管理人は超つらいよ   
マンション管理最前線

おい、管理人! 謝らせろ!






漏水事故における「加害者」の「意識」の差。あれこれ。 久しぶりにまた書きます。


このマンションは古いマンションです。
年に数回
「漏水事故」が起き、そのたびに、その対応に苦労しています。

さっき、ある住民が、私が昼休みなのに、管理室にどなりこんできて、「上の鈴木(仮名)って奴に謝らせろ!」と言ってきました。すごい剣幕でした。

漏水事故が起きると、最終的には「マンション総合保険」の「個人賠償特約」で処理して費用を捻出するんですが、この際、保険の処理上、「漏水を起こした、上の階」を「加害者」とし、「漏水被害を受けた、下の階」は「被害者」となります。便宜上、「加害者」ということになるんですが、「なんで、俺が加害者なんだ!」と怒る人もいて、我々管理人は、直接相手と話す際は、「加害者」という用語はなるべく使わないようにしています。ただ、とにかく、「上の階」は書類上「加害者」になります。

漏水の原因はいろいろあります。そして、水漏れを発生させた階の住民の「加害者意識」もいろいろです。

■床下の給水管の老朽化による漏れ・・・
居住者の責任ではないため、加害者意識はゼロ。どっちかというと「自分は被害者」だと思っている。

■床下の給水管に、建築時の施工不良があり、そのために漏水・・・
同上。当マンションではこれがとても多くて困っている。分譲会社も建築会社もなにもしてくれない。

■全自動洗濯機のホースが外れてしまって、留守中に大量漏水・・・
これは完全に、その人の過失であり、普通の人なら、「すいません」と平謝りして、被害者宅に菓子折りでも持っていって謝罪するものだが、このマンションだと、「ホースが外れるような洗濯機が悪い。私の責任じゃない」という人もいて、謝らないケースも多い。

■洗面所のシンクに水をためているときに、「あふれ防止の穴」が汚れで詰まっていて、そこから水が流れず、あふれてしまい、階下に漏水・・・・
完全に、その住民の過失だと思いますが、「洗面所の構造が悪い」とか弁解します。

■居室の床を、絨毯からフローリングに替える際に、リフォーム業者が誤って、くぎを床下の給水管に打ってしまい、穴があき、そこから漏水・・・・
リフォーム業者の責任だから、その住民に過失はなく、加害者意識はゼロ。

■ユニットバスを新しいものに交換した際に、水道管のつなぎ方が悪く、漏水・・・
リフォーム業者の責任だから、その住民に過失はなく、加害者意識はゼロ。

■ペットが自分の玄関でそそうをしてしまったのを、水を流して掃除をして、(玄関床は防水ではない)、水が床下に浸透して漏水・・・
「なんで、玄関が防水じゃないんだ!」とか怒って、自分の責任を感じていない。

■部屋の中で猫を飼っていて、かつ、熱帯魚も飼っていて、留守中に猫が水槽を倒してしまい、階下に漏水・・・・
飼い主の責任だと思うが、本人は、「猫の責任であり、私の責任ではない」と言い、加害者意識がない。

■エアコン設置用の外壁のスリーブ穴から雨水が浸入し、たまって、階下に漏水・・・・
エアコン設置工事の際に、粘土のようなもので、穴はしっかりと、ふさぐのですが、その粘土が経年劣化で縮んだりして隙間ができて、そこか浸水することがあります。これも住民の管理責任だと言えますが、加害者意識のない人が多いです。

■浴室が古くなり、壁に亀裂が入っているのに、そのまま放置。そこから水が漏れ、階下に漏水・・・
亀裂の存在をわかっているのに、放置してました。完全に、その人の責任なんですが、「30年くらいで割れるプラスティックが悪い。松下幸之助の責任だ」とか言ってます。

■まったく原因がわからず、なぜか、漏水・・・・
いくらあちこち床下をほじくっても原因がわからないことがまれにあります。管理会社的には最悪の漏水事故です。原因不明なので、漏水部屋の人には当然加害者意識はゼロ。

■地震・・・
幸い、当マンションでは「地震を原因とする漏水」はありませんでしたが、他ではあると思います。これも、天災が原因ですから、当事者に加害者意識はないと思います。

このように、いろいろな原因があり、大きく分けて、「当事者に過失のあるもの」と「ないもの」に分類できると思います。「ないもの」に関しては、仕方ない面もあり、「上の階の住民(加害者)が、下の階の住民(被害者)に対して謝罪する」ということは、不要だと思います。加害者側も謝る気は全然ないです。ただ、管理人としては、
「謝罪じゃなくても、挨拶くらいは行って欲しいなあ」と思います。なにかしらの会話があれば、「お互い被害者ね。災難だったわね」と、慰めあうこともできます。でも、何の挨拶もないと、下の階の人は、上の階の人に過失がないことがわかっていても、「実際問題、被害を与えてるんだから、なんらかの挨拶くらいあるべきだろ」と、プンプン怒る人もいます。そして、そういう不満は、橋下市長みたいに、相手に直接言うことはできないから、はけ口は「管理人」です。なぜか、私がいつも怒られます。

そして、このマンションの場合、「明らかに、階上の部屋の住民の過失なのに、それでも、階下の住民に謝罪に行かない」というケースが多いのです。まさしく、スラム化マンションならではの悩みです。、この場合、被害者側は、「当然、上の部屋の人が謝罪に来るはず」と思ってますから、来ないと怒ります。そして、これまた、管理人に対して怒ってきます。

「おい、管理人! おまえが上の階の奴に言って来い! 謝りに行け! って」

と怒られるのです。
でもね、確かに、上の階の人に過失があるにしても、「謝罪しろ」なんてことは、管理人の口からは言えませんよ。立場ってものがありますから。そういうのは、本来、理事長に言ってください。管理人の責任じゃないです。(理事長にも責任はないけど)

まあ、それでも、こういう人は、たまったストレスを発散するために、管理人を利用していますので、こっちが「何もできなきてすいません。お役に立てなくてごめんなさい」と謝ると、ちょっとおさまります。
管理人って、サンドバッグなんだなあ。トホホ。


2012/1