管理人は超つらいよ   
マンション管理最前線

「お喋りババア」のおかげで 密葬なのに口座凍結





2016/9


 
「今はSNSが発達しているから、秘密を維持するのが難しい」なんて話がありますが、SNS以上に恐ろしい物のお話です。



 福島原発爆発以来、放射能で汚染された当市。ほんとに亡くなる人が増えました。

 当マンションでも、続々と住民がなくなっていますが、つい先日もまた一人。

 この「喪主」の人。過去に身内が亡くなった際に、死亡日の翌日にはもう「銀行口座が凍結」されたため、葬儀の費用すら払うお金がなくて困ったという経験がありました。このため、「今度は口座凍結がすぐに行われないようにしよう」と考えました。

 ここで、
銀行の口座凍結の仕組みを説明しておきます。(銀行側の公式見解といったものではなく、実際にはこんなふうに行われているという推測も含めた現実社会のお話です)

 人が死亡すると、その情報を得た「銀行」は、その人の口座を「凍結」してしまいます。凍結とは、「何もできないようにして、そのまま保管する」ということで、たとえ、その人の配偶者であって、通帳も印鑑も持っている人であっても、その口座からお金を引き落とすことができなくなることです。

 なぜ、そんなことをするかと言うと、例えば、その死んだ人が、晩年は、正妻のもとを離れ、お妾さんと暮らしていて、そのお妾さんに「通帳と印鑑を預けていた」という場合、そのお妾さんが、「あの人の銀行のお金を全部あたしがもらってしまおう」と思って銀行にいって、全額下ろしたとします。そんなことをされたら、正妻さんやその子どもたちは怒るでしょう。
 このように、銀行側としては、「きちんと、遺族の間で遺産分割の協議が行われて、正式に、この銀行口座の現金は誰が相続するということが決定された」時点で、その相続者にお金を返したいのです。「通帳と印鑑を持っていた人が来たので、全額引き出してもらいました」なんてことをして、あとで、正妻さんから、「あたしに無断でなんてことするの!」と抗議されても困るのです。

 というわけで、銀行は、死亡の事実を知ると、すぐに、その人の口座を凍結し、「遺産分割協議書」が出来上がるまでは、凍結したままにします。

 さて、この「凍結」なんですが、「夫婦二人だけの家庭で、ご主人がなくなり、遺産を相続するものは奥さんしかいない。遺産分割の協議なんか不要」という場合でも、凍結してしまうのが困るんです。これは、「奥さんの知らない範囲で、実は、昔、別の女性に子供を生ませて、その子を認知している。だから、その子にも遺産を受け取る権利がある」なんていうケースがあるからなんです。もちろん、こういうのはレアケースなんですが、そういう可能性がある以上、「奥さん一人しかいない」という場合でも、凍結してしまうのです。

 ところで、ここで問題になるのが、
「銀行は、死亡の情報をどこから得るのか?」ということ。これについては、多くの人が、「市役所に死亡届を出すと、それが全金融機関に伝わる」というふうに思っているようですが、私、実際に役人に聞いたことが有りますが、「それはない」そうです。

 となると、「死亡した病院から情報が行く」というルートもありますが、これも、「病院はそんなことはしません」とのこと。

 となると、「葬儀を行なった葬儀場」が有力候補です。これはケースによって「連絡する」「連絡しない」が分かれるのですが、一部の葬儀場では銀行へ連絡する場合があります。例えば、地方では、
農協組織が幅を効かせており、「金融も農協」「葬儀場も農協」という場合があります。この場合、葬儀場から、農協の金融部門に連絡が行きます。ですから、農協が経営する葬儀場に申し込んだ段階で、即、農協貯金の口座が凍結されます。他の葬儀場では表面的には「そんなことはしていません」と言ってますが、本当のところはわかりません。ただ、即凍結となると「葬儀費用用としてあてにしていた口座が凍結されたら、葬儀場にお金が払えなくなる」という事態が発生するかもしれないわけで、そんなことは葬儀場としてはしないのではないか? と私は考えます。

