管理人は超つらいよ
マンション管理最前線
大規模修繕工事 駐車場の輪止めの位置を変更する |
今回は、大規模修繕工事における、駐車場の改造工事について述べます。
昔、乗用車というのは、「セダン」が普通でした。カローラ サニー コロナ セドリック クラウン・・・・ みんなセダンでした。
今は、セダンというと、タクシーとか、偉い人の専用車くらいしか残っておらず、一般の人が乗る乗用車はたいていが、ワゴンとか、ミニバンと言われるものに変わりました。
この変化によって、車の「ホイールベース」がすごく広がりました。
「ホイールベースが広がっても、車自体の全長が変わっていなければ、駐車場は、なんら問題はないでしょ?」と思われるかもしれませんが、実際は、そうではないんです。問題は、「車輪止め」です。(後輪を、これ以上後ろにいかさないための障害物)
うちのマンションなんかのように「古い」ところでは、この車止めの位置が、旧来のセダンタイプを基準に設置されています。機械式駐車場の中でも、古いところは、そういう設計です。
その旧式の駐車場に、最新の「めいっぱいホイールベースを広げたミニバン」を置いた場合、後輪を車輪止めにあたるように置いた場合、「もっと後ろに行けるはず」なのに、行けず、この後方には空間ができてしまいます。昔のセダンであれば、後輪の後ろには、トランクルームがありますが、ミニバンは、後輪の後ろには、もう、バンパーくらいしかないからで す。
そうなると、駐車場の区画の全長が4m30cmで、旧来の全長4.3mのセダンがぴったり置けた駐車場でも、そこに、全長が同じ4.3mのミニバンを置くと、後方に空間ができる分、前方がはみ出てしまいます。
そう、「駐車場の区画の全長が4.3m」で「自動車の全長も4.3m」なのに、車輪止めの位置の関係で、「はみ出て」しまうのです。
ですから、古いマンションでは、駐車場に大きめの最新型のミニバンなんかを置かれると、「本当はきちんと入るはずなのに、前方がでっぱってしまう」という事態にな ります。こうなると、車庫入れの際に危険ですし、駐車場の前を歩く歩行者も困ります。機械式の場合は、「収納NG」ということにもなります。
このように、駐車スペースの形状も、「時代に合わせて変化させないといけない」ものなのです。
さて、これは他のマンションの話ですが、そこも古いマンションで、車輪止めがセダン用の設計になっていて、そこの管理人さんが、「今は、みんなミニバンば かりでしょう。だから、ほとんどの車が、駐車場の区画からはみ出て駐車していて。車庫入れの際に、こすったり、ぶつけたりする事故が多発してまして。困っ ています」と相談してきました。
私は、「おたくは、再来年に大規模修繕工事でしょう? その時に、後輪止めの位置を少し後ろに下げる、改造工事をやればいいじゃないですか?」と回答しました。
「あ、そうか、車輪止めの位置を変えればいいのか! なんで、そんな単純なことに気が付かなかったんだろう? 私は、今まで、区画に入らないから、駐車場を利用できる自動車の大きさ制限を設けるようにしよう、とか、そんなことを考えていました」
そういうわけで、そこの管理人さんは、その当時の理事長と、フロントに、「次回の大規模修繕工事では、後輪止めの位置の変更をぜひお願いします」と口頭で依頼しました。
が、しかし。
理事長は、1年ごとの輪番制で変わってしまいます。この件の引継ぎは行われませんでした。また、フロントはアホですから、このことを忘れてしまいました。 おまけに、このマンションは、大規模修繕工事を管理会社にはやらせずに、独自に探してきた「コンサルタント」と「施工会社」に任せることにしました。
こうなると、管理会社としては、儲けが一切ないので、積極的に、このマンションを良くしたい、などとは思わず、汗をかく気もありません。ただの傍観者になってしまいます。
自称、「大規模修繕工事の専門家」である、そのコンサルは、コンサルタントが仕事なのに、そのマンションをろくに訪問することもなく、管理人に実情を聞くこともなく、勝手に仕事を進めていったそうです。
管理人さんとしては、ちょっと心配になったので、当時の営繕委員会の委員長に、「車輪止め」のことを伝えたのですが、その委員長さんも管理人軽視の人だっ たようで、「管理人の言うことなんか、聞いてられるか」と思ったのか思わなかったのか、どっちにしろ、輪留めの位置変更は、工事の内容には含まれないま ま、大規模修繕工事が行われたそうです。
私が考えるに、専門家であるコンサルタントであれば、マンション内をじっくりと観察して、その時に、当然、「駐車場区画から車がはみ出ているのがたくさん あるなあ。あ、これは、輪止めの位置が旧式なんだ。直さないと」と思いつくはずだと考えます。でも、思いつかなかったようです。
そうやって、車輪止めはそのままで、工事は終了。
でも、その管理人さんは、駐車場利用者の「もうちょっと、車輪止めを後ろにしてくれれば、ちゃんと区画に入るのに」という苦情に対して、「大丈夫ですよ。今度の大規模修繕工事で改造しますから。そうしたら、ちゃんと入りますよ」と答えてしまっていたそうです。
ですから、苦情を申し立てていた駐車場利用者は、「あれ? 何も変わっていないじゃないか? おかしいじゃないか!」と、営繕委員会に文句を言いました。そこで、ようやく、この問題が顕在化し。
その後、
「管理人がそんな約束を勝手に言うから悪いんだ」(営繕委員長) とか
「私は一般的な設計管理をしただけです、落ち度はありません」(コンサル)
「コンサルの指示通りの工事をしただけです」(工事会社)
「今回の工事は、営繕委員会とコンサルさんがやったことで、管理会社はからんでいないので」(フロント)
「営繕委員長にちゃんと言いました。その時は、はい、わかった、との回答を得ました」(管理人)
などなど、責任の押し付けあいが行われているそうです。
ただ、結果的には、後日工事になりましたが、車輪止めの位置変更は行われたそうです。(当然、費用も別にかかった)
でも、大規模修繕工事の時にいっしょにやればよかったのに、後日改めての工事となったために、また、「駐車場の車両をいったん全数、別の場所に移動しても らう(近隣のコインパーキングとかを利用)」という面倒な作業が必要になり、その手配を、管理人さんがやらされたそうで。管理人さんとしては、「私の意見 をちゃんと聞かないから。こういうことになるんだ!」と、激オコプンプンでした。
このように、ろくに現場を知らない、ド素人どもが、管理人を無視して、大規模修繕工事をすると、お粗末なことが起きるという、実例のご紹介でした。お役所仕事と似てるなあ。
このくらいのことまで、気が回るのが、本物の「コンサル」だと思いますけどね、私は。
なんで、最低賃金で働く管理人がそういうことを知ってるのに、高額な報酬をもらうコンサルが、気が付かないんでしょうかねえ? あ〜、不思議。
(ただ、少数ながら、いまだに、旧来のセダン車が存在するため、「車止めにあてて駐車する習慣」の人がセダン車に乗り、輪止めにぶつかるまで、バックした ら、壁にぶつかった、ってことがあると、責任を追及されて、嫌だから、そういうのを避けるために、わざと、旧来の輪止めの位置を維持するマンションもあり ます。)
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