管理人は超つらいよ
マンション管理最前線
長谷工コミュニティ 1500万円着服事件 |
東急コミュニティー、マンション管理費を安全に出し入れできるシステム開発
マンション管理の東急コミュニティーはマンション管理組合が安全に管理費を集金・払い出しできる新システムを開発した。三菱東京UFJ銀行と提携して同 行に管理費の出納管理を委託。専用口座やネットを使い、現金や通帳を介さずオンライン上ですべての資金を出し入れできるようにした。管理組合の手間が省け るほか、着服などの不正を防ぐシステムとして8月から運用を始める。
新システムは、今年5月に国土交通省がマンション管理費の厳格な管理を求めたことに対応し、東急コミュニティーと三菱東京UFJ銀が共同開発した。三菱 東京UFJ銀は住民の銀行口座から管理費を毎月引き落とし、銀行名義のロックアカウント(引き出し制限口座)にいったん入金したうえで、管理組合が開設す る管理費や修繕積立金の口座に振り替える。
管理組合がマンション共用部の光熱費や警備費用などを管理費口座から払い出す場合には、東急コミュニティーが開発した電子承認システムを使う。東急コ ミュニティーが支払いデータを作成、電子メールで管理組合の理事長や会計担当者から払い出しの承認を得る。承認データは三菱東京UFJ銀に送られ、管理費 の口座からロックアカウントを介して支払先に振り込む仕組み。
[7月22日/日経産業新聞]
大手さんは、このように、「システム的」に、お金の安全性を高めようとします。これはこれでいいことですが、結局、要になるのは、要潤、じゃなくて、「人間」なんですよね。
今回明らかになった「長谷工コミュニティの管理人が、管理組合のお金、1500万円を1年間で着服していた事件」、考えさせられます。
http://www.haseko-hcm.co.jp/pdf/20101001_owabi.pdf
長谷工コミュニティ 公式HPでの謝罪文。これ、具体的な内容が全然書いていないため、なんか、「とりあえず謝っておこう。でも、恥ずかしいから詳細は載せない」みたいな真意を感じます。誠意のない会社です。
http://plaza.rakuten.co.jp/idaken2007ms/diary/201006250000/
つい最近もこんな事件がありました。マンション管理士さんのブログから転載させていただきます。
消えた5億円・・管理費の不正引き落とし [ 管理組合 ]先日、群馬のリゾートマンションで5億円の管理組合財産が不正引き落としされるという事件がありました。
管理組合の財産を保管する銀行口座については、通帳は管理会社、印鑑は理事会が金庫に保管していたそうです。
2004年から不正引き落としが始まり、通帳や残高証明を改ざんしていたため、今まで発覚しなかったとのことです。
管理会社社員(フロントマン兼管理員)が事件に関与していたのであれば、使用者責任により雇用主の管理会社は5億円の不正引き下ろしについて損害賠償責任を負うことになります。
会計・収納業務は管理会社にお任せになっている管理組合は多いと思います。この事件と同様なことを繰り返さないためには・・・
1.残高証明書は管理会社あてではなく、管理組合役員(監事)あてに郵送する
2.監査の際、通帳の原本で残高を確認する
3.管理組合役員(監事)が会計業務に熟知していないのであれば、管理組合が外部に監査および監査補助を専門家(会計事務所、マンション管理士等)に委託する
等の方法が考えられます。
5億円事件とは関係ありませんが、大手管理会社でも年に数件、不正会計処理が発覚している現実から、管理会社の『内部監査』は万全ではないことがわかります。
(管理業務の核となるフロントマンの統制が満足にできていない管理会社が多いのですから、フロントマンよりも人員が少ないマンション会計部署では、チェック体制が十分に行われているとは考えられにくい)
管理組合の財産は自分たちで守らなくてはなりません。
通帳・印鑑の分別管理を行えば安心ではなく、『チェック』方法をこの機会に見直しましょう。
さて、話はちょっとそれますが、「週刊ダイヤモンド」という経済雑誌では、毎年1回、「マンション管理会社ランキング」というのを発表しています。業界内では、「どうせ、ちゃんと調べていない」「ランキングをあげて欲しくて、管理会社が編集者にお金を払っている」という「いい加減な調査」というのが常識ですが、まあ、目安にはなります。
