管理人は超つらいよ
マンション管理最前線
組合役員の役職構成 |
ちょっと前に、「理事会の役職の中でどれが一番楽ですか?」という質問を受けたことがあります。このことは、私のネット知人でもある「メル住み心地事務所」の深山さんも書いているので、そっちもご参照ください。彼の意見と重なるところもありますが、ご容赦いただいて、今回は役員の構成について記述します。
まず、役員の人数ですが、これはどこのマンションでも大体「全世帯数の1割程度」ということにしているケースが多いです。ただし、理事会というのは理事長一人というわけにはいきませんから、20世帯以下の小さなマンションでは、1割とはいかず、最低でも3人はいます。逆に、巨大団地のような世帯数がメチャクチャ多いところでは、「世帯数500 役員数20」という構成にしているところもあります。ただし、一般的な50世帯〜200世帯くらいのマンションでは1割が妥当だと思います。(1年後との輪番制だとして、10年に1回、役員がまわってくる計算です)
当マンションの場合も、ちょうど1割になります。
さて、当マンションを例として、役職を紹介します。
<理事長>
1名。本来は、組合の仕事の90%以上が集中する最重要&お忙しいポスト。「組合の質は理事長で決まる」といっても過言ではありません。しかし、そんなに大事なポストなのに、情けないことに「ジャンケンで負けた人がなる」というのが当マンションの習慣です。このため、理事長は全然やる気がないです。「判子押すだけの1年間だった」という理事長も過去に大勢います。仕事の大半を「管理人、頼むよ」と、私に丸投げしているため、実際は楽勝の役職。ただ、大事な鍵を預かっているため、管理人不在時に、なんかトラブルや事故があったときは「理事長を呼べ。理事長に集会室をあけてもらわなくては・・・」と忙しいこともあります。
<副理事長>
2名。「理事長の補佐」「理事長不在のときは理事長に代わる」という役職ですが、実際は何にもしません。過去に「理事長が就任直後に転勤で不在になったために、理事長が不在になり、副理事長が代理として1年間やりきった」ことがあったそうですが、これは例外。「副理事長」という名称のため、「なんかちょっと大変そう」というイメージがあるが、本当はすごく楽なため、「役員に無理やりさせられたが、何にも仕事をしたくない」という人にはお勧めの役職。特に、当マンションのように大きなマンションでは、副理事長は複数のため、ほんと楽。役職きめの会議の時に、真っ先に手を上げて、「私は副理事長をやりたいです」と言えば、「だめだよ、そんなこと」と咎める人は絶対にいないので、簡単に副理事長になれます。そして、なにもしないで1年終われます。
(ただし、当マンションでは一時期、「理事長として有能だった人」がいて、その人に対して、「翌年も理事長をやって下さいよ」とお願いしたら固辞されて、「じゃあ、副理事長ということでもう1年。」と就任してもらったことがあります。この時は、事実上は、この副理事長が理事長をやってくれていたようなものです。本来は、「役員は2年任期」「1年理事長をやったら、次の1年は副理事長になって理事長を補佐」とか、逆に、「1年目は副理事長として勉強し、2年目に理事長になって活躍する」というのが理想なんですが)
<会計>
1名。自主管理のマンションでは、理事長以上に大変なのが会計役員ですが、管理会社に任せている普通のマンションでは、実はほとんど仕事はありません。理事会のときの「飲み物代」の会計作業とか、管理人が「ガムテープが欲しいので、お金をください」と言って来たときに、小口現金からお金を出すとか、その程度の仕事です。自分のマンションの「会計職」の仕事が楽だということがわかっていれば、最初に手を上げるのもいいかもしれません。
<書記>
2名。理事会のときの「議事録作成」という重要な仕事。のはずなんですが、実際は、議事録は管理会社のフロントが書いてますので、現実には何もしません。片方が理事会を欠席してもいいように、2名になっています。
<備品管理>
1名。 これも本当は大事な仕事なんですが、実際は何もしてません。今年は防犯カメラが設置されましたので、「取扱説明書」と「保証書」を書庫にしまうという仕事がありました。
<地元自治会担当>
2名。自治会とは「町内会」のことで、当マンションが立地する「町」全体でひとつの自治会組織があります。本当は管理組合と自治会は別々のものなんですが、当マンションの場合、そのへんがごちゃ混ぜで、自動的に自治会の役員にも就任することになります。毎月開催される地元自治会の会議に出席しなければならず、けっこう大変です。また、自治会経由で市から配布される各種書類の配布の仕事もあります。(マンション内で投函するのは管理人に押し付けてますが、自治会会館からマンションまで運ぶ仕事があります) 3年に1回、お祭りの時の幹事にさせられるため、その時の年は忙しいです。当マンションの場合、理事長よりも忙しい仕事かもしれません。
<ペット飼育者会担当>
1名。理事会とペット会のパイプ役、および、ペット会の監視役。これも本当は大事な仕事なんですが実際は何もしません。というか、当マンションではペット会は名ばかりで事実上活動がまったくされていないので、監視のしようがないんです。
<監事>
2名 。仕事は総会直前に渡される会計報告書類に目を通し、判子を押すだけ。超ラクです。それに、厳密には理事会役員ではなく、独立した別の役職のため、「理事ではないから理事会に出なくてもいいじゃないか」が通じてしまう役職です。ある意味、一番楽な仕事かも。ただ、管理会社が会計上の不正を行なっていた場合などはあとで追及されることもあるでしょう。
<ヒラ理事>
その他全員。これも特に何も仕事がないです。ただし、「このマンションには防犯カメラが必要だ。設置するように議論しよう。設置に向けたプロジェクトチームを作ろう。」といったケースなど、新規の仕事が生まれると、その担当は、ヒラ理事にまわってきますから、安閑とはしてられないかもしれません。
この他に、役員とは別に、有資格者が「防火管理者」を務めなくてはなりません。
これが当マンションの現状です。はっきりいって、特に何もなければ、理事長も含めて、全部楽勝、かもしれません。
他のマンションでは、上記の他に、「建物設備担当」「植栽担当」など、さまざまな分野別の担当理事を決めているところもあります。特に、建物に関しては、大規模修繕工事が近づいてくると、「修繕特別委員会」のようなもの(ただし、理事会とは別個の組織として、同じ人が長い年数担当する)が結成されるのが普通です。
それから、たまに、「とても真面目で熱心な人だが人前で話すのが苦手なので理事長にはなりたくない。しかし、組合の仕事をしっかりやりたいので副理事長になった」という人がいます。これはとても素晴らしいことなんですが、気をつけて欲しいのは「副理事長には何の権限もない」ということです。すべての決定権は理事長にあるため、「理事長は全然知らないからトンチンカンなことを言っている。彼の言うことはだめだ。私のほうがよっぽど勉強して知識も深い。私の意見のほうが正しい」と副理事長が主張しても、理事長が首を縦に振らない限り何もできません。自分の意見を通したいのなら、理事長になるしかありません。このサイトの読者の中には、熱心な人が多いと思いますので、その点はご注意ください。
理事長が自分の言うことを聞かないため、矛先を管理人に向けて、「管理人に、自分のいうことを聞かせよう」とする人がいますが、管理人はあくまでも「理事長の指示に従うだけ」ということを留意してください。一役員の独断に基づく指示には従えないのです。