管理人は超つらいよ   
マンション管理最前線

困る言葉 「前の管理人さんは・・・・・」





 2007年1月。ご近所への年始挨拶周りも一段落しました。今日は、挨拶を受ける立場です。

 「あ、どうも。私、昨年の12月に公園横の○○マンションの管理人に赴任しましたBです。この正月からひとり立ちして仕事をしております。どうぞ、よろしく・・・・・」と挨拶に来た人がいました。前の管理人さんとは親交がなかったので、この人のことは知りません。しかし、ご近所のよしみです。「トホホです。こちらこそよろしく」と挨拶を返します。
 普通はこれで帰るところですが、Bさんは、「すいません。管理人の先輩としてアドバイスを受けたいのですが、よろしいでしょうか・・・」とのこと。どうやら悩みがあるようです。

 「うちのマンションの住民の人たち、ゴミの出し方がひどいんですよ。どうしたらいいもんでしょうか?  それに、その他のことでも、マナーを守ってくれる人が少なくて・・・・」 かなりお悩みのようです。

 そういえば、「市のたより 1月号」では、「図書館の本 SOS!」という特集記事が出ていました。市民の共有の財産である、図書館の蔵書が心無い利用者によって、「落書き」「切り取り」などの破損の被害を受けているとのこと。とにかく、ここ数年、どんどん悪化するばかりで、まともな本が少なくなってきて、赤信号が点滅しています。紙面では「公共のマナーを守りましょう」と訴えていました。マンションも同じです。住民全体の共有財産である建物に落書きしたり、壊したり、廊下に自転車を置いたり、私が管理人職をしているわずかな年月の間にも、「悪化している」という流れが感じ取れます。管理する側はほんと大変になる一方です。

 Bさん、12月は「採用後研修」を本社で2週間受けた後に、「実地研修」を現場で前任者のもとに2週間受け、年明けにひとり立ちしたそうです。研修を全体で1ケ月もやってくれるなんて最高の会社です。それにBさんは、県で実施している「シルバー職業訓練講座」で管理人業を学んでいるそうで、耳学問としては相当のものを持った状態で、実戦に投入されたのでした。しかし、現場に出てみると、「今まで聞いたことと全然違う」「聞いたないことばかりやらされる」と戸惑ったそうです。そうでしょうね、私も県の講座の中身を知っていますが、とおりいっぺんのことしか教えないし、技術的な内容が多いし(これはこれでいいことです)、管理人職で一番大変である、「不良住民との接し方」というのはほとんど研修では教えていません。教える側が「実戦を経験していない人」ですから無理もないです。Bさんも、研修で「管理規約はそのマンションの憲法である。きちんと覚えること」と教わったので、一生懸命覚えたそうです。(この人、すごい真面目です) でも、覚えれば覚えるほど、「全然守られてないじゃないか?」ということに気づき、唯一のよりどころである管理規約がこんな状況で、かつ、「規約なんて誰も知らないわよ。読んだことのある住民なんているわけないじゃないの」と住民に言われ、「規則なんて破るためにあるのよ。あなた、なにきれいごと言ってるのよ」と住民にたしなめられる有様で、
「私はいったいどうしたらいいだろう」と鬱になってしまったようです。

