管理人は超つらいよ   
マンション管理最前線

建築当初の写真 すごい重要です




2014/6


 私は、口が酸っぱくなるほどに、「写真を撮っておくことは大事です」と訴えています。これは、長い目で見ると、ほんと大事なことなんです。短期間的には、「なんの意味があるの? 面倒なだけでしょ?」とか思われるかもしれませんが、うちみたいに、建設後35年もたってマンションでは、「過去の写真」が、ほんと重要なんです。

 よく、市役所で、「今度、歴史の本を作成するのですが、50年前以上の、この地区の様子が写った写真をお持ちではないでしょうか?」なんて、呼びかけをしたりしますが、こういう時に、「つまらない写真なんだけど、50年前の路面電車の様子がちゃんと記録されている。これは、すごく、価値がある」なんてことが、よくあって、その写真が、写真集の表紙になったりします。それと、同じで、マンションに関しても、「当時の記録が写真で残っている」というだけでもすごい価値があることなんです。

 私が赴任してからは、私の、「私物」のデジカメで、なんでもかんでも写真を撮っていますからいいのですが、それ以前に関しては、ほとんど写真が残っていません。
 まともなものとしては、「大規模修繕工事」が行われた時の「写真帳」があるのですが、これも、第一回は「築後12年目」ですから、それより古いものはないわけですし、当然、工事に関する写真しかないわけで。

 今、すごく欲しいのが、「建築当初の植栽の様子はどうだったのか?」なんですが、この資料・写真がぜんぜんないのです。分譲会社によっては、「竣工図面」というのを作成して、できあがった建物に関する状況がわかる図面を残しますが、図面だけでは、植栽の様子はわかりません。

 当マンションは無法地帯なので、当初の植栽以外に、住民が勝手に植えた植栽がいっぱいあり、それが今成長し、ジャングル状態なんです。無断で植えた当人は、「これは私が植えた」ってことをわかっているはずですが、それも、35年も経つと、「当事者は死んだ」「転居した」なんてケースが多くて、もはや、「これは誰が植えたんだ?」「これは、もともとあったものか? それとも私物か?」「よそから飛んできた種が、ここで発芽したのか?」なんてことがわからなくなっているのです。ですから、建設当初の植栽の様子が写った写真が必要なんです。

 また、植栽以外でも。昔、「廊下部分から、7番駐車場に行くところに、雨でも足元が平気なように、ブロックで道が作られている。なんで、7番駐車場だけ、そんなことになっているんだ」っていう疑問が出た時に、あれこれ調べたんですが、建設当初の状況がわからず、その問題は判明しませんでした。それが、つい最近、ある老人から、「あれは、7番駐車場を昔使っていた、安倍さんが、自分の靴が汚れないように、自分で勝手にブロックを買ってきて、勝手に置いて、自分専用の道を作ったんだよ」という話を聞いてびっくりしました。
 「でも、あのブロック、すごく整然としていて、とても素人の作業には見えませんが?」「そりゃ、そうだよ、安倍さんは土建屋だから、プロだもん」「へえ、そうだったんですか?」「でも、20年前に出て行ったけどね」
 なんてこともあるのです。建設後に、個人が無断で勝手にやったことが、何十年も経つと、「最初から、ああだったんじゃないのかな」ってことになることもあるわけなんです。

 プレイロットの中にある「砂場」に関しても、今は、すごく、砂の量が減っている気がするのですが、「もともとはどれくらいあったんだっけ?」という疑問が出ても、誰も正確に答えられないのです。写真がないからです。

 今、問題になっている、横浜の「住友不動産&熊谷組」の欠陥マンションにしても、「建設当初」や、「1年に一回くらい」、建物全部のあちこちの写真を記録しておけば、「震災のあとに、そうなったんです。建設工事の問題ではありません」と逃げられたりしなかったはずです。それだけ、写真というのは大事なんです。

 ですから、特に、建設直後の状態に関しては、分譲会社もしくは管理会社が、それこそ、何千枚も写真を撮って、記録を残しておくことが必須だと思います。プリントしなくてもいいです。デジタル記録として残しておけばいいのです。それなら、そんなに費用もかからないでしょう。

 当マンションも、「昔の写真があれば、すぐに、この問題は方がつくのに」と嘆くことがいっぱいです。

 写真はほんと大事だなあ。今、「街の写真館」とかが、構造不況で、バタバタと閉店していますが、「新築マンションの写真を1万枚撮ります」とかいう商売を始めれば、けっこう、仕事になるんじゃないのかな?








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