管理人は超つらいよ   
マンション管理最前線

あると便利な「共用台車」





2016/9


 
管理組合で用意している「
共用***」というのは、いろいろあります。

今、世間で話題になっている「共用自転車」に関しては、当HPでもずっと昔に取り上げています。 (※情報が古いので、最新版を書かないといけないかもしれません) 最近では、ミッキーさんのブログでも書かれています。


当マンションでは、共用自転車に関する私の提案は無視されましたが、それ以外ではいろいろと備えています。(管理組合で買った物もあるけど、私が自腹で揃えたものも多いです。

「自転車用空気入れ」
「脚立」(低いのと大きいのと2種類)
「トイレ詰まり用のカッポン」
「CRC5-56」
「金属用のこぎり」(集合ポストにかけておいた錠前の鍵をなくしてしまった時に使用する)
「古新聞の結束用のビニール紐」(結束しないで集積場に持ってきた人に対して「これでまとめてくださいよ」とお願いする)
「老眼鏡」(集合ポスト前で、郵便物の確認をするため)
「電動ドライバーなどの大工用品各種」
などなど。

そんななか、今回の話題は
「台車」です。これ、「共用**」の中では一番使用頻度の高いものだと思います。特に、「古紙資源リサイクル」に関して行政が熱心になってから、需要が増えています。古紙って重いですからねえ。自分の部屋から集積場所に持ってくるのが大変で、台車があると便利なんです。




さて、うちのマンションで「共用台車」を見て、「これはいいなあ。わがマンションでもやってみよう」と考えた、ご近所のマンションの理事長さん、さっそく、自分のマンションの理事会で、これを提案しました。この案、採用はされたんですが、一部の役員の意見を取り入れた結果、わがマンションでの運営方法とは異なり、なんともめんどくさいことになりました。

わがマンションでは、
「貸し出し用台車は、玄関ホール内の指定位置に置いたまま。誰でも簡単に触れる場所に置いてある」(ただし、そこは、防犯カメラのすぐ下であり、これで盗まれるのを防いでいる)
「予約不要」
「24時間いつでも使える」
「住民だけでなく、配達に来た人でも使っていい。リフォーム工事業者が使うのも可能」
「使う際に、申し込み手続きとか、書類に名前を記入とか、面倒なことは一切不要」
「管理人が、管理人室に居る時は、管理人に一声「借ります」と声をかけてもらう」
「使用方法は、玄関ホールの壁に見やすいように貼ってある」(これも非常にあっさりしたもの)
「利用頻度が増えてからは2台に増車した」
「管理人は基本的にはノータッチ」

というシステムです。

スラム&犯罪多発地帯である、当マンションですが、これでなんとかうまく運営できています。

さて、上記の理事長のマンションでは、「管理」に関してうるさい役員がいたそうで、その人がいろいろといちゃもんをつけた結果、以下のようなものになってしまいました。

「台車は管理員室の中に保管」
「使用するには予約が必要」
「管理人が勤務している時間に、管理人の立会いのもと借りて、返さないといけない」(つまり、夜間や早朝、土日祝日は使えない。昼休みもだめ)
「管理人が利用記録ノートを作成し、そこに毎回記録をつけないといけない」
「使用方法に関する規則がごちゃごちゃとあり、気軽に借りられない」

はっきり言わせてもらうと、「アホか!」って思います。
そして、案の定、「ほとんど誰も使わない」「住民は影でこそこそ、”ここの管理組合はバカじゃないの?”と批判している」という状態です。

なんかこれって、「目黒のサンマ」みたいな話で。「殿様に、そんな油の乗ったサンマは食べさせられない」と、油抜きしたパサパサのまずいサンマを食べさせたようなもんです。

この「イチャモン役員」が一番強調したのが「もし、盗まれたら、どうするんだ? 誰が責任をとるんだ!」ってことらしく。この意見のために、「厳重に管理する」「管理人に管理責任を押し付ける」システムになってしまったようです。
管理人にしたら、「もともとの委託契約にない仕事を無理やり無報酬で押し付けられた」ってことですから、積極的に「貸し出し」をするわけでもなく、そういう「嫌々」「渋々」という心理が顔に出てしまい、それを見ると、借りたい住民も、気持ちよく借りることができず・・・

