管理人は超つらいよ   
マンション管理最前線

消火器には「家庭用」と「業務用」があります



「安物買いの銭失い」 ならないようにご注意




ご近所のマンションでちょっと前にあったお話。そこは、経費節約にがんばっているマンションです。

マンション内の共用部に置いてある消火器が、耐用年数(家庭用は3〜5年 業務用は10年)を過ぎそうなので、「全部交換する」ということになりました。早速、管理会社に見積もりを頼みました。「1本=8000円」でした。(古いものの回収処理サービスつき)

この価格が高いのか安いのか私は知りませんが、どんなものでも、管理会社を経由して発注すれば、1割の手数料が加算されますから、「安い」とはいえないかもしれません。(※1割という率はかなり良心的なほう。儲けたい管理会社はもっとふっかける場合もあります)

さて、この件が理事会で検討された時、理事会の席上の隅っこで、新聞を読みながら議事進行を聞いていた役員が、「この新聞の折込チラシに入っている近所のホームセンターの広告だと、
1本2900円になってますよ」と発言。

「へえ、それ、安いねえ。大きさとか同じなの?」「どれどれ」「ちょっと見せて」・・・・
チラシをよく見ると、なんと、そのマンションの共用部に置いてある消火器と、この広告の消火器の型番が同一だったのです。
このため、理事会役員全員一致で、「同じものなら、ホームセンターで買おうよ。2倍以上値段が違うんだから。40本買うとして、20万円の節約になるよ。」という話になりました。
そして、理事長が「じゃあ、私と副理事長さんの2人で、来週にでも車で行って買ってきますよ」と言い出しました。同席していたフロント君も、口出しできず、「じゃあ、消火器の更新の件は皆さんにお任せします」ってことで閉会。

翌週、理事長と副理事長が買ってきたそうです。
ただ、買うのはやってくれても、全部、組合役員さんでやってくれるわけではなく、「購入日付と番号を記したテプラシールの作成」は管理人に押し付けられ、消火器の交換&設置の作業も手伝わされたそうです。

交換すると、当然、古い消火器は処分することになるのですが、ここで問題発生。理事長は、「古い消火器の処理」のことを何も考えていなかったのです。「消火器だから、金属ゴミの日に出せばいいんだよねえ?」とか、管理人に聞いています。管理人も、こんなのは初めてなので、清掃局に問い合わせたら、「自治体では、消火器はゴミ回収していない」「販売店とか業界団体を通じて有料で回収している」ということがわかりました。

調べてみたら、
「回収業者に現場まで取りに来てもらう場合は、1本1500円」
「回収業者の会社に持ちこめば、1本800円」だそうです。(全国的に同じかどうかは知りません)

「あちゃ、処分にもお金がかかるんだ。失敗したなあ」と理事長が嘆いています。

一般の人って、「ゴミの処理は無料。粗大ゴミはちょっとのお金を払えばOK」みたいに考えている人が多いですが、事業で発生する業務用ゴミは、意外と処理費にお金がかかるんです。
植木の剪定作業なんかも、切った樹木の、運搬費と処理費がけっこう高いです。切るだけの費用じゃないんです。そういうことを知らずに、「管理会社さんに頼むとなんでも高いなあ」とか「昼過ぎで、もう帰っちゃうのか?」と文句を言う人がいます。(廃棄物処理だって、運搬しないといけないし、時間がかかるんです。)

さて、そういうわけで、理事長と管理人がいっしょに、古い消火器を回収業者のところまで持って行きました。消火器は重いから、管理人さんは「腰が痛くなったよ」と泣いてました。労働の話だけではなく、お金も、回収費として全部で32000円かかりました。

管理会社に発注すれば、回収作業も設置作業も、シール貼りも、処分費も含まれていたのにねえ。

さて、これで、いちおう、なんとか落ち着いたのですが、ところが、それだけでは収まらず。

半年に1回行なわれる消防設備点検で、この消火器がひっかかりました。

理由は、

「これは家庭用消火器です。家庭用は、マンションの共用廊下とかには置けません。消防署では、これを消火器とは認めていません。業務用消火器を使ってもらわないとだめなんです」というもの。(※「家庭用」ではなく「住宅用」と表記する場合もある)

理事長は、「え? でも、これ(新品のほう)って、前の消火器とまったく同じ型番でしたよ。同じものなんじゃないの?」と質問。
「型番は同一でも、実は、家庭用と業務用の2種類があるんですよ」
「え? なにそれ??? 同じじゃないの?」
「違うんです」
「どう、違うの?」
「家庭用のほうが能力が落ちます。また、家庭用は詰め替えができない構造になっていますから、設置しておける年数は5年です。業務用は、能力が高く、詰め替えが可能で、詰め替えることによって、この消火器本体は10年使えます」
「はあ、なるほど・・・」
「それで、この、私たちがホームセンターで買ってきた安い”家庭用消火器”はどうしたらいいのでしょうか?」
「本来の正しい、業務用のものに交換してください」
「え? じゃあ、これは使っちゃいけないってこと? これはどうしたらいいの?」
「家庭内では使えますから、住民の希望者に買って貰えばいいんじゃないですか?」
「はあ、なるほど・・・」

このあと、「なんで、こういう事情をフロントマンは知らなかったんだ。教えるべきだろ!」とかひと悶着あったそうですが、新しく正式に買い換える業務用消火器の価格を値引くことで、なんとか収拾したそうです。

完全に、
「安物買いの銭失い」でした。

(しかしまあ、私が考えるに、家庭用と業務用は全然違う“物”なのに、型番が同じって、これはメーカー側の問題だと思うなあ。誰だって勘違いしちゃうよ。フロントくんもそこまで詳しい知識はないだろうに)

さて、そんなことを聞いて、私のほうで調べてみたら。


多発している古い消火器の破裂事故を踏まえ、消火器の規格・点検基準が変わりました

こんな説明がありました。なるほど、今はいろいろ厳しくなってるんだなあ。それに、家庭用と業務用はやっぱり違うんだ。  ってことがわかった次第。

消火器の世界も奥が深いなあ。管理人もバカじゃできないなあ。日々最新情報を仕入れないと。

(マンション管理員検定の試験で使えるかもよ。日下部さん)

では、全国の管理組合役員の皆さん、同じ失敗をしないよう、ご注意下さい。





2013/2



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