管理人は超つらいよ　　　
マンション管理最前線

他人事は自分事なんです。　無関心ではいられません

長いこと、この仕事をやっていると、「時代の変化」みたいなものを感じます。

私自身は、「他人のことに興味ない」という人間で、いわゆるワイドショーねたみたいのも好きじゃないです。マンション居住者の娘が結婚しようが、子供が東京の大学に行こうが、関係ないです。管理会社としては、「区分所有者（＝たいていは世帯主）」だけを、把握していれば、仕事上は問題ありません。このマンションの入居届には家族のことを書かせる欄もありませんし。（内縁関係の住民が、理事長になったことがあって、その時に、この手のことをいろいろとグレーにした経緯もあるようです）

だいたい、家族のことに首を突っ込むと、「うちの息子の嫁がねえ。料理が下手で・・・」とか、「孫がピアノの発表会に出るのよ。最初の挨拶をする係になっちゃって・・・・」とか、延々と、つまらない話を聞かされるはめになり、通常業務にも支障が出てきます。ですから、そういう話には極力関心を持たないようにしています。
それに、「個人情報保護」も、大事になってきているので、いっそう、「家庭内のことには立ち入らないようにしよう」と思います。


ただし、最近は、なんか、そうも言ってられなくなりました。

そのキッカケは、「孤独死」。



ニュースでも、よく聞かれるようになりましたし、実際に、当マンション内でも発生しました。死後２週間とか経過していて、腐敗臭が部屋に充満していたらしく・・・・・・　その悲惨な状況を見聞きした、当住民も、否応なく、「これは他人事じゃない」って思うようになってきました。

当マンションは特に、高齢者世帯が多いし、単身高齢者もいっぱいいます。持病を抱えている人も多いし、「次はわが身」ってところだと思います。「お隣の市に、息子さん夫婦がいるんでしょ？　心配ないじゃん」と言っても、「うちの子は親を親とも思ってない。私が死んでも何もしてくれないわよ」とあきらめている人もいます。

さて、そんなこんなで、否応なく、各家庭の中に入っていかないといけない仕事も多くなってきました。

こんな例もあります。
＊マンションの区分所有権というのは夫婦の共有って場合もあるんですが、夫婦仲が悪くなって離婚寸前になると、「管理費等も共有割合に応じて払いたい」とか 言って来る人がいるんです。今までは、ご主人の銀行口座から、毎月、１４０００円を振り替えていたのに、それを、「ダンナ８０００円」「奥さん６０００円」といったふうに、「別々の口座からに引き落としてくれ」とか言う人もいるんです。そんな面倒なこと、できるわけないでしょ！！　
「夫婦で別々とかできません。世帯主１名だけで払ってください」「でも、今、うちは離婚寸前で、嫁が、お金のことを厳格にやるようになって・・・・・」と、なんたらかんたら、家庭の事情を聞かないといけないのです。

こんな例もあります。
＊「毎朝、公園で出会う、７１６号室の鈴木さんが、この１０日ほど、全然、姿を見せないんだよ。管理人さん、なにか知らないかい？　鈴木さんも単身者だからねえ。まさか、部屋の中で倒れて死んでるんじゃ？？？」
こういう質問も、今までなら、「各家庭のことには立ち入りません」とつっぱねていたもんですが、ここのところは、そうも言えない雰囲気になってきてしまい、いちおう、調べないといけません。
どうやら、本当に部屋の中にはいないようで、連絡先としてうかがってある、隣県の息子さんに電話をしてみたら、「病気なんで、うちの近くの病院に入院させてます。３ケ月くらいは入院するんじゃないかな？」「あの〜、息子さん。そういう場合は、管理組合に連絡をいただけますかね？」「え？　でも、管理費は自動振替だし、別に、誰でも迷惑をかけないでしょ？」「まあ、そうかもしれませんが・・・・・」　若い人には、どうも、理解してもらえないようです。

今回は病院でしたが、「老人ホームに入所」ってケースもあります。この場合、まず、マンションに戻ってくることはありません。行ったきりです。でも、そういう大事なことなのに、家族からは何も連絡がないんですよねえ。なんなんだろうなあ。

普通は、「知人」とか「お隣さん」とか、顔見知りのことを心配するものですが、最近は、それだけじゃなくて、知らない人のことまで心配するケースが多くなりました。

「ねえ、あそこの部屋の郵便ポスト、中身がいっぱいよ。大丈夫なの？」
「おい、管理人。９０２号室の部屋の電気メーター、全然動いていないぞ。不在じゃないのか？」（なんで、そんなことまで見てるんだよ？？）

全然、関係のない人まで、心配したりします。はては、１００メートル離れた別のマンションのことまで、「あそこのマンション、しょっちゅう救急車が来るんだけど。どうなっているのか、管理人さん、調べてきてよ」なんてことを言い出す人までいます。

こういうのに、「管理会社は関係ありません」と、正論で答えると、「居住者が何をしているか、全部把握しておくのが、管理会社の仕事だろ！　職務怠慢だ！」とか、怒り出す、変な人もいます。もう、わけがわかりません。

いっぽうで、不在になる当人は、「北海道の娘のところに、１ケ月ばかり滞在してたのよ。　え？　長期不在の際は、事前届出が必要なの？　そんなの知らなかった」っていう人が多く、連絡をくれる人はほとんどいないのが現実です。

まあね、家族もいい加減だからなあ。でも、せめて、「入院」とか「老人ホーム入所」くらいは、管理室にも教えて欲しいよなあ。

何も連絡がないとこっちも困ります。緊急時の連絡先が届け出てあれば、聞くこともできるけど、大半は届出がないし。公的機関に聞くと、「個人情報ですから」と断られるし。まあ、それでも、高齢者の場合は、地元の顔見知りの民生委員さんから、ある程度の事情を聞くことができます。
困るのが、若い人が、行方不明になった場合で。携帯の番号とかも聞いてないし。賃貸の若い人が行方不明ってことが多いのですが、大家は何も知らないし、仲介不動産業者はいい加減だし、知ってても、「個人情報です」って、断られるし。

なんで、管理人が探偵みたいなことをしないといけないんだろう？　面倒だなあ。

そんなこんなで、最近は、あちこちから、「あの人、大丈夫かあ？」「あの部屋の、人の気配がないぞ。なんかあったんじゃないか？」とか、そういう質問が「ジャニーズ事務所の人気５人組みグループ」のように。（＝嵐）
でも、そういうことを聞いてくる当人が、「緊急時の連絡先」を管理組合の登録していない人だったりして。　う〜ん、わからん。

この前は、当人が、「これから３ケ月ほど入院するので留守にします」と挨拶に来たので、その部屋の周辺の部屋の人には、「入院だそうです。心配しないで下さい」って、説明して回りました。じゃないと、質問が来るから。

まあ、管理人としての仕事は忙しくなるけど、「無関心」よりは「関心を持つ」ことのほうが、日本のためにはいいことだと思うので、がんばります。

2013/9

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