管理人は超つらいよ
マンション管理最前線
異常な親子 家庭内 コンプライアンス |
「管理人は基本的に暇ですよ」とおっしゃる現役管理人さんもいますが、現場によって、暇か多忙かは全然違い、うちはほんと毎日忙しいです。特に、築年数からいって、「リフォーム工事花盛り」の時期ですから、なおさらです。 (もっとも、ほんとに激多忙だったら、こんなサイトを運営できませんから、正確には、「超多忙じゃないけど多忙」、というところでしょうか? 多忙なので、サイト内容も、ブログのように、「毎日更新」というわけにはいかず、「早く次のコンテンツを読みたい」とメールをいただく愛読者の声には応えられません。ごめんなさい)
ここのところ、毎晩、夜10時〜朝8時に、共用部に自動車を駐車する人がいて、問題になっています。車種からすると若い人です。ほんとに、毎晩なので、他の住民からの苦情も多く出ています。残念ながら昼間働くだけの日勤の私は一度もその車を見たことが無く、この前、この車の実情調査のために、防犯ビデオの画像を役員数名とチェックしたさいにはじめて見ました。いかにも、ヤンキーという感じの改造車でした。
管理人が注意書きを張ることもできないし、役員さんたちもあまりやる気が無いため、放置されていましたが、住民の目も厳しくなり、「○○号室の息子の車よ」といった目撃証言も複数出てきて、「管理組合でしっかり取り締まりなさいよ!」という要請も多く、理事会も重い腰を上げました。
A役員「警察に、違法駐車ということで取締りを頼めないのかな?」 B役員「マンション内は私有地ですから、警察はノータッチです。レッカー車も呼べません。道交法の対象外です。だから、悪い奴は私有地内に車を置くんです」 C役員「どうしようか? とりあえず、理事長名で”駐車するな”という手紙を本人に出そうか」・・・・ この犯人の一家は、昨年引っ越してきたばかりですし、近所づきあいがまったくなく、役員の中にも、この一家と話をしたことがある人が一人もいません。本当は、その家を直接訪問すればいい話なんですが、「あんな改造車に乗ってる奴でしょ。注意したら、なにされるかわかんないわよ」とおびえて、手紙を書くことくらいしかできません。昔の日本だったら、その地域のご意見番みたいな雷オヤジが「坊主!ダメダロ!」と怒って終わりなんですが、今はそうもいきません。
注意の手紙を書いてはみたものの、無視されて、駐車は続いています。そのことにカチンときた、ちょっと血気盛んな役員さんが、「次回理事会に本人を呼ぼう」と提案し、決定されました。「じゃあ、今、連絡しよう」と、その家に電話をかけたら、本人は不在で、父親が出てきました。父親に対して、「おたくの息子さんが、毎日、マンション内に車をとめて・・・・」と苦情を伝えると、「ちょっと待ってください。それは息子のことで、私は関係ありません・・・・・・」「(なんだ、この父親は) 「まあ、とにかく、次回の理事会に出席するように、息子さんに伝言しておいてください。後日、理事長名で、呼び出しの書類もポストに入れておきます」「はい、伝えるだけ伝えておきます」と電話は終わりました。
この時点で、役員一同「変な一家だなあ」という感触は持っていたのですが。
さて、召喚した理事会では。 その前夜、「念のため」ということで、理事長が「明日出てくださいね」と本人に確認をとったそうなんですが。
やはり、というか、本人、ばっくれました。もともと、こういう奴が素直に理事会に出てくるわけは無いんです。でも、「ちゃんと約束したのに」と、理事長はちょっと頭にきて、すぐさま、その家に電話。本人は不在で、また父親が電話に出ました。理事長もあとに下がるわけにも行かず、「恐れ入りますが、息子さんのことですから、お父さんが代理に出席して下さい。」と要請したんですが。
父「息子は息子、俺は俺。そんなの関係ねえ」
理「関係ないって? 自分の息子でしょ?」
父「もう、20歳過ぎてるから、関係ねえ」
理「別に結婚して独立したわけでもないでしょ。同居してるんですから」
父「同居してたって関係ねえ。」
理「何言ってるんですか、お父さん。あの毎晩とめている車は息子さんのでしょ!」
父「あいつがどんな車に乗ってるかなんて、俺はしらねえ」
理「え?? そんなバカな? 自分の息子の車ですよ。」
父「20歳過ぎてるから関係ねえ」
理「この前、お父さんに電話したあとに、この件について息子さんに事情を聞いたりしなかったんですか?」
父「今は、個人情報保護法があるからね。たとえ、息子だって、個人情報は聞けねえよ」
理「ちょちょちょちょっと。自分の息子に質問できないんですか? 自分の息子でしょ」
父「今は、コンプライアンスとかいろいろあるんだよ。あんたも知ってるだろ」
理「それは知ってますが、そういうのは他人同士の問題であって、親子でそんなこと言わないでしょ!」
父「今は、そうなんだよ」
理事長、あきれて、しばし、静かになる
理「じゃあ、お父さんに聞くのはもうやめます。ところで、息子さんは今日は仕事ですか?いつ帰ってくるんですか?」
父「そんなの知らない」
理「はあ? 今日は仕事で遅いんですか? 日曜もお仕事されてるんですか?」
父「そんなの知らないよ。俺は本人じゃないんだから」
理「会社員なんですか? どんな会社なんですか」
父「何もしらねえ」
理「何も知らないって、ねえ、お父さん。自分の息子が何の仕事をしているのか親が知らないんですか? 勤め先も知らないんですか?」
父「ほんとにしらねえんだ。20歳過ぎてるからなあ」
理「そういう問題じゃないでしょ。じゃあ、もうしょうがないから。お父さん、今から息子さんの携帯にでも電話をして、”夜遅くなってもいいから、理事長に電話をするように”伝えてください。」
父「息子の携帯知らない」
理「え? ちょっとお父さん。息子さんに何かあったときとか、どうするんですか?」
父「死んだら、警察から電話来るだろ」
理「いや、そういうことじゃなくて」
父「生きてれば、なにしたっていいじゃねえか。親は関係ねえよ」
理「ちょっと待ってくださいよ。とにかく、おたくの息子さんが毎晩、駐車禁止の場所に、車を置いて、みなさんが迷惑してるんですよ」
父「その車が息子のものだって証拠があるのかい?」
理「多くの人が現場を見ているんです」
父「俺は、ちゃんとした証拠がないと何も信用しねえ。」
理「でも、防犯ビデオにもちゃんと写ってるし」
父「あそこの防犯ビデオじゃ、顔まではっきり写らないだろ。そんなの証拠にならねえ」
理「顔を見た人もいるんです」
父「人間の証言なんてあてにならねえ。それに、その車がうちの息子の車だっていう証拠はあるのかい? ナンバーと所有者名が記載された車検証のコピーでもあんたが持ってるなら信じるけど。何も証拠無いんだろ」
理「はあ。?????」
・・・・・・
不毛な話が続く。この間、理事長は集会室で、自分の携帯電話をスピーカーフォンに切り替えて会話していたため、電話の内容は他の役員も聞いていました。みんな、驚いて、口をあんぐり。呆然としていたそうです。「なんなんだ、この家は? この子にしてこの親ありだな」 あきれはてていたそうです。
いまだ、車は毎晩とまっています。
同居している息子の職業を親が知らない。これが今の世の中なんでしょうか? 私にはついていけません。