管理人は超つらいよ   
マンション管理最前線

管理会社から見た「分譲マンション」と「賃貸マンション」の違い





2016/2

 このHPは、基本「愚痴をこぼす場所」なんですが、できれば、「読む人の役に立つ情報を」という意識も少しあります。まあ、「おかげで参考になりました!」っていうメールはめったに来ませんが、マンション管理士さんのブログなんかでは、まったく役に立つ情報が出てこない(「役立つ情報は顧問料を払ってから」という商法だからしょうがないわな)ため、ここでは、なるべく「解決法」とかをわかりやすく書こうと思っております。

 前のページで「分譲と賃貸の差」について触れたら、思い出したことがありました。

 先日、ちょっとした大きな工事があったんですが、その業者の態度というか、マンション住民に対する配慮というか、そういうのが良くなくて。その会社の上司に聞いてみたら、「うちは分譲マンションの仕事はあまりしてないんですよ。賃貸マンションのほうが多くて」と言ってました。それで「あ〜、なるほどなあ」と理解しました。

 賃貸マンションの工事というのは、その「施主」(業者から見てのお客様)は、その「賃貸マンションのオーナー一人だけ」です。一方、分譲マンションの場合、「施主」は、書類的には「管理組合」とか「管理組合理事長」ってことですが、実際は、その組合員全員がお客さんになります。だとすると、工事を開始する前の「説明」とかも、賃貸なら「オーナー一人に言えばいい」ですが、分譲だと、「組合員全員に説明しないといけない」ってことになり、「その組合員全員が了解してもらわないといけない」ということになり、これに注ぐ労力は相当なものです。わがままな住民もいるし、頭のおかしな人もいるし、外国人もいるし、クソ野郎もいるし、認知症もいるし・・・  大変だあ。
 工事の決定だって、賃貸なら、そのオーナーが「OK じゃあ、来月から始めてよ」で開始できますが、分譲では、「事前説明会を開催」「予算を計上」「年に一回の定期総会で承認を得る」・・・といった煩雑かつ長期的な手続きが必要になります。
 どんな住民だって、自分の財産の保持ということになると、それなりに口を出したくなるものです。ですから、工事に対する意見もあれこれ言ってきます。それでもって、質の低いマンションでは、説明会などのタイミングでは何も言わない(というか出席しない)のに、いざ、工事が始まって、自分の目の前で行われると、あれこれ言い出す人が増えます。困ったことに、分譲マンションでは「あらかじめ事前に決めたお金しか使えない」って制度なので、「総会決議のあとから言われてもなあ。予算措置するには臨時総会を開かないといけないよ」ってことにもなります。
 
 一方、賃貸専用では、「この部屋も建物も、自分のものではない」ために、全般的に、工事について関心が低く、文句をいう人も少ないのです。また、追加で大きな工事が必要になった場合も、総会なんて不要で、オーナーにお金を出してもらえばいいのです。

 つまり、「賃貸のほうが簡単で楽」ってことなんです。でもって、分譲マンションの場合、住民全体が「お客」になるため、工事業者といえども、一種の「接客業」的な面が必要になり、分譲マンションの仕事を多くやっている工事業者は、そういう「接客」のスキルもそこそこ持っていないと務まらない、ということです。

 でもって、何が言いたいのかというと。

 このページの読者の中で、「これから大規模修繕工事をする予定だ」というマンションの皆さん。今後、工事業者の選定やらなんやらがありますよね? その時に、「過去の工事実績」とかで、マンションの棟数なんかの資料を見て、あれこれ比較すると思いますが、その際に、「その実績マンションは分譲なのか? 賃貸なのか?」を調べて欲しいってことなんです。
 たとえ、過去の工事実績の棟数がすごい数がある業者だとしても、その大半が「賃貸専用マンション」だとしたら、その業者は、上記の「接客」のスキルは低いのです。ですから、注目点は「過去の工事実績数」だけではなく、その中身なんです。分譲マンションの取り扱いが多いのか少ないのか、そこを見極めてください。こういうのは、コンサルもマンション管理士も、指摘しないことが多いので、要注意ポイントなんです。

