管理人は超つらいよ   
マンション管理最前線

防犯カメラ3 監視される管理人





 そろそろ年度末です。知り合いの管理人Fさん(I社)と、いっしょに昼ごはんを食べながら、「今年度もそろそろ終わりですね。また、防犯カメラの設置が流れちゃったなあ」と私がポツリ。すると、Fさん、「うちも防犯カメラないけどさ。ないほうがいいみたいよ。」

 え? 私なんかが考えるに、うちのように犯罪が多く、ゴミ出しマナーも悪いマンションでは、防犯カメラの必要性が高く、「こんな時代なんだから、絶対に入れるべきだ」と思うんですが、実際は困ることもあるそうです。


Fさん談:(青字)
 先月の集団研修会で聞いた話なんだけど。うちの会社の別のマンションでさあ、数年前にカメラ入れたんだけど、そこの管理人、この前クビになっちゃったよ、カメラのおかげで。
 実はさあ、このマンション、ペット禁止なんだけど、隠れ飼いしている住民がけっこういて、それを見つけるために防犯カメラを入れたという一面があるんだって。実際、カメラの成果で何軒か見つかって、その部屋には飼育禁止命令を出したんだけど、それでペットを手放した人が、なんと翌年の理事長になっちゃったんだって。輪番制とジャンケンで決めるからね。管理会社サイドから見ると、”理事長になって欲しくない極悪人”でも、理事長になってしまう可能性はあるわけよ。

 その人、もともと規約違反で隠れ飼いしてたから、管理人を恨んでるわけさ。
(「〜しちゃだめです」と注意する役目って、理事長が逃げて、たいてい管理人に押し付けられますからね) それでさ、カメラを逆に利用して、管理人のあら捜しに使ったってわけ。

 「ちゃんと掃除していない」「一部の住民と立ち話をしょっちゅうしている」「引越の挨拶に来た新住民から贈り物をもらった」「住民の郵便ポストの中を覗いて、手紙を出そうとしていた」「裏庭でタバコを吸って休んでいた」・・・・・、いろいろな場面をまとめて編集して1本のビデオにして、会社に送ったらしいよ。「こんなひどい管理人やめさせろ」という手紙といっしょに。会社側も証拠を見せ付けられて、反論できずに、解雇したってさ。防犯カメラって、画像だけで、音がないから誤解も受けやすいよね。ポストから手紙を出そうとしたのも、間違えて、別の部屋のポストに管理費滞納督促状を入れちゃって、それを取り戻そうとしてたらしいんだけど、言い訳する機会も与えられずに、クビになっちゃったみたい。相手が理事長だからね。理事長は権力持ってるから。

 よっぽど真面目で、熱心に仕事をする管理人なら、何見られても平気かもしれないけど、どこの管理人だって、激安給料なんだから、適当に手を抜いて働いてるでしょう。それに、忙しくて、日常業務ができない時もあるじゃない。「全然汚れてないから、今日は掃除しなくていいだろう」という場所もあるだろうし、事務作業が忙しくて、3回の巡回が2回に減る事だってあるじゃない
昼食場所が混んでいて、1時までに戻って来れない時だってあるじゃない。カメラがあると、そういう重箱の隅を念入りにつつけるわけよ。たいした労力かけて分析したんだろうねえ。「どういう時に監視カメラの録画映像を見ることができる」という規則をきちんと作っていなかったらしいから、その隙をつかれたんだねえ。フロントもいい加減なんだよ。

 防犯カメラがあれば、管理人がその日1日何をしていたのか、何をしなかったのか、丸わかりだもんね。管理人監視カメラでもあるわけさ。トホホさんも、バイト疲れで、居眠りしてることあるんでしょ。カメラなんかつけられたら大変だよ。管理人やってる限り、嫌われている住民は絶対に何人かいるわけなんだから、それが理事長になって、夜中に管理人室でビデオチェックなんかやられたら、すぐにクビにされるよ。ないほうが絶対にいいね。俺もこれからカメラ設置が話題になったら、「プライバシーがなんたら」と理屈つけた反対するよ。


 う〜ん、なるほど。「管理人を監視するカメラ」でもあるわけか。そういわれればそうだなあ。昔、流通の仕事している時代、万引き防止のためにカメラ設置しようとした時に、レジのパートさんが、「勤務の様子を監視されるようで、イヤだ」って言ってたのを思い出しました。たしかに、私、過労で居眠りよくしてるからなあ。こりゃまずいわ。


 
それにね、これは別のマンションなんだけど、ここもスラム化マンションでさ、いろいろと問題があるわけ。それで、防犯カメラの録画映像をよく見る機会が多いんだって。そこは、「役員3人以上集まらないと見れない」という規則になっているから、見るときは、大勢で管理員室に入ってきて見るんだって。そして、映像を見る時って、けっこう時間がかかるらしいよ。何か壊された時なんて、犯行時間は「夕方の5時から翌朝の8時まで」なんて、長い時間の場合もあるでしょう。そうすると、それをじっくりと探すのに、相当時間がかかるらしいよ。それにハードディクレコーダーの映像って、ビデオと違って、早送りの時に、映像を間引いて再生するらしいから、スピードの速い早送りにすると、犯行の映像を飛ばしちゃって、発見できないこともあるから、ゆっくりした早送りじゃないとだめらしいよ。そんなわけで、大人数で管理室に上がりこんで、飲み物とかお菓子とも持ち込んで、じっくり映像を見るらしいんだって。だから、画像閲覧をした翌朝は、管理室がゴミだらけで汚されているんだって。もちろん、その掃除は管理人がやるのよ。困ったもんだネエ。
 また、画像がきちんと録画されているかどうか、毎朝、機器チェックすることになっていて、それの仕事をやらされる管理人もいるんだって。あんなコンピューターみたいな機械、ヨボヨボの年寄りにいじれるわけないのにね。取扱説明書もあるけど、難しくって理解できないらしいよ。トホホさんは、まだ若いから大丈夫かもしれないけど。
 結局、防犯カメラって、いいこともあるけど、管理人にとっては悪いこと、面倒なことも増えるってわけ。


 そういうこともあるんですねえ。やっぱり、実際の現場の話を聞かないとだめだなあ。


<追伸> 逆のパターン

 日頃の評判はあまりかんばしくない管理人さん。「愛想が良くない」「一所懸命に働いているように見えない」と、勤務評価は低かったのですが・・・
 ある事件が起きて、役員が防犯カメラの映像をじっくり見たところ、管理人の姿がいたるところに写っていて、「あの管理人さん、見た目は地味だけど、すごい熱心に働いている」ということが、映像からわかり、評価が急に高くなったそうです。地道な努力が報われることもあるんですねえ。


2006/3
ざまあみろ。辞めさせてやったワイ。




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