 マクドナルド もとい、となると。「銀行自らが情報収集をしている」ということになります。これ、知り合いの田舎の信用金庫職員から聞いた話ですが、事実だそうです。

一番の情報源は、
「地元新聞の死亡告知欄」だそうでして。日本の「地方」の場合、その地元の「地方紙」では、「お悔やみ欄」というページが非常に大きくて、死んだら、すぐに、そこに掲載されてしまいます。これは、葬儀場と新聞社が提携しているそうです。ただ、今のように「個人情報重視」の社会環境では、新聞社側も、昔みたいに、「遺族の許可もないのに勝手に掲載する」ってことはできなくなっていて、いちおう、遺族に電話をかけて「掲載しますけどいいですか?」って承認を得るそうです。遺族の方は、まだ亡くなったばかりで精神的にも安定していないので、なんだからわからず、「はい、いいですよ」って答えちゃうことが多いそうです。となると、新聞に掲載され、すぐに口座凍結です。

次に、「地元自治会の掲示板の情報」なんかがあります。町の中に掲示板が設置されていて、そういうのに、「当町内会会員の訃報」ということで貼りだされます。銀行側がこういうのをチェックしていて、それで凍結してしまうのです。「葬儀場の前の看板の名前をチェックしている」ということもあるそうです。

さて、今回の当マンション住民のケースなんですが、喪主になった人は、過去の経験から、「どうなると口座凍結されるのか?」をある程度理解していたため、「病院に対して、情報を流すな、とお願いした」「地元新聞から承認の電話が来たら断るつもりでいた」「葬儀は家族だけの密葬で行ない、葬儀場に対しては、ホールの入り口にも看板は出さす、どこにも情報を漏らすな、と釘をさした」ということをしたそうです。

そして、マンション管理人に対しても、「病死の事実」は伝えてくれましたが、箝口令がしかれました。当マンションでは、組合員が亡くなった場合、玄関ホールの掲示板に、その告知をしますが、「それもやめて欲しい」と言われました。「理事長とかにも教えないでくれ。あのひとは口が軽いから」とも言われ、「10日間は、管理人さんの胸の中だけにしまっておいて欲しい。誰にも口外しないで欲しい」と頼まれました。

 とはいえ、家族葬といっても、喪服は着るし、「家族だけのつもりだったが、親戚がどうしても出席したいというので来てしまった」ということで、それなりの人数の参列者が有り、そういう黒服の人が大勢、マンションのその人の部屋の中に入っていくのを誰かに見られるわけです。

 マンションの中には、「どうしようもなくヒマ」で「他人の不幸が大好き」なオバサンというのがいるもんでして。そういう人が、「Aさんの部屋に黒服の人がたくさん入ってくところを見たんだけど、誰か死んだの?」と管理人に聞いてきます。こっちは、「何も知りません」とシラを切りますが、「なんか知ってるんでしょ、あんた。教えなさいよ!!」と脅迫してきます。当然、何も教えませんが、このオバサン、一回火がつくと突進する人で、「家政婦は田町」じゃなくて「見た」みたいになってしまい。その隣の部屋の住民に話を聞いたり、あれこれと聞きまくり、その部屋のご主人がここのところ体調を壊し、入院していたことも探り出し、そして、「++さんちの旦那さん、死んだみたいよ」ってことを言いふらし始めました。

 こうなると、こういう話は、手動アナログ式リツイートを繰り返され、その日のうちに、あちこちで、「++さんの旦那さん死んだらしいわよ」ってことになり・・・・ 

 それでもって、タイミングが悪いことに、このご主人がなくなったのが、金曜日の午前中で、わりと急死だったので、銀行に行く余裕なんかあるわけもなく、その後、土曜日と日曜日に葬儀を行ない、しかし、その次の月曜日が「ハッピーマンデー」で祭日だったため、病院への支払い費用や葬儀費用を銀行に下しに行くことができず、その翌日の火曜日に銀行に行ったんですが、その時には凍結されていて・・・・   「お金がない。どうしよう?」

 その後、私のところに、「あんた、誰かに言ったの!!」と怒鳴りこんでくるし。

 まあ、私の推測では、あの「おしゃべりババア」のせいだと思うんですけど。

 困ったもんです。

 秘密を保持するのは大変です。

そして、こういう「人の噂」というのは「正確に伝わらない」という性質がありまして。本当は「ご主人が死んだ」のに「奥さんが死んだ」というふうに聞いた人が居て、「さっき、あの奥さんの幽霊を見た」とか私のところに言ってきたりするんです。これくらいなら、まだましですが、いつの間にか、「その部屋のお隣のご主人が死んだ」ことにされたりして。これも、とばっちりです。

 参ったなあ。






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