<大手管理会社顧客満足度ランキング(2008年)>
- 日立ビルシステム
- 近鉄住宅管理
- 中銀インテグレーション
- 星光ビル管理
- 日鉄コミュニティ
- 長谷工コミュニティ
- 合人社計画研究所
- ジークレフサービス
- 野村リビングサポート
- 興和不動産レジデンスサービス
- コスモスライフ
- 東洋コミュニティサービス
- 三井不動産住宅サービス
- 重商建物
- 穴吹コミュニティ
- 大成サービス
- 穴吹ハウジングサービス
- 総合ハウジングサービス
- ナイスコミュニティー
- レジデンス・ビルディングマネジメント
大手マンション管理会社ランキング(2009)
- 日本総合住生活
- 長谷工コミュニティ
- 東急コミュニティー
- 星光ビル管理
- 三井不動産住宅サービス
- コスモスライフ
- 大京アステージ
- 日本管財
- 日立ビルシステム
- レジデンス・ビルディングマネジメント
- 日本ハウズイング
- オリックス・ファシリティーズ
- 野村リビングサポート
- 合人社計画研究所
- 三菱地所藤和コミュニティ
- 大平ビルサービス
- マリモ
- シークレフサービス
- 日鉄コミュニティ
- 近鉄住宅管理
大手マンション管理会社実力ランキング (2010)
- 東急コミュニティー
- 長谷工コミュニティ
- 鹿島建物総合管理
- イオンディライト
- 三井不動産住宅サービス
- 大京アステージ
- コスモスライフ
- 合人社計画研究所
- 大平ビルサービス
- 星光ビル管理
- 日本管財
- 日立ビルシステム
- 三菱地所藤和コミュニティ
- 野村リビングサポート
- 大成サービス
- 日本ハウズイング
- レジデンス・ビルディングマネジメント
- 東武ビルマネジメント
- 双日総合管理
- 丸紅コミュニティ
どれも、「長谷工」が上位に入っています。しかし、長谷工では、「1500万円着服」をしていました。
しかし、私は驚きません。当HPで何度も書いているように、「不動産会社とマンション管理会社は、どうしようもない悪質会社ばかり。大手であろうとそう」なのです。つまり、「業界全体が悪質」なわけであり、上記ランキングは、悪質な中で、「ある程度はまともなところはここですよ」というランキングなんです。
たとえてみれば、「過去に食中毒を起こしたことのある飲食店100店舗の中で、おいしい店ベスト10」みたいなものとお考え下さい。業界内部の人間が言ってるんだから間違いないです。
管理組合さんにご忠告申し上げますが、「管理会社に任せれば安心」という考えは捨ててください。どんなに上位ランクの管理会社であっても、基本的には「悪質」「ろくな仕事はしない」「監視しないとお金を盗む」と考えて下さい。要するに、「管理組合がきちんと監視しないと、管理会社はいい仕事はしない」ということです。
くだんの長谷工コミュニティにしても、ネット情報では、「親会社の長谷工(ここもいったんは事実上つぶれて、政府に助けてもらった、どうしようもないゾンビ会社です)で、オチこぼれた社員が回される」という、いわゆる「左遷先のはきだめ」の会社です。
また、管理会社というのは「感謝なんかされない。毎日、クレームの対処ばかりで精神的に参ってしまう」「休みが少ない。せっかくの休みでも呼び出しがある」「給料が安い。待遇が悪い」というブラックな職種であり、人も、しょっちゅう入れ替わります。
管理会社の場合、「40代の中年社員だから、ベテランなんだろう」と思っても、実は、他業種からの転職組なので、見た目はベテランでも、実は「ド素人」というのも、珍しくないんです。若手の有能な社員は、いい環境を求めて、他業種へ去ってしまうし。ほんと、この業界は、はきだめです。それに、「担当するマンションのことは、その担当者にまかせっきり」という性格があり、監視の目が行き届きません。ほんとなら、部長や支社長クラスが頻繁に、現場マンションを巡回すべきなのに、管理職もぐうたらばかりですから、社内で休んでるだけです。
さて、本題に戻ります。あるルートから仕入れた情報(おそらく正確)を記します。
