管理人は超つらいよ   
マンション管理最前線

知的障害者のクロネコメール便配達


たまには真面目なことも書きます。





昨年ブログで書いた記事の続きなんですが、わかりやすくするために、その記事もここに引用してまとめることにします。

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「クロネコヤマトのメール便配達」

2012年4月頃。今までは、普通の、ヤマト運輸の社員さん(当然、制服をきている)が配達していた「クロネコメール便」。これを、外部に委託したのか? ある日から、知的障害者?と思える人たちが配達するようになりました。
初日、5人くらいの人間がやってきて、そのうち3人が「知的障害者」っぽい人、そして2人が普通の人?のようでした。この普通のほうの2名が管理人室に来 て、「これから、メール便は、この人たちが配達しますので。いろいろご迷惑をおかけするかもしれませんが、どうぞ、よろしくお願いします」と挨拶をしまし た。
ただ、この人は名刺を出すわけでもなく、「障害者」という言葉も出さないため、正確なところはわからないのですが、まあ、見た感じ、知的障害者の福祉施設の職員、といったところに見えました。

その後、この3人の「知的障害者っぽい人」が、毎日、クロネコメール便を配達しています。
ただ、この人たち、3人のうち1人(リーダー役なのかな?)はボソボソとなにかしらしゃべっているようですが、他の2名は一言も言葉を発しません。
「管理人に挨拶しない」
「マンション住民とすれ違っても挨拶しない。(他人に対しては失礼な印象を与える)」
「ヤマトさんの制服じゃなくて、私服のまま」
「首から身分証明書的なものをぶらさげているようにも見えるが、いつも背中しか見せないこともあり、わかりにくい」
ということもあり、事情を知らない人から見たら、「怪しいグループ」にしか見えません。

このため、住民からも私に対して、「あれ、何?」とか聞かれます。質問されたら事情を説明して理解してもらいます。ただ、質問もせずに、「なんか、怪しい 人がマンション内に出入りしてるわよ。このマンションも、もっと警備面に力を入れなさいよ」とか理事会でいきなり言い出す人もいて、彼らが「不審者」のよ うに見られている面もあって、ちょっと気の毒に思っていました。

というわけで、そのことを、「身内に知的障害者がいるために、その分野の政策を一生懸命やっている、民主党国会議員の三宅雪子さん」にツイッターで伝えたわけです。その三宅さんが「ちょと調べてみます」とリツイートしてくれたので、けっこう大きな反響がありました。
そうしたら、ヤマトの社長が一連のタイムラインを読んでいたのかどうか知りませんが、なんと、すぐに変化がありました。いつもの3人組の配達員さんが、腕 に「黄色ですごく目立つ腕章」をつけてやってきたのです。まあ、制服が一番いいかもしれませんが、マンションの警備を担当する私としては、これでも十分で す。遠目にもはっきりした腕章なので、これで、不審者扱いされることもなく、彼らも仕事ができると思います。

「国会議員の力ってでかいなあ」と感嘆した次第。っていうか、こういうことが政治家の本来の仕事なんだと思います。国民のほうを向かずに、議員同士で足をひっぱりあっているのは本来の仕事じゃないはずです。そして、すぐに対応するヤマトさんもえらい。

そんなわけで、少しずつでも、障害者の人たちが社会に参加して自立できるようになればいいな、と思っているところです。そして、「障害者の人ががんばって いるぞ」ということを知らしめることも必要です。今回も最初から、もっと「他人がわかりやすい方策」を考えるべきだったと思います。できれば、毎日、管理 人に挨拶して欲しいなあ。管理人に挨拶して、管理人がそれに呼応して、「毎日ご苦労様!」とか声を返すことによって、それを見ている住民も、「こういう人 たちが配達の仕事でがんばっている」ということが理解できるし。

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(以下は、2013/5 記述)