まあ、当然の結果です。

共用台車制度を始める際に、おそらく、どこの管理組合も
「もし、盗まれたらどうするんだ?」って心配すると思います。でも、ここは発想の転換が必要なんだと思います。
うちの場合、「防犯カメラのまん前に台車を置く」「台車には、盗むのが恥ずかしくなるような、非常に目立つ、**マンションと大きな文字で名前を書く。くまもんのイラストのステッカーを貼る」などの防犯対策をしましたが、
基本的には、「必ず盗まれるものだろう」という予測でいました。
「盗まれたらどうするの?」ではなく「きっと盗まれる」という思想なのです。

ですから、「1年に1回は新しいものを買いなおすことになりますよ」って、最初に言っておきました。当然、お金はかかりますが、そのお金以上の効果を住民にもたらすものですし、常に新品同様のきれいな台車が使えるわけですから、気持ちもいいものです。そういう考えですから、「盗まれたらどうするんだ?」「そのときは誰が責任を負うんだ」「新しいものを買うにはお金がかかるんだぞ」という、意見や心配は一蹴しました。
「誰の責任でもない。悪いのは盗んだ奴」「盗まれたら、また、新しいものを買えばいい」って考えです。こうすると気が楽でしょ?

また、「管理人は基本的には関与しない」ということにしました。マンションの管理組合って、なにか新しいことを始めると、すぐに「それは管理会社にやらせよう」って思いますが、委託費の増額をしないくせに、仕事を増やすなんてのは、契約違反です。「セルフサービスのフードコート」で、「よお、姉ちゃん、ここまで料理を持ってこい」なんて言えないでしょ? そういうのをわかっていないマンションが大杉勝男です。まあ、もちろん、私は、玄関ホールを通るたびに、「台車はあるかな?」ってのは見てますが、「盗まれたって、それは管理人の責任じゃないよ」って言えますから、精神的負担が全然違います。

ただ、「貸し出し用だから、安物でいいだろう」「すぐに盗まれるんだから安物でいいだろう?」という考えはよくないです。
3000円程度で買える「中国製の粗悪な安物」を買うと、あとで後悔します。やっぱり、安物は動かしにくいし、すぐに壊れます。(ベアリングとか全然違うんだよなあ) 国産の高級品(1万円程度以上)を買うべきです。そして、角部分の保護カバーがしっかりついているものを選びましょう。ぶつかった際のクッションになり、壁を傷つけにくくなります。それでも、素人が操作すると傷つけたりぶつけたりするので、私のほうで、クッション材料を別に購入し、角部分に取り付けています。

さて、
「盗難」に関して、実際にどうだったか? というと。この制度が始まって5年間に、一度だけ盗まれたことがありました。野球帽を深々とかぶった人が防犯カメラ映像に記録されていました。
この時は、台車が1台しかなかった時期で、盗まれると、他の人が使えなくなって困ったため、「盗んだ人、返してください」と貼紙をして、返却を待っていました。結局、おそらく、外部の人間の犯行だったのでしょう、戻っては来なかったのですが、「怪我の功名」といいますか、「なくなったんだったら、うちの会社で使わなくなったものを寄付しようか? 古いけど」っていう人がいっぺんに3人も出現し。
「1台盗まれたら、3台になって帰ってきた」ということが起きまして。「ここの住民もまんざらじゃねえな」と感心したものです。まあ、残念ながら、どれも古いものだったので、その後すぐに使えなくなりましたが(タイヤが減るんです)、とにかく、こういう精神的にいいものは、うれしいです。というわけで、当初「1年に1台は買い換える」くらいの予想でいましたが、結局「5年間で2台買い換えた」って結果になり、「すごいすごい、優秀じゃないか」ってことになりました。
まあ、「盗まれたらどうするんだ?」って心配する人にとっては、「2台も買い換えたのか、だめじゃないか」って非難されるかもしれませんが、「5年で5台」のつもりでいた当マンション管理組合では、「良かった良かった」と喜ぶ事態なのです。3万円の出費で、10万円くらいの効果はもたらしている、と私は思います。


マンションを来訪する部外者の人には、「犯罪多発地域の町で、オートロックでもないマンションで、こんなふうに自由に台車が使えるなんて、すごいですね」と感心されますし、住民の皆さんからも「ほんと、これは便利で助かります」って言われてます。多少お金がかかっても、みんなが喜ぶのが一番じゃないですか? 私はそう思います。

「発想の転換」  大事だと思います。ご参考まで。






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