 さて、これは「マンション管理会社」についても同様でして。

 賃貸専用マンションでは、「管理組合」がないため、当然、「理事会」もなく、「総会」もありません。オーナーに用がある際は、オーナー一人に連絡すればいいだけの話です。対面が必要な場合も、オーナーの自宅に行けばいいだけです。相手は一人ですから、「意見が割れて紛糾する」なんてこともありません。また、「毎年、新しい役員を決めるのが大変なんだよ」とか「毎年、理事長が変わるからめんどくさい。毎年、ド素人を相手にしないといけない」という苦労もありません。総会資料も作らなくていいし、議事録も残す必要はありません。外部居住オーナーに郵送することもありません。つまり、マンション管理会社としたら、「同じ管理委託費」だとしたら、組合運営という、もっとも大変で精神的にも疲れる仕事がない、「賃貸マンション」がすごくありがたいわけです。
 逆に言うと、「賃貸マンションの管理しかしていない管理会社」の場合、「組合運営のノウハウ」というものがありません。ですから、管理会社をリプレイスすることを検討しはじめた時に、「大手だけじゃなくて地元の会社にも声をかけてみよう」と思って、HPなんかを探して、そこを候補会社にしたものの、詳しい話を聞いてみると、「分譲マンションの管理の経験はなかった」なんてことがあるのです。ですから、管理会社を探す際も、そこの「管理実績」に出ているマンションが分譲なのか? 賃貸なのか? というのは大事なポイントなんです。

 こんなことを書いていると、ある程度、管理組合のことの知識のある人からすると、組合運営の大変さがわかっているだけに、「マンション管理会社としたら、圧倒的に、賃貸マンションの管理のほうが楽じゃないか?」と思うことでしょう。でも、必ずしもそうとはいえないのが、この業界の難しいところです。

 賃貸マンションの住民の方が、圧倒的に「無関心」ですから、「雑排水管清掃」の実施率はすごく低くなります。低くなると、「管のつまり」なんかの危険性が高くなります。また、「消防設備点検」なんかも非協力的で、「ベランダにある避難ハッチの動作確認」なんかもやりにくいです。掲示板の掲示物、配布物もなかなか読んでくれません。ゴミ出しマナーも悪く、集積場は汚いです。(管理人的にはこれが一番きつい)

 それから、「オーナー一人が決定してくれればそれでOK」というのは、逆に言うと、「そのオーナーがOKしないと何もできない」ということです。特に、賃貸オーナーというのは「ケチ」な人が多く。維持管理にかかる費用というのは、ダイレクトに、そのオーナーの「収入の減少」になるわけで、出し渋るケースが多いのです。一方で、分譲マンションにおける「管理組合所有のお金」というのは、あのアホな三代目の安倍晋三が、「国民から吸い上げた貴重な税金を自分で好き勝手に使いまくり」みたいなもんで、「オレの金じゃねえもん」「どうせ、組合の金だろう?」ってことで、わりと、出費してくれるものなのです。

 そういうわけで、賃貸マンションの場合、「どうしても、そこの補修工事はしないとまずいですよ」というようなケースでも、オーナーがケチで、「今はカネがないから後回しにしよう」と工事を拒否したりします。すると当然、数年後に、そのツケが回ってきて大変なことになったりするわけです。(映画「タワーリングインフェルノ」の電気火災のように)

 このように、「なんでもかんでも賃貸マンションのほうがいい」とも言えないのです。






<お願い> 当HPは閲覧に際し、購読料をとることはしておりません。有料メルマガなどもありません。でも、もし、ご協力いただけれるのであれば、アマゾンで買い物をする際は、このバナーよりアマゾンサイトに入って購入して下さい。当貧乏管理人の生活費の足しになりますので。なにとぞ、よろしくお願いします