反対した人もいつか自分が足腰が悪くなれば必要性が理解できると思うんですが。

　マンション管理に必要なものは、「思いやり」だと思いませんか？


　ちなみに、「マンションの１階は、日当たりが悪い、空き巣に入られやすい、洗濯物を盗まれる・いたずらされる、湿気が多いなど、人気がない」というのは定説ですが、最近は「エレベーターに乗らなくてもいい」「出入りが楽」といった点で、体の不自由な人には人気があるそうです。なるほど、そういう考え方もあるんですね。

2006/2

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