管理人は超つらいよ   
マンション管理最前線

Good Rider 制度って何?








 マンション内を巡回しながら、以前から気になっていたことがありました。
 
 当マンションには20数台のオートバイが駐車していますが、この中に、上記シール「Good Rider」が貼られているものと貼られていないものがあります。「グッドライダー」というのはどういう基準なのかな? と思っていました。ゴールド免許証みたいに、「過去5年間に無事故・無違反」といった基準なのか? とも思いました。

 でも、当マンションに置いてあるバイクをよく観察すると、「2サイクルエンジンで音がうるさく、かつ、排気ガスがもうもうとして、みんなに迷惑をかけているバイク」「改造しまくりで原型をとどめていない大型スクーター。当然、マフラーも爆音タイプに改造」「マンション内で猛スピードで走るため、”危険!”と注意されているバイク」・・・、こういったものにも、このシールが貼られているのです。どう考えても、「グッドライダー」とは思えないのに。
 一方、「スーパーカブでゆっくりトロトロ走る高齢者のバイク」「マンション内は走行せず、バイクから降りて押して歩く、超真面目な人のバイク」に、このシールがありません。どうにもこうにも不思議です。

 そこで、先日、ヤンキーお兄さんに聞いてみました。すると。「あ、このシール?これは、新車で買ったときに、防犯登録を無理矢理勧められて、仕方なく1000円払って登録したら、このシールを貼ってくれたんですよ」とのこと。え? どうやら、グッドかバッドかは関係なく、「防犯登録」さえすれば、このシールは誰にでも貼られるということらしいです。なんか、腑に落ちないのでそのあとネットで調べてみたら、いろいろわかりました。

 この制度は、警察庁所管の社団法人「全国二輪車安全普及協会」という団体が運営している事業です。この防犯登録をすれば、「盗まれた時に発見しやすくなる」らしいです。それだけのことで、別に「盗難保険」というわけでもなく、実効性が疑問視されている制度のようです。バイクにはもともとナンバーがありますし、車台番号も役所に登録されているのですから、防犯登録したからどうだというわけではないんでしょう。第一、登録シールを剥がされたら意味ないし。
 そういうわけで、この登録制度を実施しているバイク販売店の数も半数程度しかなく、要するに、「実施店では半強制的に加入させられる」「非実施店では当然加入させない」となっているようです。非実施店のオーナーの中には、「あんな制度意味がない。天下り警官の私腹を肥やすのにしか使われていない」と断言している人もいました。まあ、だいたい、社団法人というのは、その業界のOBとそれを所轄する官庁のOBとの馴れ合いで作られています。どうやら、ここもその種のものらしいです。

 オートバイの盗難やいたずらは当マンションでも時々あります。今回の防犯カメラ設置には、これの防止の意味もありました。ただし、当マンションは敷地が広く、また、駐輪場にはすべて屋根があるため、死角が多くて、少ないカメラ台数では、どうにも全部の車両を監視することはできず、カメラ設置以降も、被害はゼロになっていません。全国ではオートバイの盗難は年に10数万台あるそうです。でも、そのわりには警察の取り締まりは十分ではないと思います。被害者の話を聞くと、「警察に行っても、あんまり真面目に取り合ってくれない。探す気なんかないんだ」と言ってました。今、盗難バイクは、盗難アジア、もとい、東南アジアに輸出されるルートがあるそうで、組織的に盗まれているそうですが、警察がその組織を本気で捕まえようとはしていないようです。バイクメーカーが「盗まれたほうが販売台数が増えて儲かる」と考えていることが背景にあるようです。なんか変な世の中ですね。

 ただ、最近の「駐車禁止取締強化」によって、市街地のバイク駐輪も厳しく取り締まられるようになり、バイクを手放す人が増え、新規販売台数も減っているようです。このことに関しては、全国二輪車安全普及協会とバイクメーカーが協力して、「市街地にバイク駐輪場を増やすよう」に運動をしているそうです。「バイクが売れないと困るメーカー」と「バイクが売れないと防犯登録するバイクも少なく、利益があがらない協会」の思惑が一致しているからなんでしょう。

 それにしても、「どんなに悪い奴でも、防犯登録をして、警察の天下り団体に寄付する人は”グッドライダー”と認定する。どんなにいい人でも、寄付しない奴はグッドではない」という考え方、ひどいですね。暴力団の「みか締め料」と変わりません。まさに、官尊民卑の思想そのものです。またひとつ、警察が嫌いになりました。


2007/12