管理人は超つらいよ   
マンション管理最前線

ドアホン(ピンポン)の老朽化に悩む





 これから管理人になる人に言いたいのですが、「ほんと、古いマンションは大変だよ」。あちこち、不具合が発生して、その対応で獅子てんやわんやだから。

 今、巷では「アップル社」の「アイフォーン」がブームになっていますが、われわれマンション管理業界の人間にとっての「アイホン」は、ドアフォン(いわゆる「ピンポン」と鳴らす、玄関ドアの横についているインターホンのこと)のほうが有名です。

 さて、このドアホンなんですが、メーカー側が言っている「寿命」は15年だそうです。というわけで、当マンションのような古いマンション(オートロックではない)では、やはり、故障があいつぎ、だいたい、半数の世帯で、すでに交換をしています。過去に2度ほど、「管理組合で工事を斡旋しますから申し込んで下さい」ということもやっています。交換工事のたびにいろいろな機種を取り付けるので、各部屋バラバラで外見はみっともないです。

 ドアホンで困るのは、「現在、ドアホンを扱っているメーカーが「アイホン」と「松下」の事実上2社しかない、ということです。当マンションが建設された頃は、別の会社でも作っていたんですが、今は製造中止になっています。当マンションでも、故障が発生すると、「新品交換はもったいない。修理で直してよ」という要望が来るのですが、なにせ、作ったメーカーが今は製造中止なので、修理もできません。それで、必然的に「新品交換しかない」ということになります。

 となると、映像なしの最低のタイプでも2万円はかかるわけでして。

 「そんなお金ないから、そのままでいいわ」という人がけっこういて、困ってるんです。また、ドアホンの故障というのは、居住者本人がなかなか気が付かない、という面があります。特に単身者の場合、自分で自分の部屋のドアホンを押すことはまずありません。来客だけです。ですから、来客が「このドアホン、故障してますよ!」と教えてくれない限り、故障に気が付かないんです。

 そんなわけで、おそらく推測するに、今、当マンションでは「10世帯」くらいの部屋で、ドアホンが故障したままになっていると思われます。

 故障している部屋では、「故障してますから鳴りません。ドアを叩いてください」と貼り紙をしている人もいるんですが、「どうせ、うちの部屋に来るのなんて、怪しいセールスとかそんなのばかりだから、鳴らないほうが好都合だ」ということで、私が「故障してますよ」と注意しても、「わざとそのままにしているのよ」と返答し、何も書かない人も多いです。

 でも、かわいそうなのは宅配便のお兄さんとかで、「この部屋、電気メーターも回ってるし、部屋の中にいるはずなのに、何度、ピンポンしても、返事がないんですよ。管理人さん、かわりに荷物を預かってくれませんか?」となり、お鉢がこっちに回ってくるのです。やっぱり、ちゃんと直して欲しいなあ、と思います。

 昨日、相談に見えた住民は、賃貸入居の人なんですが、「ドアホンが故障しているので、大家さんに修理を頼んでいるんだが、3ケ月もたっても直してくれない。管理人さん、なんとかして」という話でした。こういういい加減な大家もいますから困りますね。でも、当マンションでは、ドアホンは「個人の所有物」という考えで、管理組合は関係ないので、何もできません。すいません。

 


 ところで、新しいマンションでは、今では当然のように「オートロック方式」になっていますが、これも、出現から20年を過ぎ、そろそろ故障が多発する時期になってきており、メーカーでは「オートロックのインターホンシステムの全面リニューアル」なんかをやり始めています。

 まあ、寿命は15年ですから、当然、そういうマンションがこれからどんどん増えてくると思います。

 オートロックの場合、面倒なのは、「故障した」と一言でいっても、「どこが故障したのか? はっきりわかりにくい」ということです。問題は修理費用の支払いのことで、各部屋の中の部品の故障なら、住民負担になりますが、システムとしての故障だと、当然管理組合が修理しないといけません。
 近くのマンションでも、「オートロックのインターホンはマンション全体の機械なんだから、管理組合が修理代を出せ。個人負担なんて納得できない」ともめているケースもあるようです。

 新しくて便利な機械も、年数がたってくるといろいろ問題が起きて大変ですね。とにかく、建築後20年以上のマンションで管理人をやるのはなにかと大変だと思いますよ。

 


2011/6