管理人はつらいよ
マンション管理最前線
役員報酬について考える 必要です 2 ボランティア活動のことも |
役員報酬。以前も書いていますが、再度。
まず、前提条件として、国が推奨している「標準管理規約」(法的拘束力はないが、事実上、多くのマンションの管理規約の雛形あきこになっている)の中には、「役員報酬を制定してもいい」という意味の条文があります。ですから、標準管理規約を採用しているマンションでは、「規約変更」をしないでも、役員報酬を導入することができますから、総会において、「特別決議」ではなく「普通決議」で「役員報酬導入」を採用することが可能です。そういうわけで、「手続き上」は、容易に、役員報酬制度を導入することができます。
とはいえ、現実的には、反対する人も多いです。今、やりとりしているツイッター仲間の中にも、「導入すべき」派と「不要だ。無報酬でも、やる人はやる」派が議論しています。
さて、この問題を議論する前に、似たようなケースである、私の「ボランティア体験」についてお話したいと思います。
昔、阪神大震災のあと、日本で、「ボランティアブーム」というのが起きました。私は当時、普通の会社員でしたが、「日曜日くらい、何か、ボランティアをやろう」と一念発起し、市役所を尋ね、福祉ボランティアのグループに入れてもらい、老人ホームでお手伝いする仕事を始めました。
そういうわけで、「福祉ボランティア」の団体に所属したことがあるのですが、ここでも、マンションの役員報酬の問題みたいなことがよく議論されていました。この団体の創設者は、「ボランティア活動は、持ち出しになってはいけない。必要経費はちゃんと支払うべき」という考え方で、活動先の老人ホームから、いくばくかのお金をもらっていました。これで、ボランティア会員の「交通費」を払ったり、「エプロン」とか「ゴム手袋」を購入して支給していました。ようするに、「ボランティア活動の労力自体は無償で行なうが、必要となる経費は、団体側がちゃんと払う」「持ち出しが発生するようなのはいけない。そういうことにすると、活動は長続きしない」という考え方でした。
私は、この考え方に賛成で、「無償で活動はするけど、老人ホームまでの往復のバス代はいただきたい」と思ってましたので、このグループは、ちょうどいいと感じました。
しかし、私のあとから、入会した人で、「大手企業の定年退職者男性」がいたのですが、この人が、創設者の考えに反対する人でした。「ボランティアというのは、一切のお金をもらってはいけない」という考え(この人、英語のもともとの意味を知らんのです)で、
「交通費も、電話代も、全部自腹を切って行なうのが、ボランティアなんだ!」
と持論を唱え、創設者に反抗しました。この人、大手企業で部長かなんかをしていた人で、どうも、えらそうで、自分の考えに従わない人をバカにし、自分はあとから加入したくせに、創設者の元職が「小さな会社」だったことをバカにして、創設者をないがしろにする傾向がありました。創設者は、「ボランティア=無償ではない。そんな意味はない。ボランティアの語源は志願兵であり、これは無償を意味するものではない。自発的に行動することがボランティアの意義であり、経費まで自分が負担することを強要すべきではない」と反論しました。他のメンバーの中にも、「あなたは一流企業のOBで、厚生年金もたっぷりもらって、生活の余裕があるのかもしれないが、メンバーの中にはそうでもない人がいっぱいいる、自分の意見を他人に強要するのはやめて欲しい」と主張する人もいました。とにかく、喧々諤々でした。
私は、「ボランティアはみんなで仲良く楽しくやるもの」だと思っていたのに、こんなことでしょっちゅう口論をしているこの団体が嫌になりました。
さて、ある日、その「無償論者」の人といっしょに、老人ホームでボランティア活動をしたのですが、私が、よく面倒をみていた老人の家族から、「なんか、いつも、父がお世話になりまして、本当にすいません。これは、ほんの気持ちです」と、「お礼」の「お金」が渡されました。当然、私は、「いえ、こんなことされては困ります」と固辞したのですが、「いえいえ、いつも、本当によくしてもらっていますので。気にせずに受け取ってください。帰りに何かおいしいものでも食べてもらって」ということで、千円をいただきました。自分としては、ボランティア活動で、こういう寸志をいただくのは、ほんと、困るんですが、この入所者さんには、けっこう手を焼いて、多くの労力を割いていたので、「まあ、いいか」ともらってしまいました。
