管理人は超つらいよ   
マンション管理最前線 部屋番号7704

「管理組合専用のポスト」はありますか?




2017/5


(この問題は過去にブログで何度か書いてますが、今回、最新情報を加え、それをまとめてみます)

そのマンションの管理の「良し悪し」を見分ける方法として、「ゴミ置き場を見ればわかる」とか「掲示板を見ればわかる」とか「共用廊下を見ればわかる」・・・・など、いろいろな方法がありますが、もっとシンプルに容易に判別できる方法があります。

それは。
玄関ホールの「集合ポスト」に、「管理組合専用ポスト」があるかどうか? という点です。具体的に言うと、「管理組合専用」のものと「管理人室(=管理会社)専用」のポストが分離独立しているかどうか? ということです。これが非常に大事なのです。


他の人のブログですが、こんな記事がありました。

「理事長あてのラブレターは届かない」

これを読むとちょっと驚く人もいるでしょうが、概ね事実です。

私は、こういうサイトをやっているため、いろいろな理事長さんから「管理組合運営の改善」に関する相談を受けますが、「改善が必要なマンション」というのは、「ポストがひとつしかない」ところが多いです。なので、私がまず提案するのは、「ポストを分離独立させて、管理組合のポストは管理組合で管理すべき」ということです。

こういう「設備」の問題というのは、「見ればわかる」というものなので、初心者の方にもわかりやすいと思います。マンションの竣工時に、「管理組合用」もしくは「管理員室」というように、居住者以外のポストが「一個しかない」という集合ポストになっている場合、これは設計時から、その分譲会社が「いい加減」ってことです。そういう分譲会社の物件は買わないほうがいいと私は思います。特に「管理員室用」が一個あるだけで、「管理組合用」がないというのは、分譲会社自身が、「管理組合を無視している」ことですから、より悪質な分譲会社であると言えるでしょう。

でもって、一個しかない集合ポストが、竣工後、何年か経過しても、ずっとそのままであるとしたら、管理会社も、管理組合もいい加減ということになります。「分離独立させないといけない」ということを理解していないわけですから。

独立

さて、
「なぜ、分離独立させないといけないのか?」ってことですが。古めのマンションで、一番よく見かける「管理員室用ポスト一個しかないマンション」を例にご説明しましょう。

「管理員室ポスト」一個しかない場合、そこに入ってくる郵便物や書類は、「管理人あて」「管理会社あて」「管理組合あて」が全部混ざって入ってきます。そして、その郵便物や書類を事実上管理するのは「管理人」ということになります。ということは、ここで、「管理人視点」による取捨選択が行なわれます。
「宅配弁当のメニュー」「新築マンションのチラシ」などの類は捨てられます。これは問題ないです。「管理組合あての電気料金明細」など、これは、管理会社の経理のほうへまわします。まあ、これも問題ないでしょう。
さて、もし、住民が「管理人や管理会社への苦情」を手紙に書いて、「本当は管理組合専用ポストがあれば、そこに投函したいけど、それがないから管理員室ポストに投函した」という場合、管理会社に都合の悪い内容のものはそこで廃棄される可能性が高いです。つまりは「検閲される」ということです。「あの管理人はろくに挨拶もしないで、おまけに居眠りばかりしている」なんていう投書は即捨てられ、管理会社にも管理組合にもその内容は伝わりません。
管理会社の中には、「うちは良心的な会社」であることを証明するために、「毎年1回 居住者の皆さんから管理会社の評価を聞くアンケートを実施しています」なんていうところもありますが、この投函先が「管理員室ポスト」だとしたら、管理会社に都合の悪い辛らつな批判が書いてある回答票などは廃棄されることもあるでしょう。

「そんなことが許されるの?」って思う人もいるでしょう。実際、あとで「管理人が捨てたのではないか?」と問題になる場合もあります。しかし、「差出人が匿名」の場合、「匿名のものは信憑性が低いので採用できませんから、廃棄しました」という弁解が可能です。今は、「自分が書いたとばれて復讐されるのが怖い」ということで、特に「住民同士の争い」のような案件は、ほとんどが匿名です。ですから、管理人側からしたら、「匿名のもので、管理会社側に都合の悪いものは捨てる。面倒な仕事になりそうなものは捨てる」というふうにしている場合は多いです。

「いつも来ている雑排水管洗浄の業者は態度が悪いので 、私の知人の業者を紹介しますから、そこを採用してください」なんていうのも廃棄されるかもしれません。
「大規模修繕工事の営業のパンフ」なんか、管理会社としては、自分のところの関連企業に発注することが決まっている場合、「ライバル会社の情報なんか組合さんに与えるわけにはいかない」ということですから、これも捨てます。
「安価な高速インターネット設備」の会社のパンフなんかも、「もう、すでにインターネット環境を構築してるんだから、そこに余計なことをして欲しくない。変更なんかになったら面倒でかなわん」ってことで捨てます。
「マンション管理セミナー参加理事長募集」なんていうDMもよく来ますが、これは純然たる「講習」であれば、「理事長に参加してもらってちゃんとした知識を身につけて欲しい」と思いますが、「セミナー」という名目でも、実際は、「G人社」とか、管理会社が「自分のところに変えてくださいね」っていう「営業」の隠れ蓑でやっているセミナーなので、これも捨てます。

