管理人は超つらいよ   
マンション管理最前線

大げさ がいいこともある マンション管理







 駅の近くの中華屋さん。地元では有名なチェーン店です。先般の毒入り餃子事件で、営業不振になったのでしょうか? てこ入れをしました。その内容は、「餃子の具 150%増量! (当社従来比)  値段据え置き!」というもの。駅のホームに広告ポスターを設置しました。文面から察するに、「同じ値段で、中身が大きくなりました。ぜひ、食べに来てね」というところでしょう。

 150%増量ということは、要するに、2.5倍の大きさということです。ポスターの写真からではわかりませんが、「ジャンボ餃子」になったということで、これで値段が同じというのは、この値上げラッシュの時代には、朗報です。ぜひ、食べに行かなくては・・・・・

 と店に行ったのですが。「え? これが150%増量?」という大きさでした。たしかに、従来よりはちょっと大きくなってますが、もともと、他の普通の中華屋さんと比較すると小さかったので、私の感覚では、「普通の大きさになった」程度のものであり、「2.5倍」とはとても思えませんでした。店長にそのことを聞くと、「はい、150%増量です」。「あの店長さん、150%増量ということは、2.5倍ですけど」「え? いや、だから、150%増量です」「あのさ、店長さん、義務教育で算数習ってます? 150%増えるということは、もともとの100%に150%を足して、計250%なんですけど・・・」「(店長) 無言」

 この店長と、算数の話をしても通じないので、とりあえず、不満ながらも食べて、マンションに戻ってから、その店の本部に電話をして、くわしく話をしたら、「すいません。この場合、50%増量が正しい表示です。初歩的な間違いをしてしまい、申し訳ないです。すぐにPOPを訂正します」と謝罪しました。県内に20店舗くらいある、大きな会社なんですが、小学生でもわかる計算ができないんでしょうか? また、このポスターの作成を請け負った印刷会社も、「おかしいなあ」と思わないんでしょうか? それとも、「150%というのはインチキな表示だが、これならきっと客が殺到するだろう」と考えた確信犯なんでしょう?

 話の枕が長くなりましたが、このように、広告において、「虚偽・大げさなもの」は許されません。


 しかし、マンション管理の分野において、「おおげさ」が重要なものもあります。

 たとえば、防災に関するもの。
「ベランダから、タバコのポイ捨てをしないで下さい。地面の枯れ草に燃え移って、火事になるかもしれません」
「古紙回収の当日以外に、古紙を出さないで下さい。放火を誘発するおそれがあります」
「ベランダは緊急時に大事な避難通路になります。障害になる物を置かないで下さい。避難ができなくて、死亡事故につながるかもしれません」
「廊下側の部屋の窓の鉄枠に傘をぶらさげないで下さい。強風で傘が飛ばされ、階下に墜落して、下を歩く人の頭に刺さって殺すかもしれません」などなど。
 その他、防犯に関するものなども同様で、「最悪の事態を想定」したうえで、注意書きを作ります。

 この他にも、マンションの維持管理に関する種種の作業に関しても、大げさなほうがいいものがあります。

「受水タンクの清掃」・・・・
他のマンションの話ですが、「うち(業者さんのこと)は、ベテランですから、断水にはならないで、清掃することができます。ですから、住民宛の広報には、断水とは書かないでも、大丈夫ですよ。赤水も出ませんから・・・」と自慢していた業者。
 しかし、実際の清掃作業中、ミスをしてしまい、予定外の「2時間の断水」を起こしてしまいました。当然、住民からは苦情&問い合わせが管理人さんあてに殺到、てんてこまいです。また、断水が発生したため、水の滞留が起こり、このため、これまた大量の赤水が発生。夜になって帰宅した住民が、初めて水道の蛇口をひねると、びっくり。自動給水でお風呂を入れた人は、満水のブザーで風呂を見に行くと、浴槽が真っ赤というか、真っ茶色でびっくり。おまけに、トイレの給水にも赤水が出るため、トイレタンクの細い給水管のフィルターに赤水の鉄錆成分が付着して、目詰まりを起こし、水がストップして、「トイレの水が出ない!」というSOSが殺到。そういった人たちが、管理会社の夜間救急センターへ電話しまくりで、ちょっとしたパニック状態です。仕事を終えて帰宅していた管理人も呼び出され、担当フロントもマンションへ急行し、事後処理に奔走。管理会社というのは、その業者の言うことなど信用せずに、「なにかあった場合に起こりうる最悪の事態」をある程度予想して、事前告知を行なうべきなんです。
 「断水する可能性がありますから、バケツ等に水を貯めておいてください」「作業後は赤水が発生します。まず最初に台所などで水を流して下さい。最初にトイレを使わないで下さい。・・・・・」といった、細かい心配りを住民宛に示すべきなんです。事前に、最悪の状況を告知されていれば、実際にそういう事態になったところで、住民は文句は言いません。(一部、掲示板を見ない住民が文句を言いますが、これは管理会社の責任ではありません)

「電気関係の工事」・・・・これも、いくら業者が「停電することはありません」と言っても、停電する可能性がゼロではないのであれば、「停電します」と予告すべきです。今は、パソコンやビデオのタイマー予約など、「一時的な停電であっても、大きなダメージを食う」電気製品がたくさんあります。数秒間の停電でも大変なことになるかもしれません。

「エレベーターの点検」・・・以前、当マンションで実際にあった事例ですが、「年次定期点検をします。エレベーター不使用時間は、2時間あれば大丈夫です。その旨、住民にお伝え下さい」とエレベーター会社に言われたので、そういう案内告知文書を作成して配布したのですが、実際に点検作業を始めると、(点検員の資質が低いのか?) とにかく、2時間では終わらずに、結局4時間くらいかかってしまいました。夕方の帰宅ラッシュ時間にかかってしまい、管理員には「もう、予定時間が終わったのに、なんで、エレベーターが使えないのよ! あんた、何やってんの!」という苦情のラッシュ。10階まで、階段を使っておばあさんをおぶったこともあります。いつ終わるのか、はっきりしたことも言えず、ただひたすら謝るのが大変でした。

 
 以上のように、マンション管理に関しては、「おおげさに書いておくほうがいい」というものが、いろいろあります。こういうことも経験で学ぶものです。


2008/4