管理人は超つらいよ   
マンション管理最前線

住宅用火災警報器の取り付けが法律で義務化されてました (知りませんでした)




熱感知方式と煙感知方式があります

2007/12追記しました


 この4月、当地域のマンションの管理人連中で話題になっている話です。

 4月の頭から、所轄の消防署が、地域内のマンションすべてをまわっています。なにをしているかというと、「住宅用火災報知器を設置してください」と各マンションに対してお願いをしているのです。

 こういうのって、たしか以前にも「ガス漏れ警報機をつけましょう」というのがあって、ガス会社がまわってましたが、「任意によるもの。法律ではない」ということで、当マンションでは特になにもせずに、居住者個人の判断にまかせて終わりでした。

 ところが、今回は、「平成18年6月施行の消防法で決められたことです」とのこと。法令で定められたこととなると話は別です。


<法律の内容>
○平成18年6月1日施行
○住宅用火災警報器の取り付けが義務化された
○設置猶予期間は、2年〜5年 (各自治体によって異なる)
○設置場所 寝室 階段 台所など (各自治体によって異なる)
○火災警報器とは、その部屋の中でだけ警報が鳴ればよく、他の場所に接続して通報するものでなくていい。

詳しい内容はHPで確認できます。
http://www.kaho.or.jp/text/user/awm02_p0201.html 日本火災報知器工業会


 消防署が配布したチラシを見ると、当マンション(当地域の自治体)では、「平成21年6月1日までに設置しなければいけない」となります。また、「設置場所は、寝室のみ」ということになります。マンションなので室内に階段はありません。また、「台所」に関しては、「設置が望ましい」とされている場所であり、「義務」ではありません。「生活はするが寝る場所ではない部屋」は対象外です。


 東京は一番厳しいそうで、「台所も含め、全居室にも設置義務がある」とのことで、東京のマンションは今、大慌てではないでしょうか? また、猶予期間が2年の地域も、対応を急がされて大変ではないでしょうか?

 当マンションでは、古いためか、建設時には一切、火災警報機は住宅内には設置されておりません。火災報知器(人間がボタンを押して火災を知らせるもの。管理人室の集中監視盤につながり、警備会社にもつながっている)はありますが、これは、各階の廊下など、共用部分にあるだけです。

 近隣のマンションの話を聞くと、比較的新しいマンションでは、「うちは建設時に台所だけ1箇所、熱感知器が設置されている。これは管理室にもつながっている。半年ごとに行なわれる消防設備点検でも、点検箇所になっている。でも、留守宅ばかりで、100%実施できたことは過去に一度もないけどね」といったマンションがありました。でも、今回の設置義務は「寝室」ですから、台所だけに設置されているマンションでは、やはり、新たに対応しなくてはなりません。

 今回の趣旨は、「寝ている時に火災が起きた場合に、逃げ遅れることがある。だから、寝室を重視する」というものらしいです。たしかに、つい先日も、マンションで親子4人が睡眠中に焼死する火事がありました。寝ていると、気がつくのが遅いですから、就寝中が問題なのでしょう。


 さて、今回の消防署の要望に対して、各マンションでは対応がマチマチです。というのは、「火災警報器の設置」は、管理組合に課せられたものではなく、各部屋の所有者個人への義務化だからです。極端な話、「管理組合には関係ないよ。何もする必要はない」ともいえます。「個人で勝手にやってください」ということです。でも、民度の低い&収入が低い、当地域では、「個人で勝手に」というと、誰も設置しないだろうと思われます。設置が法令で義務化されたといっても、おそらく、消防署が全世帯を立ち入り検査することは不可能ですから、「検査なんかできるわけない。だから、買う必要はない」と、みんなが思うでしょう。

 そういうわけもあるのか、消防署としては、「基本的には個人の問題ではあるが、できれば、管理組合単位で、マンション全室に取り付けるようにしてくれないだろうか?」と口頭でお願いしながら、各マンションを回っているようです。組合で動かないと、設置普及率は上がらないでしょうから、消防署側が管理組合に頼むのは当然かもしれません。でも、そういうのって、理事長に頼むべきであって、管理人に頼んでも、こっちは困ります。

 当マンションでも、4月の理事会に報告して、話し合われましたが、「もうすぐ役員の任期が切れる」「猶予期間が多少あるため、今期中に解決すべき問題ではない」ということで、ろくな議論もなく、「次年度の検討事項にしよう」で終わったそうです。ただ、「住民に情報を提供する必要があるから、管理会社のほうで詳しい情報を仕入れておいてくれ」と依頼され、管理人が今、いろいろ調べているところです。
(本当は、全国的な問題なんだから、管理会社のほうで、平成18年6月の時点で、詳しい情報を仕入れて、管理組合に提案すべきだったと思うんですが、こういうことを何もしないんですよね、うちの会社は。でも、よその大手管理会社も何も動いていないそうで、業界全体がいい加減です)