 Bさんの前任者Aさんは、もともと短期契約で管理人になった人で、なにやら「あと1年待てば郵政公社で雇ってくれる約束」というのが確約されており(どういう約束なんでしょうか? 公務員はよくわかりません)、「適当に1年間つとめあげればいい」と思って管理人の仕事をしていたため、全然やる気のない人だったようです。また、規則やマナーをしっかり守らせるようにすると反発され、それによって疲弊することがわかっていたため、何事も「別にいいんじゃない」で済ませていたそうです。
 ゴミに関しては、違反ゴミは他のゴミと混ぜて、大きな袋に入れてカモフラージュし、「いいじゃねえか。持って行ってくれよ」と清掃局員に無理に頼み、再分別などすることなく、持って行ってもらっていたそうです。実地研修でそれを見ていたBさんは、「ちょっと待ってくれよ。これじゃ、リサイクルなんてできないじゃないか? 市長が言っていることと、現場で行われていることは、こんなに乖離しているのか? これはひどい」と思ったそうです。同時に「私が管理人になったらちゃんとルールを守ってもらって、地球環境をよくするんだ」とも思ってしまったそうです。(それはとてもいいことなんだけど、マンションじゃ無理だなあ) また、前任者は「廊下に自転車を置こうが、植木鉢を置こうが、何も注意しなかった」そうです。とにかく、すべて放置していたそうです。「面倒なことには首はつっこまねえ」主義だったみたいです。その結果、そのマンションはひどい様相を呈していて、理事長からは「管理人さんが代わるのを機会に正常化させたい」という希望が出ているため、Bさんも張り切っているようですが、マナー向上のために組合が自ら動くかというとそうではなく、全部管理会社任せ。管理会社は派手に動くと、「今まではなんだったの?」「今まで管理会社が手抜きしていたからマナーが悪くなったんじゃないの?」とつっこまれることを心配して、フロントはなかなか動きません。発破だけかけられて、実際に動くのは管理人にすべてお任せ、という状況らしいです。

 しかし、実際に、ルール違反者を注意すると、「管理人のくせに住民に指図するな! 前の管理人は何も言わなかったぞ」「前の管理人は”分別なんか適当でいいですから”といってたわよ」・・・・・という反発の嵐だそうです。前任者Aさん、相当いい加減だったみたいです。Bさんにしてみれば、「行政が言っていることを代弁しているだけ」「管理規約・使用細則で決められたことを言っているだけ」「普通の一般常識を言っているのに怒られる」という状態で、頭を抱えているそうです。「黙認していればいいでしょうけど、あんなひどい状態を黙認していたら、環境はどんどん悪化します。地球温暖化が進み・・・  ゴミ処理場で安月給で働いている下請けの人たちに過酷な労働をしいることになります・・・・  リサイクルは市民の義務です。違反を見逃せません」とBさんはおっしゃります。

 う〜ん、Bさんの言ってることは至極正論で反論の余地はないはずなんですが、現実は正反対なんですよね。これがこの仕事のつらいところです。
 とにかく「前任者と違うことをする」のは、けっこう大変で反発を買います。今回のように、前任者と新人の温度差が激しいとなおさらです。本当は管理会社がしっかりして、基準をはっきりもうけて、「行政が決めたことは守らせる」「管理規約・使用細則は厳守させる」という首尾一貫した姿勢を見せるべきなんですが、そういう、しっかりした会社、ありませんね。

 でも、「前の管理人がOKした」という言葉には時々、「脅迫を受けたからそうなった」という場合もありますから、うのみにはできません。他のマンションの例ですが、非常に真面目できちんとした管理人Cさんが辞職した後、新管理人が、屋上に一住民の個人所有物である物置が置かれていたことに気がつく、という事件がありました。この物置の所有者は「前の管理人が、”置いてもいい”と言ったから置いた」と主張します。毎月屋上を点検する設備点検員は「前管理人は、”このマンションは敷地が少なく、掃除道具を収納する道具箱を置く場所がないために、仕方なく屋上に置いた。本当はいけないことだが目を瞑って欲しい”と言っていたよ」と証言します。「話が変だなあ。直接本人に聞いてみよう」ということになって、前管理人Cさんに電話して聞いてみると、「すいません。ばれちゃいましたか。実は・・・・」

 真実は、
「ヤクザまがいの強面の住民(最上階に住んでいる)が、勝手に屋上に物置を設置したんです。私は”ここに置いてはいけません。ここは共有部分です。個人のものは置けません。また、安全面からも置けません”と撤去をお願いしたんですが、ナイフをつきつけられ、”わりゃ、誰にもの言うトンのじゃ。わしが誰か知っとるのか。○○組のもんじゃぞ。それでもまだ言うか!”と、脅迫されたため、仕方なく認めたんです。悪いことだとはわかっていたんですが、殺されては身もふたもないのでヤクザの言うことに従いました。設備さんには、この経緯がばれるとこまるため、うそを言ってごまかしました」とのこと。

 管理人って、命まで狙われる危険な職業なんですねえ。誰でもできる仕事じゃないですよ。





2007/1



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