今回の事件の舞台は、東京都内のシロガネーゼが住む大きなマンションだそうです。そして、居住用の部屋だけでなく、建物下部には商業施設がたくさんある「複合型マンション」だそうです。その商業施設の来客用に、専用の駐車場があり、その管理も、マンション管理の中に入っているそうです。この駐車場は、月極とかではなく、利用のたびに、お金を徴収するいわゆる「コインパーキング方式」のもので、この料金箱に毎日多額の現金が入ってくるのです。そして、その現金の管理も、管理人に任せていたようです。
普通、大手の管理会社の場合、「管理人には一切現金は触らせません」というスタイルのところが多いのですが、この現場は特殊で、管理人に任せてしまっていたそうです。駐車場収入に関する通帳も管理人が管理していたようです。ただし、このマンションは大規模のため、「管理人も1名だけでなく複数いる」「警備員も別にいる」というので、「お互いに監視しているから不正はできないはず」と思い込んでいたようです。
しかし、実際は、1名の管理人が、多額の現金を自分の懐に入れていました。駐車場の現金を懐に入れるだけでなく、理事長に依頼する「銀行口座払い出し伝票」を使った着服もしていたようで、本人は「魔がさした」と弁解しているそうですが、実際は「計画的な犯罪」です。「払い出し伝票」に理事長の印を押してもらうことは私もしょっちゅうやっています。この際に、「最近の銀行は印影にうるさく、ちょっとかすれているだけでNG」ということがあるため、「銀行ではじかれてしまう」ことがたまにあります。そういう際は、「すいません、印影が薄かったので、もう一度、理事長印を押して下さい」とお願いすることがあります。彼は、これを悪用し、同じ払い出し伝票を再発行し、再発行した分で現金を引き出し、着服していました。
そうやって、1年間でつもり積もったお金が1500万円。
1500万円っていったら、中規模マンションの年間収入をあおぐ金額です。そんな多額(このマンションでは、多額という感覚がなかったのかもしれないが)のお金を管理する通帳を管理人任せにするなんて、管理会社も管理組合もバカです。
「ガムテープを買うから200円下さい」と小口現金の小銭をちょろまかすようなレベルではないんです。
この管理組合では、毎月理事会が開催され、長谷工からも、「月次会計報告書」が提出されていたそうですが、管理会社の経理やフロントが気がつかないだけでなく、組合側の理事長も気がつかなかったようです。1500万円を着服するなんていうのは、管理人個人ではできません。管理会社や組合が複合的に「ボーンヘッド」しない限り、無理なんです。そういう点では、管理会社だけでなく、組合にも責任があると私は思います。管理会社を信用してはいけないんだから。
今回、幸いなことに、年に一度の監査で見つかったからよかったですが、この監査だって、ろくなもんじゃないんだから、スルーされて、着服金がもっと膨れ上がった可能性もあります。
まあ、とにかく、何千万円という現金を、管理人に任せた(=押し付けた)管理会社が悪いです。制度的な欠陥です。ランキング上位の会社でもこのような「欠陥会社」であるということです。
この犯人である管理人は、一部は返却したそうですが、残りは管理会社が負担して、組合に返金したそうです。おまけに、この不祥事のおかげで、「管理委託費が50万円削減」されたそうです。まあ、ちゃんとした仕事ができないんだから、値下げは当然でしょう。品質が悪いんだから。会社が悪いんだから、会社で負担するのは当たり前です。というか、「値下げしますから、刑事告訴はやめて下さい」と、泣きを入れたんじゃないかな?
組合さんは、他人をあてにせずに、「自分の身は自分で守る」ということを肝に銘じて下さい。管理会社を信用してはいけません。そして、「監事」の仕事が実はすごく大事であることを認識して下さい。毎月の会計報告にもきちんと目を通して下さい。「メクラ判」はやめましょう。
さて、ひるがえって、自分の職場を考えると、「着服」どころか、むしろ、逆で、「自腹で事務用品を買っている」という状態ですから、今回の管理人さんがうらやましいくらいです。でも、やっぱり、管理人にお金を任せてはだめだなあ。これだけ高額なんだから、会社で全部やるべきでしょう。
しかし、まあ、周囲の別の管理人や警備員は全然気がつかなかったのだろうか? 実は組織的な犯罪なのかも???