 管理人仲間でも意見はいろいろです。

「ホームセンターに行けば、6〜7000円で買えるし、ねじまわしがあれば、誰でも簡単に取り付けられる。個人に任せればいいんだよ」
「うちのマンションの住民は、こんな法律誰も知らない。組合でやってあげないとだめじゃないか?」
「簡単に設置できるといっても、高齢者や体の不自由な人には、ドライバーひとつ扱えない。けして、誰でも簡単、というものではない。取り付け場所だって適切な場所にしないとだめだし」
「うちのマンションの天井は、発泡スチロールみたいなやつだから、ネジは無理だよ」
「こんな面倒なことを組合でやるとしたら、どうせ、管理会社に押し付けられて管理人が苦労する」
「管理会社としては、いい儲け話かもしれない。なんで、積極的に動かないのか?」
「警報機の種類には2種類ある。設置場所に適したものを選ばないとだめ。正確な知識が必要。住民へくわしく説明してあげなければ」
「やっぱり、管理組合全体で、一気に設置しないと意味がないんじゃないか?」
「猶予期間があるんだから、ギリギリになってから考えればいいんじゃないの?」
「でも、火事はいつ起きるかわからない。警報機設置は早ければ早いほどいい」
・・・・・などなど。


 私の個人的意見としては。

「管理組合に設置義務はないが、設置率をあげるには組合全体で動くべき」
「個人の問題ではあるが、隣室の火事で被害を受ける可能性もあるし、全室でやるべき」
「住民への詳細な情報提供を行なうべき」(だいたい、法律施行後1年近くたってから宣伝に回るなんて遅すぎ、行政の怠慢)
「組合でまとめて大量に共同購入して、取り付け工事もしてあげるべき。個々で対応するよりも簡単だし、単価も安くなる」(費用は個人負担)

というふうに、組合側で積極的に「設置工事の斡旋」をしてあげるべきだと思います。
 消防署がいうのには、「今、この法律の影響で、警報機詐欺(高価な費用で取り付ける。必要ない場所にもつける)が起きているので、業者選定は注意してほしい」とのことですから、やはり、個人で手配するよりは、組合でまとめたほうがいいでしょう。

 次期年度の理事会にはそういうふうに提案しようと思っています。

 ところで、ちょっと頭を悩ませているのが、「必要な数」です。実は、この法律では「寝室に設置」となっていますが、寝室の定義があいまいです。文字通り「寝る場所」なので、布団やベッドがある場所ということになりますが、各家庭によって、「家族が全部バラバラの部屋で寝る=全部の部屋が寝室」「寝るときだけはみんなひとつの部屋に集まって、川の字になって寝る=寝室は1室だけ」と、生活方法が異なります。「うちはお金をかけたくないから、本当はみんなバラバラに寝ているんだけど、寝室は1室だけということにして、1個で済ませよう」という人が絶対に出てきます。まとめて注文するにしても、1家庭ずつ、必要個数を事前調査する必要があるでしょう。さて、どうしたもんでしょうか?


<参考>
「熱感知方式」「煙感知方式」
 
 火災警報器には大きく分けて2種類あります。

「煙感知方式」・・・通称 ケムカン。煙の発生に反応します。このため、ヘビースモーカーの人は誤作動に注意が必要です。湯気も煙と同じのため、ホテルなどでは、「バスルームを使用する際は必ずドアをしめて、湯気が客室に流れ込まないようにしてください」と注意書きがあったりします。

「熱感知方式」・・・・通称 ネツカン。温度に反応するタイプ。台所などに煙感知式を設置すると、魚を焼くたびに誤作動します。また、リビングでホットプレートを使って焼肉パーティとかする場合も、煙式は不適です。そういう場所は、「熱方式」を設置します。

 上記2方式はどちらもほぼ同じ価格です。

 

住宅用火災警報器設置に関して 役人言葉のわかりにくさ  2007/12追記

 私のほうで以前から組合様に提案していたこの件。火事の多い季節になったこともあり、自治体も「市の便り」などで積極的に広報するようになったため、ようやく理事会で話し合われたそうです。(といっても、世間話程度の話で何も決まったことはありません)
 一部の役員が、「市の広報」「消防署のチラシ」「ホームセンターでもらった、警報機メーカーが作った製品案内カタログ」を持参してきて、それを見ながら話したそうですが、その時に、重箱の隅をつっつくのが趣味の役員が、へんなところに気がつきました。それは、設置期限の日付です。

@市の広報では、「平成21年の6月1日が来る前に」
A消防署のチラシでは、「平成21年の6月1日になる前に」
B製品案内カタログでは、「平成21年5月31日までに」

 それぞれ、微妙に表記が異なります。わかりやすいのは、3番目です。1番目と2番目は、正直言って、「結局、何日なんだよ?」とつっこみたくなる書き方です。原本となる、条例の文章がどうなっているかは知りませんが、市民への広報というのは、平易でどんな人にもわかりやすい表現で書くべきものだと思います。私、こういう役人根性、大嫌いです。民間を見習いなさい。


<取り付け大変そう>
 ところで、広報では「ご自分で簡単に設置できます」と書いてあるものの、よく来るリフォーム業者と話をしたときに、「マンションの部屋の天井って、場所によっては弱い化粧合板1枚しかないところもあって、そんなところは木ネジがしっかり止まらない。また逆に、天井裏がすぐコンクリや鉄板になっている箇所もあって、そこはネジが入っていかない。場所によっては意外と難しく、素人に手に負えない場合もあるよ」とのことでした。なるほど。となると、今後、「管理人さん! せっかく取り付けた警報機が落っこちてきたのよ。なんとかして!」や「ネジが入っていかないのよ。なんとかして!」といった依頼が、私のところに来るということですね。忙しくなりそうだな。役人は、自分たちの施策によって、マンション管理人が忙しくなるということなど、まったく予想しないでしょうね。いい身分です。「風が吹くと桶屋が儲かる」よりは、短絡な論理だと思うんですが。



2007/4