というようなことが昨年ありました。

あらためて調べてみると、ヤマト運輸は、「ヤマト福祉財団」というものを運営しており、そこで、福祉作業所の皆さんにメール便の配達を委託していることがわかりました。詳細はここで

なるほどねえ。2004年から始めてたんだ。それは全然知らなかった。

まあ、メール便って、わりと簡単な配達作業で、ピピっとPOS端末でスキャンして、ポストに投函するだけだから、障害を持つ人でもできると思います。荷物も軽いし。代引きでお金をもらうなんてこともないし。

ただ、マンションとかは、「名前を出さない」人も多いし、
「表札は個人名だけど、会社名でのメール便が届く」(このマンションは事業所としての使用は禁止されているので、表立って会社名を出せない事情がある)
「結婚したけど、旧姓のままでいる女性もいる」
「結婚して姓が変わった娘が、離婚して出戻ってきて親といっしょに住んでいる」
「同居する男性がコロコロ変わる女性」
とか、いろいろな理由から「ちゃんした正確な名称を表札に出さない」という世帯もけっこうあります。

加えて、郵便と違って、引越しをしても、ヤマトに「転居届」を提出する人は皆無なので、ヤマト側は転居情報を把握していませんから、すでに、このマンションにいない人宛のメール便も多数きます。

また、メール便というのは、企業の広告も多く、その手のものは、どこから入手したのか知りませんが、いい加減な住所や不正確な名前で届くことも多いのです。

そういうわけで、必ずしも、「容易に配達できるわけではない」ものでして、正確に配達するのは、けっこう大変なんです。だから、時々、集合ポストの前で、障害者の配達人さん(ヤマト運輸内部では「メイトさん」と呼ぶらしい)が、「う〜ん???」と固まってしまうことがよくあります。
そういう時に、普通の人なら、すぐに、管理人に対して、「これって、どこの部屋ですかね?」とか尋ねてくるものですが、障害者の皆さんって、「他人にものを聞く」というか、会話するのが苦手な人が多く、目の前に私がいるのに、聞くことができずに、「う〜ん」と悩み続けています。

そこで、私のほうは、「何を探してるの? わからないことがあったら教えてあげるよ」と助け舟を出して、教えてあげます。彼らが質問をするのも待っているのも面倒だし、何も教えないで、誤配されても、「管理人さん、これ、私の家宛のじゃないよ。困るよ」って文句を言われるので、すぐに教えてあげるんです。(管理委託契約の内容からすると、誤配の文句を管理人に言うって時点でおかしいんだけど、ここの住民はなにか文句があると、すぐに管理人です)

そうやって、コミュニケーションをとろうとしています。ただ、毎日顔を合わせても、きちんと、管理人に挨拶ができる人は少数です。
このため、他のマンションの管理人の中には、「あの連中は、挨拶のひとつもできない。これだから障害者はだめなんだ」と怒ってしまう人もいます。「いや、あれでも、彼らにしてみれば、精一杯がんばってるんだから、温かい目で見守ってやろうよ」と私からもお願いしています。

さて、話は戻りますが、当初は「腕章」だけだった、「身分を表示するもの」なんですが、その後、ジャンバーに昇格しました。こういう制服はなかなかかっこ よく、本人も「自分は働いている。社会に参加している」という気持ちになるんじゃないでしょうか。いいことだと思います。

今日は、その制服が、夏服仕様なのかな、「薄手のベスト」に変わっていました。
この制服と、今実際に来ている制服はかなり違うのですが、実は、ベストの裏側の上部には「ヤマトメール便」という大きな文字が書かれていて、かっこいいです。
ただ、「髪の長い女性が切ると、文字が隠れる」ので、この制服のデザインを担当した人は、女性の視点が足りないと思います。こういうところは、ヤマトもまだまだですね。頭が悪いです。

というわけで、毎日、メール便を配達する障害者の皆さん、ご苦労様。今後もがんばってください。陰ながら応援しております。

(今回は、オイラ、すごい真面目だな。いっぱしの偽善者みたいだ)


2013/5