管理人は超つらいよ   
マンション管理最前線

専門用語 業界用語 にふりまわされる管理人






  2016/11




私、高校の時、演劇部だったので、その時の覚え方で、「トンカチ」のことを、いまだに「ナグリ」と言ってしまいます。

それから、今は一般の人でもよく使う、
「見切れる」という言葉。これね、不思議なことに、演劇用語としての「見切れる」は、本来は「舞台の袖に隠れていて、客席からは見えないようにしないといけないのに、立つ場所が悪くて、客席から見えてしまう」という状況で使う言葉であり、要するに「余計なものが見えてしまう」という意味なんですが、今、一般の人が使うのは、「集合写真を撮ったときに、本当は全員を写したいのに、レンズが広角じゃなかったので、両端の人が写真に入らなかった」(=左右が切れてしまった)という用法で使われています。
「切れる」という言葉を素直に解釈すると、後者の考え方が合理的かもしれませんが、とにかく「業界用語」として考えた場合、これは誤用です。完全に正反対の意味で使われているので、正しい意味を知っている人間からすると「どっちなんだよ??」と頭がおかしくなるので、私自身は「見切れる」という言葉は使わないようにしています。管理人をやっていると「防犯カメラの映像の確認」とかをするのですが、一般人である「管理組合役員」が、映像を見ながら、「惜しいなあ、ここ、見切れてるなあ」とか言うのでほんと困るんです。素人が業界用語なんか使わないで欲しいです。(こういうのって、とんねるずのせいだと思う)

それから、鉄道業界では、電車の上に張ってある電線のことを「架線」と言いますが、これの「正式な発音」はもちろん「かせん」なんですが、架線は鉄道にとって非常に重要なもののため、「下線」とか「仮線」なんかと混同しないよう、わざと
「がせん」と呼んでいます。これも素人には理解しにくい言葉だと思います。

それから、自衛隊では時刻の呼び方が特殊です。
「13時02分」のことを
「ひとさんまるふた」と呼びます。1,2,3,4~0 を ひと ふた さん よん ご ろく なな はち きゅう まる と発音するのです。昔の会社で、そこの警備員をやっている人が自衛隊の退職者だったのですが、この人が時刻を言う際に、この言い方でするので、最初戸惑ったことがあります。長年、そういう呼称でやっていたので、再就職先でもつい口にでてしまったのでしょうね。
これは、「イチ」と「シチ」を混同する可能性がある、とか 「キュウ」と「ジュウ」を間違えるとか、言葉の間違いが命に直結する軍隊という場では、「勘違いを防ぐ」ために、大事なことなんだと思います。

次に、管理人業務に少し関連する分野の話ですが、防火管理の資格を取る際に勉強したときに教えてもらったのですが。
消防関係でよく使われる用語に「権原者」という言葉があります。これは法律用語で、正確な読み方は「けんげんしゃ」なんですが、「権限者」と区別するために、わざと、「けんばらしゃ」と読むのです。マンションでは「防火管理者」を置かないといけないし、「防災訓練」とかをしますから、理事長とか防火管理者の人が消防署に出向いて、手続きしたり、相談したりなんてことがあると思いますが、消防署の人間は、「一般人はそんなことは知らない」というのを理解せずに、おかまいなしに、「かんりけんばらしゃは・・・」なんてことを言います。耳で聞くだけではまったく理解できないと思いますが、そういうことなので、理解してください。



それから、大規模修繕工事なんかの「工事関係」でよく使われのるが、「たけかん」「さらかん」です。嵐寛十郎のことを「アラカン」と呼ぶのは知ってましたが、「さらかん」なんてのは初耳で、「回転寿司に関係する言葉か?」なんて思ってしまいますが、実は違います。

