管理人は超つらいよ   
マンション管理最前線

エレベーターの法定点検





 昨日、うっぷん晴らしにバッティングセンターへ行きました。そこはビルの屋上にあるため、エレベーターを使います。私はエレベーターに乗るときも、「どんな防犯カメラを使っているのかな?」とか「蛍光灯は切れてないかな?」とか見てしまいます。職業柄ですね。ちょっと気になったのは、「定期検査報告済証」というもの。これ、普通はカゴの中の操作盤の上方に必ず貼ってあります。これの”有効期限”が”平成18年1月”だったのです。(今は、18年5月) 「あれ、有効期限切れじゃないの? 大丈夫なの。このエレベーター?」と普通の人は思うはずです。

 まず、エレベーターの点検のことを説明しましょう。

 みなさんのマンションでは、年に何回検査をしてますか? これが実はマンションによって、ほんとバラバラなんです。
「1ケ月に2回」
「毎月1回」
「2ケ月に1回」
「3ケ月に1回」
「半年に1回」

 こんな感じで、一定していません。なんでか?というと、点検の回数は業者が勝手に決めているからです。

 実は、法律で定めるエレベーターの点検(これを「法定点検」といいます)は、年に1回です。車でいう車検みたいなものです。
 そして、これの報告が上記の「定期検査報告済証」なんです。では、毎月1回などという点検は何か?というと、”法律には定められてないが、これくらいやったほうがいいんじゃないの? とエレベーター会社が勝手に考えた頻度”なんです。私も長いこと管理人をやってますが、エレベーターが壊れることはめったにないです。「こまめに点検しているから壊れないんじゃないの?」と思われるかもしれませんが、点検報告書では「何も無し。異常なし」という報告ばかりで、なにか調整したとかの記録はほとんどないです。要するに、ほっておいても壊れない、というものなんです。それに、「検査した翌日に壊れた」(余計なところを触ったようです)なんていうこともあり、現場の感覚では「検査しないほうがいいんじゃないの?」という感じです。

 エレベーター会社は「点検の頻度が高いほうが安心ですよ」とか、「古いエレベーターはまめに点検しないとだめですよ」とか言いますが、「ほんとかよ?」と思います。当マンションでは、そろそろエレベーターの更新時期(一般的に25年と言われる)も近づいているほど老朽化してますから、住民から「頻度を減らしたらどうなの?」という意見が出ませんが、私が理事長だったら、「もうすぐエレベーターを全部取り替えなければいけない。そうなるとお金がかかるから、日頃のメンテナンス費用を見直して削減したい。今の頻度は高すぎる。3ケ月に1回にして、メンテ費用を安くしてもらいたい」と言いたいところです。

 実際の話、点検頻度が高いのは「何回も点検していますから、メンテ費用も高いんですよ」という言い訳のためだと思います。たくさんお金をとりたいので、たくさん点検してるんです。実際は不要なのに。

 「とはいえ、やっぱり半年に1回じゃ、少なくない?」と心配する人もいるでしょう。しかし、この点検というのは、「現場に係員が実際に出向いてする点検のこと」であり、現実には電話回線を通じた遠隔操作により、エレベーター会社はこまめに点検をしているんです。「遠隔監視」といいます。夜中の2時3時、誰も乗らないような時間に、エレベーターを遠隔的に動かして、正常に作動しているかどうか? 確認しているんです。よく、「夜中に、誰も乗っていないエレベーターが勝手に上下している。幽霊か?」という質問がありますが、それはこういうわけです。
 ですから、遠隔監視をちゃんとやっていれば、半年に1回でも大丈夫だと思います。ただし、エレベーターのカゴの中の蛍光灯の交換、これはエレベーター会社の人間しかやってはいけない仕事なので、玉切れの際は、係員を呼んで来てもらって交換してもらう必要があります。(よく、「管理人さん! エレベーターの蛍光灯がチラチラしてるよ。交換しておいて」と言う居住者がいますが、実は私たちはノータッチなんです。”やらない”んじゃなくて、”やっちゃいけない”なんです。「あの管理人ダメな奴だなあ。まだ交換しないよ。ひどい奴だ」などと誤解なきようお願いします。エレベーター会社の人間が来るのが遅いんです)

 こういうことがわかっている人間が役員の中にいると、「点検頻度を下げて、点検費用を下げよう」と提案するんですが、エレベーター会社はたいてい、「点検頻度を下げるんですか? 心配ですよ。閉じ込め事故とか起きたら知りませんよ」と、他の役員の不安をあおり、結局、理事会決議はとおらず、節約案はたいていお流れになります。

 新築マンションでも、毎月点検とかありますが、正直「ムダだなあ」と思います。エレベーター会社の好き勝手に契約結んでるんでしょう。

 ただし、「管理会社を変更する」など劇的変化のある時は、思い切ってエレベーター点検費も見直して、点検頻度を低くしたらいい、と思います。


 さて、話を最初の「定期検査報告済証」に戻します。この有効期限が切れているエレベーターはかなりあります。また、「現在申請中です」と断り書きのシールを貼ったものもあります。車の車検だと、期限切れ=アウトなんですが、エレベーターはかなりルーズです。というのは、実際には法定点検は決められた期限にきちんと実施されています。
 法定の点検ですから、やらないわけにはいきません。ただし、点検後の作業に時間がかかるのです。おそらく「独占企業=安泰」にあぐらをかいてルーズになっていると思うんですが、市への申請書作成作業に相当な日数がかかり、それに理事長のはんこをもらうのに、管理会社や管理人、そして理事長本人がルーズだと、もっと時間がかかります。そして、財団法人○○建築○○協会といったところに実際は申請するわけですが、おそらく公務員の天下り団体なんでしょう。ここの手続きも遅いようです。その結果、期限が切れてから4ヶ月も経過しているエレベーターが存在するのです。とはいえ、法定点検以外の通常の点検がその後行なわれているはずなので、安全面は大丈夫なはずです。



 こんな感じで、エレベーター点検ひとつとっても、一般居住者の知らないことがたくさんあります。

 とにかく、エレベーターのメンテ費用は高すぎますよ。フルメンテナンスとかいいながら、壁の落書きは補修してくれないし。






2006/5



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