管理人は超つらいよ
マンション管理最前線
行き過ぎた個人情報保護法への対応が、業務品質低下につながる |
個人情報保護法が施行され、それに伴う弊害がいろいろ起きています。このHPでも、過去に何度か書いています。さて、今回はその続きです。
個人情報保護に過剰に反応している管理会社では、管理室の中が、以前とまったく変わっています。
<昔>
机の上には、「住民一覧表」がプラスティックケースに入って、下敷きのように、置いてある。
管理室の壁面には、「駐車場利用者一覧表」「駐車場利用待ちリスト」「駐輪場利用者リスト」「高齢者住民一覧」「高齢者住民緊急時連絡先一覧表」「当年度理事会役員一覧」「ペット飼育者会名簿」「地元自治会役員リスト」・・・・・といった、各種リストがところ狭しと貼られている。
<現在>
リストと言えるのは電気会社とかガス会社の電話番号を書いた、主に設備面での「緊急時連絡先リスト」とか、それくらいしかない。住民の個人名が書かれた書類は一切、目につく場所にはない。
というわけで、昔の管理室の中を知っている人(10年前に理事長をやった人とか)が、今の「管理室」の中に入ると、「え? 壁には何も貼ってないの?」と驚くと思います。
そうなんです。個人情報保護の関係で、会社側が、「そういう書類を目に付く場所に置くな」と指示しているのです。
では、どこにあるかといえば、これは会社によっていろいろですが、「一冊のファイルにまとめて、管理室の机の引き出しに鍵をかけてしまっている」とか、「鍵のかかる書庫に閉まっている」とか、とにかく、ぶらっと管理室に入った人の目に届く場所にはないんです。
こういうのって、「素晴らしい。ちゃんと管理している」と思うかもしれませんが、実務上の話をすると、あんまりよくないと思います。特に、管理人って、高齢の「頭が少しボケた」人がやってますから、すぐ、目につく場所にないと意味がないんです。
うちではないですが、実際の現場の話をします。
「住民一覧表が手元になく、すぐに見られないため、管理人が、なかなか住民の名前を覚えられない」
「駐車場にとまっている車の持ち主もすぐには思い出せない」
「自転車置き場なんか全然理解できない」
「今年の理事会の役員の名前も覚えられない」
・・・・ってことが多発するのです。
そりゃそうですよね。「え〜と、今年の会計役員は誰だっけ」と思ったときに、今までだったら、顔をちょっと横に向ければ、すぐ目の前にリストがあったのに、今は、いちいち、引き出しの鍵を開けて、中からファイルを取り出して、それをめくって、調べないといけません。こういう面倒なことは高齢者は嫌いですから、「まあ、いいや」ってことになり、だんだんと、仕事が怠惰になってきます。
実際に、そのマンションでも、駐輪場のリストが、引き出しの中に入ってしまうようになってから、管理人が、めんどくさがって、「利用者の変更」が生じても、それを改訂せず、今期の理事長が、「最新版の駐輪場のリストってありますか?」って管理人に聞いたら、「最新版はこれです」って、4年前に作ったものを見せたそうです。要するに、個人情報保護の体制になってからは一切改訂版を作っていないってことです。それまで、「理事長に言われなかった」ために、その管理人さん、駐輪場のことは一切放置していたようです。
これだって、管理室の壁に貼ってあれば、理事長が管理室に入った際に、「あれ、これ、なんで、4年前のままなんですか? 毎年、最新版を作ってくださいよ」とか、指摘できたのに、全部、引き出しの中にしまいこんでしまったために、そういう、チェックもできなくなってしまったのです。
また、日曜日の夜間に、ある留守の部屋で漏水事故が起き、外出中のその部屋の所有者に緊急に連絡を取ろうと思って、理事長が管理室の中に入って、その人の携帯番号がないか、調べようとしたら、壁には一覧表もないし、住民の電話番号簿を探そうと思っても、理事長が、「どこにあるのかわからない」という有様で、結局連絡できなかった、なんてことも起きました。
個人情報保護って、いいのか、悪いのか??? はて。
なお、壁に紙がなくてすっきりしている反面。管理室の中には、業務用もシュレッダーが置かれて、「こんな大きな機械があると、じゃまだなあ。狭い部屋なのに」っていうのもあります。個人情報保護が徹底しているところは、シュレッダーも購入するからです。その代金は、管理会社が払うのか? それとも管理組合が払うのか? どっちなんだろう。