また、「管理会社のリプレイスを考えていて、それを秘密裏に実行に移そうとしている場合」、ポストが「管理員室用」しかないと、理事長宛の秘密の書類も、管理人の目に触れることになります。こういうのは、たとえ、開封して中身を見なくても、封筒表面だけみれば、「あれ、四井不動産管理から手紙が来ている。おかしいなあ、もしかして、今期の理事長はリプレイスを検討しているのかも?」とすぐにばれます。ばれた情報が管理会社に伝わり、管理会社側は「リプレイス阻止」の行動をうってくるでしょう。
(リプレイス関係の郵便は、理事長個人宛にしないとだめです)

要するに、「検閲」されて、「情報は筒抜け」、「管理会社に不利になるような手紙、管理会社の仕事が増えるような内容は管理組合へ渡る前に捨てられてしまう」ってことなのです。(現在TBSで放送中の「小さな巨人」みたなことが起きるわけです)

これは「管理員室用専用」という表記ではなく、「管理組合用しかない」というものでも同じです。「管理組合用」と言っても、実際のそのポストの管理は、「管理員」がやってますから、上記と同じで、管理員による取捨選択が行なわれます。

こういうポストは、定期総会の際の「議決権行使書」や「出欠票」の投函先にもなります。もし、その総会で「管理会社のリプレイス」が議案として含まれる場合、管理員は管理会社の手先として、その議決権行使書の内容の検閲もするでしょう。「現行の管理会社を切り捨てることに賛成です」という意見の行使書を捨てることまでするかもしれません。

こういう「思惑がらみ」「意図的」だけではなく、「管理人一人で整理する」ということで、ダブルチェックはできないわけですから、「ケアレスミス」も起き易いです。大事な手紙なのに、その他の不要チラシといっしょに、間違えて捨ててしまうことも発生します。管理人はそんなに事務管理能力は高くないですから、こういう大事な業務を「管理人一人だけ」に任せてはいけないのです。

では、どうするのが理想でしょうか?


2個

まずは「設備」として、「管理組合専用」と「管理員室専用」の2個のポストを用意します。「空いているものなんかないよ。足らないよ」という場合、「管理員室用」のポストは、管理員室前のカウンター上に別個設置するなどしましょう。
なお、「管理組合」と「管理員」の区別すらできない住民が多いですから、できれば、混同を避けるために、この2つは離れたところに設置できることが望ましいです。それが無理で、2つが並んでしまう場合は、「総会の出欠票はここに入れてください」とか、ポストの表面に個々の説明書きを加えたいです。

それから、その「管理」なのですが、それぞれ鍵をかけ、”「管理組合専用ポスト」を管理人が開けることはできない”というようにしたいです。これは、管理人サイドとしても、「開けられないんですから、管理もできません」という理由付けになります。
リプレイス検討中の場合、これは大事な点になります。

それでもって、郵便配達人やメール便の配達の人に、「うちのマンションはそれぞれが独立したポストになっているので、ちゃんと分別してポストに入れてください」という説明をしておきましょう。1個しかないマンションに慣れている配達人は、「管理会社と管理組合の区別ができない」人が多いからです。

さて、肝心の「管理組合専用ポスト」ですが、これは理事会の役員の中で「ポスト管理担当」という役職を作って、その人に管理をしてもらいましょう。基本、毎日見てもらいます。
「理事長がやればいいんじゃないの?」とお考えの人も多いですが、「理事長の仕事量の軽減」を考えると、担当者を決めるほうがいいと思います。これにより、その担当者も、管理組合活動に大きく関わることになり、特に「投書の中身を読む」ことにより、組合のことが理解できてきて、意識もかわってくると思います。なにより、管理組合として、「自分たちのことは自分で行なう。なんでもかんでも管理会社に任せる」という考え方から脱却して欲しいです。
担当者は、毎日、ポストの中身を確認し、「不要なチラシ類はその場で廃棄」「管理会社に任せるものが入ってきた場合は、管理員ポストのほうに移して投函」「理事長に見てもらうものは理事長の個人ポストへ移動」「組合内の各担当役員に見てもらうべきものは、それぞれの担当役員のポストへ」「修繕委員会とか、緑化委員会とか、わんにゃんクラブとか、組合内に別の組織がある場合は、それぞれへ」という感じで振り分けをします。この振り分け作業も、「ちゃんとした知識がないとできないもの」ですから、それ相応の研修が必要な必要なわけでして、そういう学習をすることにより、「優秀な役員」へ成長するわけです。

以上のように、きっちりと「分離独立」させて、かつ、きちんと「独立管理する」ということが大事です。






2017/5