「管理」を「たけかん」
「監理」を「さらかん」


と、それぞれの漢字の部位を抜き取って、このように区別して言うのです。「川」のことを「さんぼんがわ」と呼ぶのと同じ発想です。
「管理」と「監理」って、一般的には、ほぼ似たような意味の言葉ですが、建築工事などでは、はっきりと意味合いの異なる用語(詳細はこのHPでご確認下さい)となるため、現場(文書など見ずに、口からの言葉だけで意思疎通する場面)で間違わないように、このように「言い分け」をしているのです。
私も、大規模修繕工事に立ち会った際に、「さらかんさんは、そう言うけどね」なんて話を聞かされて、さっぱり意味がわかりませんでした。

ついでに蛇足ですが、マンションの管理組合の理事会の中の役職で「監事」というのがありますが、この役職に立候補した人が、「監事」というのを「幹事」だと思っていて、それも、「定期総会のあとで役員が集まって、お疲れ様の飲み会をする際の幹事役」だと思い込んでいて、「俺、いい居酒屋知ってるから、かんじやるよ」って手を上げたそうです。うちのマンションの住民の民度ってすごいです。

さて、長大な枕になりましたが、ここからが本題。
来月行なわれる、ちょっとした大きな工事に関して、元請業者ではなく、実際に工事をする「下請け業者」の現場監督さんが、当マンションにやってきて、「休憩スペースはどうする」「喫煙所はどうする」「トイレはどうする」「資材の積み下ろしはどこでやろう」といった、実務面での細かな打ち合わせをしたのですが、その時に、「少しは役員も働けよ」と思って、ちょうどその時に暇そうに、共用部分の植栽部分に私物の花を植えようとしていた「副理事長」を見つけて、「大事なことなんで、副理事長もつきあってくださいよ」と無理やりいっしょに、現場監督の話につきあわせました。
そういうわけで、私と副理事長の二人で、現場監督の話を聞いたわけですが、ここでも、専門用語が出てきました。守秘義務の関係で、その言葉をここに書くことができませんが、その「専門用語」というのは、「ごくごく一般的に使われている言葉ではあるが、建設業界の中でだけは、その言葉は、一般のものとは全然違う別の意味のものとして使われている」という言葉でして。(ややこしくてすいません)
つまり、私も副理事長も、その言葉を知っていて、「ああ、それね」と、すぐ理解できるような平易な言葉なんですが、話を進めていくと、その言葉の持つ意味に整合性がなく、「この現場監督、なんで、そんな変なこと言うんだ?」と不思議に思ってしまったわけです。

(わかりやすくたとえ話をすると、関東で言う「たぬきそば」は、おそばの上にテンカスが乗っている食べ物だが、関西で言う「たぬきそば」は、そばの上に油揚げが乗っている食べ物になる。これと似たようなシチュエーションで、私と副理事長は「関東のたぬきそば」のつもりで聞いているのに、その現場監督が、「関西のたぬきそば」の話をしていて、我々としては「たぬきそばの話なのに、この人は、油揚げの品質のことに関して熱弁をふるっているのはなぜなんだ?」とポカーンとしてしまったわけです)

実は、この誤解が解けるまでに、1時間以上の時間が経過していて、その間、私と副理事長は、「なんか変だなあ」と、ずっと腑に落ちない、気持ち悪い状態でいました。

現場監督のほうとしては、業界人として当たり前の用語を使っていただけの話で、私らがその言葉を理解できないことを彼は理解できないわけでして。最終的には、両者とも、「あ、そうなんですね」と理解できて、そのあとは、「監督さん、悪いけど、その言葉を一般の人相手に使うと、その人は確実に誤解するから、それは使わないでくれますか?」とお願いしたのですが、「はい、わかりました。使いません」と約束してくれたんですが、長年の習慣のせいか、その後も、自然と口から出てきてしまい、その後の会話もややこしく。

専門家が、その業界の専門用語を使うのは理解できますが、相手がど素人の場合は、専門用語は封印して、誰にでも理解できる言葉で説明して欲しいと思います。でも、そういう配慮のできる人、って、いないのよねえ。困ったもんだ。







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