管理人は超つらいよ   
マンション管理最前線

書類の保管年数って どうなってるの?



2014/7


5〜7月というのは、マンション管理組合の「新しく就任した役員さんたち」の新しい年度が始まる時期のため、「新しく理事長になった人」から、「教えてくれませんか?」と、メールで相談を受けることがあります。

お役に立てるよう、なるべく、まじめに回答しています。今回のその中のひとつをご紹介。

築18年のマンションだそうです。

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新しく理事長になったので、集会室にある、書庫を見た。

書類が少なかった。
前理事長に聞いてみると、「うちのマンションの管理組合は、設計図面などを除いて、ほとんどの書類は、3年で破棄することになっているので、最新の3年分の書類しかない」とのこと。

なんと、「総会議事録」や「理事会議事録」ですら、3年以上前のものが破棄され、残っていない。

6年前に実施された「大規模修繕工事」の記録帳もなくなっていた。

管理会社に聞いてみると、「うちの社内規則で、3年になっているので、3年で破棄しています」という話。歴代の理事長はそれを鵜呑みにしていたらしい。
エレベーターの点検記録や、管理人の業務日誌も、3年以上古いものは現存していないらしい。

唖然とした

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とのことです。私も、その話を聞いて、唖然としました。管理組合に対しても、管理会社に対しても、あきれてものが言えません。

おまけに、そのマンションでは、大規模修繕工事の2年前から、大規模修繕に備えて、「マンション管理士」と顧問契約を結び、工事完了後も惰性で、顧問契約 を継続しているそうです。そのように、すでに8年間も、マンション管理士がついていながら、書類の保存年限に関して、何も、アドバイスをしなかったそうで す。「みんなの党の渡辺代表」が驚くくらいの、「唖然だ」。

実は、マンション管理における各種書類の「保管年限」というのは、法律に規定されているわけでもなく、事実上、「管理会社がそれぞれ勝手に決めている」というところが多いようです。

普通の会社組織であれば、「会社法」とか「法人税法」とか、いろいろな法律で、その書類の種類によって、「永久」とか「10年」とか「3年」とか、決まっているのですが、

こちらを参考に


管理組合に関しては、何の法的根拠がないのです。(行政の怠慢だと思う。マンション管理適正化法ができた際に、いっしょに制定すべきだったと思う)

そういうわけで、ネット上でも「マンション管理組合の書類の保管年限って、どうなってるんですか?」と質問する人がいて、それにこたえて、

http://www.fukukan.net/paper/080401/work_paper.html

こんなページがあったりして、種類ごとに、「永久」「10年」「5年」と区分しています。

また、千葉県のマンション管理士会さんでは、
http://www.chiba-mankan.jp/?page_id=1388
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これら書類の保存期間についてはマンション標準管理規約にも特に定めはありませんが、マンションの経年に関係なく重要な書類は「永久保存」、修繕計 画の作成や大規模修繕工事の実施に関する各種調査・点検・検査・工事記録などは「10年保存」、その他については「5年保存」「その都度更新」の4つの分 類にしているところが多いようです。

なお企業会計では、文書の内容によって「10年」「7年」「5年」と定められている法定保存期間があり、会計書類については、そのうち最も長い「10年」を保管の目安にするのも1つの考え方です。

理事会で書類の内容、必要性、マンションの実情などを考慮したうえ、保存期間の定めについて運用細則を作成し総会で決議することを検討されたらよいと思います。

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と書かれています。「検討されたらよいと思います」と書かれていますが、相当、マンション管理に精通した人じゃないと、この制定は難しいので、やはり、 「お任せ」じゃなくて、ある程度の「基準」を決めるべきだと私は考えます。「マンション管理士さんだから、それくらいしろよ」、と私は思います。


しかし、今回の相談者理事長さんにも回答しましたが、私が考える「書類の保管期限」(カメラ撮影した写真などの資料も含む)は、

すべて「永久」に保存すべき

です。

種類に関係なく、全部、永久です。

長年、管理人をやっていて、わかってきたことなんですが、「エレベーターの点検書類」だって、紹介した上記ページでは「5年」になってましたが、「10年前に、原因不明の閉じ込め事故があったよねえ。その時の詳細な記録は残ってない?」とか、そういう事例があるんです。

うちのマンションは、もう、築35年くらいたちますが、新築時から住んでいる人もいて、「昔はこうだったのに、なんで、今は昔と違うんだ」とか言い出すこ とがあります。なにしろ、昔のことなんで、「記憶違い」の可能性もあるんですが、その当時の「理事会議事録」とかがないと、それを検証することもできない わけで。

「32年前に、管理人が、こう言ったぞ」なんてことまで言う人がいます。これも、32年前の管理人業務記録を調べないと、事実が判明しません。

ですから、私の体験から導きだされた結論は、「とにかく、永久保管!」なのです。管理規約にも、管理委託契約書に、そのように制定して下さい。

ただ、書類保管スペースが足らないマンションも多いかもしれません。

スペースがあれば、「紙媒体を永久に残す」ことがいいのですが、スペースが足らない場合は、「スキャンしてデジタルデータ化して残す」という方式で、紙は捨ててもいいのですが、とにかく、データは永久に残してください。
(※デジタルデータはすぐには見にくいし、将来的に規格が変わって表示できない、なんてことも予想されるので、本当は、紙のままで保管がベターです。紙とデジタルのダブル保管がベストかもしれません)


ですから、考えるべきは、スペースがないマンションにおいて、「紙として残しておくのは何年分か?」ということです。形はともかく、資料は永久に残してください。

なお、細かな話ですが、紙の資料を減らす作戦としては、「定期点検の報告書」などについては、「特記事項なし」「異常なし」の報告書は、捨てて、「なんかあった時の報告書だけ残しておく」という手もあります。こうすると、相当量が減ると思います。


こういったことを、そのマンションの実情に合わせて、適切にアドバイスができるのが、「本来のマンション管理士」だと思うんですが、今回の、無能マンション管理士をはじめとして、ここまでできるレベルの人がなかなかいないもんですなあ。情けない。

また、今後、管理会社のリプレイスを考えているマンションの場合、管理会社の選定をする際に、「おたくでは、書類の保管年数って、どうなってるの?」と聞いてみて下さい。「全部、永久保存です!」と、すぐに断言する会社であれば、そこは「良質」と言えますが、「え〜っと。社に戻って調べてみます」とか言うようなら、そこはやめましょう。






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