管理人は超つらいよ   
マンション管理最前線 部屋番号7705

共用部の工事の記録、残ってますか?
すぐに見られますか?
どんな部品かわかりますか?





2017/7


よく、「どういう管理会社が、いい管理会社なのでしょうか?」みたいなのが議論されますが、今回は、その「回答」のひとつも紹介しながら、話を進めます。

どこかの国の文科相や国土交通省は、「書類は半年経過したら廃棄します」とか、とんでもないルールを作っているようですが、マンション管理に関しては、「永久に残しておけよ」と私は思っております。

「そんなもの保管しておくスペースはないですよ」と言う人もいるかもしれませんが、今は、デジタル時代。PDF化とか、スキャンでデジタル保管とか・・・・ いろんな方法がありますから、それを使えば、省スペースで「すべての書類のデータを保管することは可能」です。今は、法律も追随しており、総会議事録なども、「電磁的方法で保管したもの」も、従来の紙と同様、有効である、とされています。

さて、「優秀な管理会社とは?」と聞かれて、すぐにお答えしたいものは・・・・ 
「工事の記録」に関することです。

「屋上防水の改修工事はいつやったのか? どういう方法か?」「鉄部塗装はいつやったのか?」「駐車場の線引きをやり直ししたのはいつか?」「実施した工事会社の名前は?」「排水溝のどぶさらいをしたのはいつか?」「給水ポンプの修理はいつしたのか?」「防犯カメラを取り付けたのは何年前か?」などなど、いろいろな大事な情報が、ちゃんとわかるかどうかが大事です。

「過去の工事の記録をすべて残してある」
「パパパと、全体をすべて見ることができる、素人が見てもわかりやすい、一覧表を作ってある」
「その表が、誰でも簡単に取り出せる場所に保管されている」
「その設備本体にも記録されている」


これが大事です。

よく、「ちゃんと記録は残してありますよ」と言う管理会社はありますが、「じゃあ、すぐに教えてくれよ」と管理組合側が質問すると、「本社のほうで保管していますから、本社に戻って調べますので、時間を下さい」とか、「どの書類の中に書かれているかわからないので、来月まで待って下さい」とか、あれこれ言い訳する管理会社がありますが、それじゃあ、だめなんです。

特に、管理会社変更(=リプレイス)なんかすると、「過去の記録ですか? 全部なくなってます」なんていう、すごい事態も発生します。

すぐにわからないとだめなんです。

でもって、こういう、「過去にどういう工事をしたのか知りたい」というのは、マンションの設備が古くなって、あちこち不具合が生じてきて、初めて思うものです。でも、その時に、「今までは記録してませんでしたが、今後はちゃんと記録を残すことにしておきます」ではだめなんです。新築当初から、記録簿を作っておく、「管理会社の、会社としてのシステムをきちんと構築しておくこと」、これが大事なんです。

管理会社として、ちゃんとシステム化しておいて、理事会に出席する「フロント君」が、その「一覧表」を常に携帯し、理事会の席上で役員から、「え〜と、集会室のトイレを、和式から洋式に変えたのはいつだっけ?」という質問がふと出てきた際に、パパッと、その記録簿を見て、「8年前ですね」とすぐに答えられる。これが、「優秀な管理会社」です。
できれば、その洋式トイレのどこかに、小さな文字でもいいので、ステッカーとかテプラみたいなもので、「平成17年 洋式化工事実施」とか記載しておくと、フロントに聞くまでもなく、現物をみれば誰でもわかることができます。
受水槽のポンプの機械も、「平成15年 一斉交換」とか書いておけば、「交換してから今年で14年もたつのか」とすぐにわかります。そういうふうにしておけば、たとえ、「管理人が親戚の不幸で休んだので、代理のヘルプの管理人がやってきている日」であっても、「ポンプは何年前に交換したのか?」がわかります。まあ、「一覧表」がちゃんと用意されていて、それが集会室だけでなく、管理室のデスクの上にも常時保管してあれば、誰でもすぐにわかります。

うちみたいに、「築40年」とかの古いマンションになると、住民もボケてきますので、「玄関ドアを2ロックに変えるのをやったのは、たしか、5年前だったね」「いいえ、10年前です」といった、「いい加減な記憶」ということもいろいろ起きてきます。やはり、正確な日付がわからないとだめです。

なお、その記録簿には、これは素人にはわかりませんが、その品物の「型番」とか「品番」を載せておくと、いろいろと便利です。型番とか品番は、「故障してしまいました。至急、修理をお願いします」と、業者に依頼する際に、必ず聞かれることだからです。

さて、共用部分の工事とか設備の記録に関しては、ちゃんと残している、優秀な管理会社は存在すると思いますが、私が、現場の管理人として思う、「プラスアルファ」があります。
それは、「専有部分内の設備」に関してです。

専有部分内の設備に関しては、本来は、「住民が個人で対応してください」というもので、管理会社の業務範囲外のことなんですが、実際に、マンションにいると、そんなことは言ってられません。

なので、昔、私が赴任した際に、自分で独自に、図面を調べて、「Aタイプの部屋の建設当初に設置されていた給湯器は、パーパスのABC5000という機械」とか、「Bタイプの台所の混合栓蛇口は、INAのTLJ330Z」とか「Cタイプの部屋の浴室の換気扇は、東芝のREZ300A」とか・・・・・ そういう一覧表を作りました。(会社からの指示ではなく、自分で考えてやった、独自のことです)

というのも、そういうのは、「現場に行って、現物を見れば、型番なんかすぐにわかるでしょ?」って思われるかもしれませんが、特に、水道関係のものは、ステッカーに型番が記載されて、それが貼り付けられていることが多く、そういうのは経年劣化で、剥がれてしまう場合が多々あり、「あれ? これ、型番、何番なんだ?」とあわててしまうのです。そういうことを何回か経験したので、「いざという時に慌てないために、あらかじめ、部屋タイプ別、設備の型番一覧表」というのを作ったのです。
(こういうのを、建設当初の管理会社が用意して、管理室に置いておいてくれると、管理人は助かるのになあ)

さて、こういう一覧表は便利で、私も、自分で作って、「いいものを作ったなあ」と自画自賛しておりましたが、こと、専有部分内の設備に関しては、水道の蛇口にしても、給湯器にしても、もう、どこの部屋も、「建設当初のもの」が残っておらず、みなさん、なんらかのリフォーム工事をしているので、今使われている設備は、部屋ごとにバラバラです。給湯器にしても、今は、「当初のパーパス」ではなく、「リンナイ」だったり「ノーリツ」だったり、「ガスター」だったり、いろいろに変わっています。蛇口も、お湯と水道が別々だったのが混合栓に変わっているし、浄水器内蔵のものにしている家庭もあるし、正直、もう、記録は役に立たない状態になっています。

こういう「新しいものに変えた」当初は、もちろん、故障もなく、何の問題もなかったのですが、今は、そういう「新しく交換したもの」が、「そろそろ老朽化してきた」という年代に入っており、あちこちで「**が壊れた。見てくれ」「**が水漏れしてる。修理を頼む」と頼まれても、とにかく、現場に行って、そこを確認しないとなんだかわかりません。しかし、上述のように、「型番が書いてあったシールが剥がれて型番がわからない」「型番がどこに記載されているか不明」ってことも多々あり。しょうがないので、その品物をデジカメで写真に撮り、メーカーさんにその写真を送信し、「ああ、これは、GHHI-9888CXですね。これはもう、サポート期間が終わってしまい、修理もできないんですよ。新しいものに交換して下さい」なんてやりとりをしております。

ほんと、古いマンションの管理人は、超つらいよ。