管理人は超つらいよ   
マンション管理最前線

「生活騒音」という言葉の流行 安易な対処方法の逆効果



2015/5


 最近、あちこちのマンションの掲示板で見かける「生活騒音」という文字。

 たしかに、もともと存在する用語ではありますが、ここのところ、特に増えているような気がします。もしかして、マンション管理士が増やしているのでしょうか? 具体的にはこんな感じで使われます。


居住者各位

生活騒音に対する苦情が寄せられています。
マンションは共同生活ですから、他の居住者に迷惑がかからないよう、生活騒音に関して、十分お気をつけ下さい。
お互いに気持ちよく住めるよう、ご配慮のほど、お願いします。


**マンション管理組合


 こういった掲示物があちこちのマンションに貼られています。実は、うちにもあります。
ただ、こういう「抽象的な表現」だと、何がなんだか、読んだ人はピンと来ないと思います。せめて、「上の階の足音がうるさい」とか「夜中に楽器を演奏している人がいる」とか「テレビを大音量で見ている人がいる」とか、書いてほしいと思います。じゃないと、騒音発生源の主人公は何も気が付かないと思います。

 本来は、「各専有部分から発生する騒音&振動」というのは、管理会社が扱うことではありません。管理組合でやるべきことです。でも、こういう問題って、どうしても「感情的になってしまう」面もあり、管理組合側はやりたがりません。今は、「うるさい!」と言っただけで刺される時代ですから、騒音主に直接注意をしてくれる管理組合役員なんていませんし。
 結局、原因となる部屋に対しては何も伝えず、曖昧模糊としたこんな抽象的な掲示物を作って貼るだけなんです。「いちおう、管理組合も対応しましたよ。無視したわけじゃないんですよ」という「言い訳」のためです。まあ、「管理組合が対応」と言っても、実際は、管理会社に押し付けているわけですが。

 「生活騒音」という言葉は便利で、この用語で、すべてのマンション内の騒音をひとくくりにすることができます。「ピアノがうるさい」と書いてしまうと、そういう意識のある当事者が、「なんで、オレのことを掲示板に張り出して、みんなに知らせるんだ。個人情報だろ! ふざけるな!」とか、「個人名なんか全然書いていない」のに、勝手に怒ってどなりこんでくることもあります。だから、「生活騒音」でオブラートに包むのはいいのかもしれません。

 本当は、役員が数名で(理事長は出てこないほうがいいし、単独は絶対にだめ)、該当者のところに行って直接話すのが一番なんですけどねえ。会話することが大事です。書面とかにするマンションもありますが、こういう「迷惑住民」って、「文書にされることは極端に嫌がる。大げさなことだと思ってしまう」傾向があって、なんというか「活字アレルギー」とでも言いますか、書面になると、ものすごく怒り出す人も多いのです。


 そんなこんなで、マンション管理士なんかも「生活騒音」って言葉でお茶を濁したほうがいいですよ、とアドバイスしているのかもしれません。ただ、これじゃ、騒音源の解消にはならないんですけどね。「とりあえずあしらっておこう」という、お役所仕事的発想です。

 そんなわけで、こういう掲示をするわけですが、具体的な表現ではないゆえに、「これって、もしかして、うちのこと?」と勘違いする人も多く現れるわけでして。まあ、その人が、「夜中のピアノを弾いている」とか「子供が室内でドタバタしている」部屋なら、そういうのに注意をしてくれるのはいいことですけど、管理室にわざわざやってきて、そういうことを言い出す人って、たいてい、そんな騒音は出していない「いい人」でして。ただ、本人が神経質なため、「この前、朝まで生テレビ(※実際は録画なんです、この番組)をずっと見ていたから、それが五月蝿かったのかな?」とか、管理室に相談に来るんです。
 抽象的表現故に、そういう反応も出てしまい、その人の相手もしないといけないわけで。管理人は本当に大変です。(大きなマンションだと、そういう人が1人2人じゃないんですよ。あ〜)