管理人は超つらいよ   
マンション管理最前線

バカな理事会とバカな業者が作った防風壁が役に立たない





当マンションは、名目上はひとつのマンションなのですが、実際は、「東棟」と「西棟」に、ほぼ完全に分かれている、「2棟からなる、1つのマンション」です。ツインタワービルみたいなのを想像して下さい。

玄関ホールや、管理室は、2つの棟の間にあります。こういう、「ビルとビルの間」というのは、いわゆる「ビル風」が吹きます。このマンションも、設計した奴がバカだったんでしょう。すごいビル風が吹きます。
ここ数年、竜巻だとか突風だとか、日本全体で、「すごい風」が吹くようになってきました。私も、その風のど真ん中の部分で勤務していますから、よくわかります。

さて、この「東棟と西棟の間部分」には、
駐輪場があります。

ここにおいている自転車が、強風が吹くと、すぐに、バタバタと倒れます。強風の度合いがすごくなっている最近は、原付バイクすら倒れることもあります。(後部に大きなボックスを取り付けているために、そこに風が強くあたって倒れてしまった感じです)

この駐輪場は、屋外にあり、屋根はついていますが、壁はない、いわゆる、「吹きさらし」の駐輪場なので、風をもろに受けてしまいます。そのため、駐輪場の利用者から、「強風が吹くたびに自転車が倒れるのは困る。壁を作って、風をさえぎって欲しい」という希望が多く出て、管理組合として
「防風壁」を作ることになりました。

当時の理事長が、「俺の知り合いに、そういう工事ができる業者がいるから紹介する」ということで、管理会社は関係なく、その「知り合い」の業者さんに頼むことになりました。そして、その業者が、「こういうのを作りましょう」という提案をしてきたのを見せてもらったのですが・・・・

実は、私の実家は農家なので、畑の防風のことも、ある程度知識があります。

その業者が提案した防風壁の案は、駐輪場の周囲を完全に壁で囲ってしまうものでした。そして、その壁の材質は、本当の1枚の壁でした。当初の案は、その壁が日光を遮断して、駐車場内が暗くなるので、「透過性のものがいい」ってことで、半透明のアクリル製のものに変更になりました。

さて、昔、「
防風林」というものがありました。


こういうものです。ただの樹木を植えただけで、隙間も多く、「壁」にはなりませんが、これが意外と防風効果があるのです。また、木は、強風を受けると、しなって、その力をムーディ勝山のように受け流します。ですから、植物はよほどのことがないと、折れません。

実は、素人が「防風」ということを考えると、「壁で完全に風を遮断するもの」と考えがちですが、実際の土木の現場では、現在は、「防風」というよりも
「減風」という考え方で、「完全に遮断する必要はない。弱めればいい。完全に遮断しようとすると、壁が強風で破壊される」という認識になっています。



このように、金属で「網」を作って、防風壁を作ります。
しかし、今回の業者が持ってきた案は、完全に壁を作ってしまうものでした。たしかにそのほうが、駐輪場内には一切風が入ってこないでいいのかもしれず、また、1枚のアクリル板を設置するほうがコストも安いため、素人の役員連中は、「それでいい。それで行こう」って賛成してしまいました。
私は、この壁設置の結果がどうなるか予想できていたため、「あの案はまずいですよ。風を甘く見ないほうがいいですよ」と当時の理事長に忠告しましたが、「素人が口を挟むな。工事の専門家に任せておけばいい」と、ピシャリ。担当フロントにも、「あれはだめだ」と進言しましたが、「理事長が強行に、あれでいい、って言ってるのでは管理会社側は何もできない。決定するのは理事会なんだから」と、これも、だめでした。

結局、完全な壁で駐輪場を囲ってしまう工事が行なわれ、完成しました。

でも、その年の秋の台風来襲で、その壁は見事に破壊されました。もともと、安物の部材でしたし、アクリル板を支える支柱も細く、ひ弱なものでした。そんなもので、完全に風を遮断しようとしたら、どれだけの強い力がかかるのか、素人にもわかるような答えなのに、ここの理事会役員は誰もわからず・・・・・  
アホばっかり。業者にしたって、「防風壁」の専門知識なんかまったくない、ど素人の、ただの工務店だったのです。

結局、今は、壁部分は取り外され、かといって、ちゃんとしたものを新たに作り直すお金もないので、農業用の「防風ネット」を急場しのぎで張って、そのままの状態になっています。この「防風ネット」が意外と、減風効果が高くて、そんなに高価なものでもなく、「最初からこれでよかったのに。視界を遮断することもなくていいじゃない」と好評です。



当時の理事長は、「俺は、あの工法は危険だって言ったんだけど、管理会社の人間が、大丈夫だっていうから承認したんだ」とか、うその言い訳をして、管理会社が悪者になっています。なんか、頭に来るなあ。

そういうわけで、「防風」については、防風ネットだけでも、そこそこの効果はあるってことを知っていると、なにかと役に立つかもしれません。ただ、耐久性に欠けるので、数年で、破れたり、ほころんだりするということをお忘れなく。

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それから、これは別のマンションの話ですが、やはり、ビル風で駐輪場の自転車が倒れるので、防風柵を作ったのですが、そのマンションの隣に、別の大きなマンションが建設されたら、ビル風の向きが変わってしまい、せっかく、作った防風柵の意味がなくなってしまった、という例があります。風って、難しいものですねえ。






2013/3