管理人は超つらいよ
マンション管理最前線
管理規約冊子を持っていますか? 読みましたか? 順番がおかしくないかい? |
今、日本では「憲法改悪」が論議されていますが、おおげさなことを言いますと、マンションの「管理規約」は、「マンションにおける憲法」です。
ですから、全住民は、この「管理規約冊子」(使用細則なんかもいっしょになって一冊にまとめてあって、分譲時に全世帯に配布されている)を常に持っていないいけないわけですが・・・・・
築40年近くになる、このマンション。「管理規約冊子を持っている人のほうが、少ないかも?」という状態です。情けないですが。
私の知っている、「管理組合活動が活発なマンション」では、理事会を開催する際には、全役員が、「毎回、 管理規約冊子を持参する」ということになっています。なにか、問題が起きたときに、「規約ではどうなっていたか?」「細則ではどうなっていたか?」すぐに確認できるようにです。
通常は、「管理会社の社員」と「理事長1名」だけが、持参するパターンが多いですが、そのマンションでは、全役員に持参を命じています。素晴らしいマンションだと思います。
こうしておけば、理事会に提議する前の段階で、各役員が、「使用細則では、このように決められているのに、それを守らない人がいる」、「だから、この問題を、理事会で話し合おう」というふうに考えることができて、理事会の会議の進行も早いのです。
さて、世帯数約250の当マンション。平均すると、年に「7〜8件」の「売買」とか「賃貸」の転入転出があります。
新しい人が入居するたびに(というか、入居が決まった時点で)、「前所有者から、管理規約冊子を引き継ぎましたか?」と確認するのですが、ほぼ100%、「もらってません」という答えです。
幸い、このマンションでは、以前、管理規約を改定した際に、その時の担当フロントがえらかったんだと思うのですが、「転入転出による入れ替わりのことも考えて、冊子の印刷部数は、500(部屋数の2倍)にしましょう」ということで、余裕を持って印刷してくれました。おかげで、新しく入る人が冊子を持っていない場合、無料で、きちんとした冊子を渡すことができます。これはラッキーでした。
他のマンションでは、「冊子の予備はない」というところが多く、「新入居の人が冊子をもらっていないのは、その部屋の前の持ち主の責任で、管理組合は関係ない。持っていないままでOK」と放置したり、「新入居の度に、管理人がコンビニに行って、冊子をコピーして渡す (コピー代がばかにならない金額なので、有料の場合が多い)」とか、しています。こういうのは大変だな、と思う。
というようなわけで、当マンションでは、「新入居の連絡が来る」〜「規約冊子をもらっているかどうか確認」〜「なければ、予備のものを無償で渡す」ということをしているのですが、これはこれで素晴らしいことだと自分では思っていますが、でもね、これって、本来おかしいです。
賃貸の場合でも、売買の場合でも、契約書の中には、たいてい、「管理規約を遵守します」という一文が入っています。この前、賃貸で入居した人に頼んで、仲介の不動産屋で署名させられた「賃貸借契約書」を見せてもらったんですが、その中にも、「管理規約および使用細則にかかれたことを守ります」という文がありました。賃借人は、この文を見て、(同時に、宅建主任者から重要事項説明も受けるはず)、それに納得して、契約書にサインしたはずですが・・・・・・
「あの〜、ここに、こうやって書いてあるんですから、当然、あなたは、管理規約冊子を全部お読みになったんでしょうね?」と聞くと。
「いいえ、そんなの知りません。説明も受けていません。ただ、この契約書にサインをしろって、言われただけです」
「え? そうなんですか? それで、管理規約の冊子は、大家さんからもらったんですか?」
「いいえ、そんなものもらってません」
「もらわないで、読まないで、それで、この規約を守るって、誓約したんですか? おかしいいでしょ?」
「おかしいって言われても、不動産屋は、何もくれずに、ただ、サインしろって言っただけだし。私には責任はないでしょ」
「いや、でも〜」
って会話をしました。
この会話、本来なら「おかしな会話」ってなるはずなんですが、現実には、これが「当たり前」なんです。
つまり、このマンションに新たにやってくる人のほとんどが、「管理規約冊子を一切読まずに、”規約を守ります”という契約にサインしている」ということ。
まあ、今、ネット通販サイトなんかでも、長々と、「こんなメンドクサイの誰が読むんだよ」という約款が書かれていて、でも、購入者は、いちおう、表面的には、それを納得した上でショッピングをしていることになってるけど、それを同じなんです。
でもなあ、物がマンションなのに、一切読まずに契約って・・・・・ なんか納得できません。
そういうわけで、本来であれば。
・「もともとの区分所有者」が「管理規約冊子」を持っているはず
・売買の際は、買おうと考えている人に、その冊子を渡して読んでもらう
・賃貸の場合は、冊子をコピーしたものを、賃貸希望者に渡して読んでもらう
というのが筋です。
ですから、今、実際のところは、仲介の不動産業者から、「売買契約が済んで、入居者が決まりました。つきましては、予備の管理規約があったら、一部もらえませんか?」っていうのが一般的なんですが、本来であれば、売買契約が決まる前の「その部屋の取り扱いを当社ですることになりました」というタイミングで、規約冊子をもらいにくるべきじゃないでしょうか? タイミングがおかしいよね。今の不動産屋。
さて、そうやって、契約が決まった場合に、予備で用意している管理規約冊子を、不動産屋(A社)に渡すことが多いのですが、時々、困ったことに、「売買契約はしたものの、住宅ローンの審査が通らずに、契約破棄になってしまう」ケースがあります。破談です。そして、そのあと、この不動産業者の仲介ではない、別の不動産業者(B社)の仲介で、この部屋がきちんと成約してしまう場合があります。すると、B社からも、「管理規約冊子をください」って要請が来るわけでして。
この場合、不要になってしまったA社は、預かった規約冊子を、当方に返却するのが筋だと思うのですが、過去に、戻してくれた業者は一社もありません。「返してください」と電話したこともありますが、「今度、近くに寄ったら返却します」と約束したものの、そのまま、ほったらかしのこともあります。
つくづく、こういう不動産業者ってのは、いい加減だなあ、と思います。