そして、活動を終えて、ボランティア団体の事務所に戻って、日報を書いていた際、同行していた「無償論者」が、急に、
「二人で、活動にいったのに、お前は、あのお金を独り占めするのか? 本来なら、半分を私に渡すべきだろう!」
と、他のメンバーもいる中で、言い出しました。私は最初、「寸志をもらったことを非難するのかな?」と思ったのですが、なんと、「自分に半分寄越せ」と言うので、本当に驚きました。だって、「交通費を含め、一切、お金はもらわないのがボランティアだ」と力説する人が、「分け前を寄越せ」って言い出したんですから。
私は、この一件で、ほとほと、嫌になり、この団体をやめ、ボランティアから足を洗いました。このように、「お金」に関しては、嫌な思い出があるんです。あとから聞いた話では、この「無償論者」と「創設者」との、お金論争に、皆さん、嫌気がさし、その後、多くの人がこの団体から脱退したそうです。思うに、この「無償論者」が現れなければ、この団体はうまく運営できていたと思います。まあ、現れてもいいんですが、この人は、「自分はもらわない」と自分だけのルールにしておけばよく、会の運営方針とか、他のメンバーに口をはさむべきではなかったと思います。こういう団体って、「アリの一穴」じゃないですが、悪質な人が一人現れただけで、ガタガタになってしまうことがよくあります。
さて、上記の「例」は、ある程度、「管理組合の役員報酬」に関しても、応用できると思います。私の意見は以下のとおりです。
「報酬は出すべき」
「時給換算で、最低賃金水準以上のものは無理かもしれないが、最低限の必要経費はもちろん、一生懸命はたらいたら、御飯の一杯くらい食べられる金額は出してもいい」
「まったく仕事をしない役員には出さなくてもいい。わかりやすい一例としては、”理事会に出席したら支払う”という形でもいい」
「報酬が不要な人は、自分の判断で返上すればいい。ただし、他の役員が報酬を受け取ることに対してあれこれいう権利はない」
現実問題として、「管理組合役員」は、みな、好きでやるものではなく、ほとんど人が「義務だと思って、いやいややっている」ものです。「一銭の金にもならないのに、役員なんかできるか?」という意見の人がいるわけだし、いろんな理由で「役員にならなくていい人」や「役員就任を拒絶する人」がいる状況で、平等や不公平のことを考慮すると、無報酬での仕事を強いるのはどうかな? と私は思います。
「無報酬でも動く人はいる」という意見はわかりますが、「報酬が出れば、動く人は増える」と思います。とにかく、制度としては報酬は出すべきで、それを「受け取る」か「返却する」かは、個人の自由です。つまり、「選択式」です。「受け取れ」と強制することはしません。
他のマンションで聞いたことがあるのですが、「俺は、役員報酬は全額返上するが、そのことを、俺の個人名を出して、総会の議案書の中に書け」と言った役員がいたそうです。この人って、お金は不要ですが、「自分は報酬を返上した、えらい人間なんだ」という名誉は欲しいようです。こういうのも、どうかな? って思います。本当だったら、他の役員の手前もあるから、みんなに内緒で返上し、最後の決算の際に、「実はAさんは役員報酬を全額返上しています。ですから、このような決算金額になりました」って、理事長と監事にだけこっそり発表するのが、「粋」だと思うんですがねえ。
せめて、役員報酬導入が反対が多いとしたら、理事会の席上で、「軽食を出す」くらいのことをしてもいいじゃないか、と思います。飲み物とサンドイッチくらい出してもいいんじゃないでしょうか? それなら、反対意見もあまり出ないと思います。
(でも、その買出しや手配を、管理会社に押し付けるのはやめてください)
2013/6
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