管理人は超つらいよ   
マンション管理最前線

テレビの刑事ドラマに出てくる、防犯カメラの拡大映像
あれ、ウソですから

ステッカーの重要性



2014/10


 「相棒」新シリーズが始まりました。また、「科捜研の女」も始まりました。

 最近の警察ドラマには、毎回、まず間違いなく、「防犯カメラ」が出てきます。そして、昨夜(14/10/22)の「相棒」でも、そうでしたが、その「映像」が、事件を解く鍵になるケースが非常に多いです。

 昨夜の「相棒」。駅の防犯カメラの映像を分析していました。ちょうど、上にある写真のような感じです。相棒の中で、鑑識の米沢さん(六角さんですな)は、乗客の1人をアップに拡大し、さらに拡大し、その人物がしている腕時計の文字盤の画像を鮮明に映し出しました。その画像により、「7時15分」という、事件を解く鍵を発見し、事件は解決に導かれます。

 しかしですね。上の写真を見てもらえればわかるように、この画像の中で、1人の人物の腕時計の文字盤を見るって、ものすごい拡大率です。
 こういう映像(今はすべてデジタル画像)は、拡大をすると、アダルトビデオのモザイクのような感じになり、なにがなんだかわからなくなるのが普通です。


 
私も仕事上で、防犯カメラの映像をよく分析していますし、周囲で事件があれば、すぐに刑事がやってきて、「すいません。見せてください」って頼んできて、それに立ち会って、機械を操作します。刑事は、「あ〜、写ってることは写ってるけど、小さいなあ、これじゃ、顔はわからないなあ。あきらめるしかないなあ」と帰っていきます。「相棒」とか「科捜研の女」みたいに、「じゃあ、そこ拡大して」なんてことは、現実にはできないのです。特に、夜間の映像は、もとになる映像が非常に不鮮明ですから、絶対に無理です。

  

 この写真の人物像から、テレビドラマでは、鮮明な顔写真を作り出し、襟につけている社員バッジの図柄もわかるようにするし、腕時計の文字盤まで鮮明に映し出しますが、それは「完全にフィクション」「インチキ」です。「相棒」も「科捜研の女」も、どっちかというと、「リアルさが売り」のドラマなのに、こういうことをするのは、嫌ですねえ。特に、科捜研は、「科学的なこと」を前面に出すドラマなのに、こんな、「アベノミクスは国民生活を向上させます!」に匹敵するような大嘘をこくのは許せません。

 本当の実際は、「別角度からの同じ人物の画像を入手して、複数の画像を合わせて分析し、その人物を推計する」とか「歩き方の特徴を割り出して、人物を探し出す」とか、「この輪郭のカバンは、きっと、吉田カバンのポーターシリーズだ」とか、そういう複合的な解析によって、「画像を鮮明にした」と同じような効果を探っています。

 とにかく、テレビドラマの画像はウソです。

 なんてことを言うと、「じゃあ、なぜ、相棒の米沢さんは、腕時計の文字盤の鮮明な画像を作り出すことができたの?」と疑問に思う人もいるでしょう。それは、あの画像は、もともと、2000万画素とか、そういう高精細のデジカメで撮った写真を、「防犯カメラで撮った画像」ということにして、まず、全体像を見せ、そして、一部分を拡大しているのです。もともとが、2000万画素もあれば、全体像では面積の小さな人物でも、それを拡大することは容易です。(もしくは、時計の文字盤のアップの写真を同じ角度で、別のカメラで撮っているのかもしれません。そして、それを合成する)

 今の防犯カメラは、まだまだ、スタンダードサイズのカメラで撮っているので、画素数換算すると、実質40万画素程度しかありません。(ハイビジョン映像だと200万画素相当になるが、ハイビジョンは、レコーダーも相当高価なものを揃えないといけないので、コストの問題も有り、まだまだ、普及はしていない)
 もとが、40万画素の写真は、拡大しても、モザイク状になるだけです。

 こういう事情を知らない人が、テレビドラマを見て、それを「本当のこと」と誤解するのが困るのです。うちのマンションの場合でも、「自転車が盗まれた。防犯カメラの映像を見せてくれ」と言ってきた人に、映像を見せて、暗い中、画面のはしっこに、怪しい人影を発見し、「これが犯人かな?」と思われると、「じゃあ、管理人さん。そこの人物を、もっと明るくして、そして、拡大して・・・」なんてことを言ってきます。
 拡大機能自体はあるのですが、さっきも言ったように、モザイク状になるだけです。「それを鮮明にして」とか言われても、「できません」と答えるしかありません。「できないわけないだろ? ゆうべのドラマじゃ、沢口靖子が、パパパっと、きれいにして、顔をはっきりさせてたじゃん!」って言います。不可能な理由を丁寧に解説して、納得してもらわないといけません。面倒だなあ。

 インチキな刑事ドラマのおかげで、管理人が苦労しています。ウソはやめてよ。だめよ、ダメダメ!

補追

http://m-kanri.biz/mansion_news/index.php?eid=2169

 このHPで、「全周あるいは広角撮影が可能なドーム型カメラなどをうまく使えば、共用部分に設置するカメラの数を減らせるだろう。」という防犯カメラの設置台数を減らす方策を述べていますが、これも考えものです。広角レンズになると、広い角度が写りますが、それに反比例して、映る人物の姿は小さくなります。小さくなると、たとえ、帽子をかぶっていなくても、「この人、誰だ? 姿が小さくて、判別できない」ってことになります。

 まあ、写ってることは写っているから、「カメラで撮ってるぞ。端から端まで全部写ってるぞ。だから、悪さをしちゃあかんぞ」という抑止・警告効果はありますが、実際に、「犯人を特定しよう」とすると、広角レンズの場合、難しくなることが多いです。(エレベーターの中とか狭い場所は、広角レンズでも顔がはっきりわかるけど)

 それから、この記事には書いていないけど、
意外と大事なのが、カメラ本体ではなく、「カメラ録画中」と書かれたステッカーの「貼る場所」「大きさ」「書かれる内容」「色とかデザイン」なのです。これは、防犯カメラ設置業者でさえも、よくわかっていない人が多いです。防犯カメラというのは文字通り「防犯」「抑止」が大事なのですから、映る映像はもちろんこと、こういう「警告する掲示」の内容が非常に大切です。
 管理会社のフロントも、マンション管理士の中にも、そういうことを理解している人が少なくて、「こいつら、現場のことを知らねえなあ」と、いつも私は嘆いています。

 だから、上記HPの記事は、ちょっと安易だなあ、と思います。








<お願い> 当HPは閲覧に際し、購読料をとることはしておりません。有料メルマガなどもありません。でも、もし、ご協力いただけれるのであれば、アマゾンで買い物をする際は、このバナーよりアマゾンサイトに入って購入して下さい。当貧乏管理人の生活費の足しになりますので。なにとぞ、よろしくお願いします