管理人は超つらいよ   
マンション管理最前線

「民泊」マンションで、宿泊者が出すゴミは「事業系ゴミ」です





2016/1

ゴミの観点から民泊問題を考えます

 民泊

 この問題が今注目されていますが、マスコミもマンション管理士さんも、なかなかこの大事な問題に関して触れてくれないので、私が書こうと思います。それは「
ゴミ」のことです。現在、旅館業法に違反する行為として行われている実際の「民泊」でも、「宿泊者が出すゴミ」のことがいろいろと問題になっています。

  
安倍政権規制緩和に意欲を示す都心部の「民泊」で、トラブルが相次いでいる。大家に無断でマンションの一室を使い、ゴミや騒音などの問題が頻発、死亡事故も起きた。政府がルールを示す前に「無法地帯」だけが急速に広がり、住民たちを悩ませている。(2015/11の朝日新聞記事)

  
トラブルの内容としては、複数の外国人が部屋を出入りして防犯上心配というもの、ごみ出しルールなどが守られず、なかには共用廊下などに放置される、部屋内やマンションのロビーラウンジなどで大勢の外国人が大騒ぎをする、といったものだ。(2016/1/26 ビジネスジャーナル記事)

案の定、急増しているのが、利用する側の外国人宿泊客と住民とのトラブルだ。 各自治体には「外国人の出入りが頻繁になって怖い」「夜中に大勢で騒ぐ声が聞こえる」といった相談や苦情が相次いでおり、都内の自治体担当者は「最近は『分別されていない大量のゴミが放置される』といった苦情も受ける」と明かす。 (2015/12/5 ZAKZAK記事)


(※素材出展 経済産業省)


 民泊に関しては、以上のように、山のような報道記事があるのですが、記者の皆さんは知識不足なのか、認識に誤りがあります。それは、

「民泊事業で、宿泊者が出すゴミは、一般の家庭ごみではない。事業系ゴミになる」

ということです。

 「このことをみんなわかってないなあ」と、ずっと思っておりました。そうしたら、2016/1/26の毎日新聞のサイトで「東京の大田区の民泊条例設定」の記事の中に、ようやく、

利用者が出すごみなど廃棄物の処理方法を「事業系ごみとしての適切な処理ができること」

という文が書かれ、「事業系ゴミなんだよ」ということが明示されました。

一般の「居住用マンション」の住民が出すゴミというのは「家庭ゴミ」とされ、自治体のゴミ収集車が、基本、無料で持って行ってくれます。(※無料といっても、実際は税金だし、粗大ごみに関しては別途料金を取るところが多いし、有料のゴミ袋を買わせることにより、有料で収集している自治体も少なからずあります) つまり、「家庭ごみ」は、基本的に、自治体が回収するものとなっています。

 それ以外の、例えば、「中華料理店から出る生ゴミ」なんかは、「家庭」ではなく、「事業所」ですから、自治体の回収車が収集することはなく、「**資源株式会社」とか、今話題のココイチのカツを横流しした愛知県の「ダイコー」のような、いわゆる、「廃棄物処理会社」が収集することになっています。これは、当然、「有料」となっています。

 こういう「無料」「有料」の差だけでなく、「家庭用」と「事業系」のゴミの差は、「分別ルール」にもあります。これも自治体によって様々ですが、「家庭用ゴミの分別ルールはめちゃくちゃ細かいのに、事業系ゴミの分別はゆるい」とか「家庭用ゴミの分別ルール以上に、事業系ゴミの分別が細かい」なんてのもあって、とにかく、「家庭用と事業用は分別ルールも違う」ってことが大事なことなのです。(自治体によっては同じこともあります)


※特殊な例ですが、都心などビジネス街にある賃貸マンションは、「居住用」の部屋の間取りで建築しても、実際には「事務所」として利用されることが99%なので、現実にそこに居住している人がいても、家庭ゴミの収集が行われずに、マンション全体として、「全室」事業系ゴミとして収集作業が行われ、お金をとられる場合があります。(私の知人がそういうところに住んでおります)

 
 さて、今後、民泊特区などで、民泊がきちんと法的に問題の無いように、「旅館業法」の「簡易宿所」(=民宿なんかがこれにあたる)として登録され、正規の事業として運営されるようになった場合、正確に言うと、その宿泊者の出すゴミは、「事業系ゴミ」ということになり、そのマンションの一般居住者が使用する「ゴミ集積場」(=家庭用ゴミ専用)には出せません。部屋のオーナーは自分で廃棄物処理業者と契約し、事業系ゴミとして排出しないといけません。旅館とかホテルとか民宿はそうやってお金を払って宿泊客のゴミを処理しています。

 これを、マンション管理の最前線である管理人目線で考えますと、例えば、民泊の客である中国人が、エレベーターホールにペットボトルの空き瓶を投げ捨てた場合、これを掃除して、ゴミ集積場に出すことはできません。民泊客が捨てたものだとわかっているのであれば、その部屋のオーナーに渡して処理を任せることになります。また、ちゃんとした民泊業者は、宿泊客が出た後に清掃員がやってきて、部屋の中を掃除するそうですが、その際に出たゴミを、たとえ、「家庭ゴミの分別ルールの沿って、きちんと分別処理した」としても、マンションのゴミ集積場には出せません。

 となると、事業系ゴミとして出すわけですが、一般のマンションに「事業系ゴミ集積場」なんてものはありませんから、マンション前の路上とかに置くことになります。でも、そんなことをしたら、マンション住民から非難轟々でしょう。

 このように、政府が思い描く、「民泊を正式に認める」作戦は、たとえ、宿泊客がきちんとマナーを守ったとしても、「事業系ゴミの排出の経費をかけてもペイするものなのか?」「ゴミをどこに置くのか?」など、実際の現場では難問山積だと推測します。こういうことまで考えると、やっぱり、民泊って無理なんじゃないでしょうか? 空き家の一戸建てを民泊用にするのであれば、事業系ゴミも出しやすいと思うので、それは可能かもしれないけど、ひとつのマンションで、「家庭ごみ」と「事業系ごみ」が混在するのは、難しいでしょう。

 というわけで、最前線の管理人としては、「民泊なんて絶対に反対!」ということを言わせていただきます。

追記  大田区さんのhpに、ゴミに関するPDFが出てました。こちらから御覧ください。


■rjcさんの加盟マンションなんかで、「民泊阻止」の方法をいろいろ考えておられますが、このゴミのことを利用して、「事業系ゴミなんだから、うちの集積場には出せないよ!」と言って、民泊を阻止する方法もありかと思います。ご利用下さいませ。

★余談ですが、マンションの一室を民泊として営業させることは、火災保険や損害保険に関しても、問題があり、「契約時の用途と違うために、火災が起きても、保険金が出ない可能性がある」のだそうです。そう、簡単にはいかないもんですな。








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