管理人は超つらいよ   
マンション管理最前線 部屋番号7710

中古マンション購入
見学に行く際は、ぜひ、管理人に話を聞いてください





2018/8


さっき、マンション管理のことで検索をしていたのですが、やっぱり、いまだに「管理に関する情報」というのは少ないです。でもって、欲しかった情報は、どこにあったかというと、「これからマンション購入を考えている人へ」的なサイトがいっぱいあって、その中に発見しました。そう、購入指南の説明の中に「管理に関すること」の項目があったのです。

そういうわけで、「中古マンションを購入する際のポイント」みたいな記事をあれこれ読みましたが、解説する人に「管理人」に対する視点の欠如が多いことに気がつきました。やっぱり、この仕事は、世間の中で理解されていない仕事なんだなと痛感します。

さて、当マンションでも、今現在、「2部屋」が売りに出されています。昔は、売りに出されると、すぐに買い手が決まったもんですが、今は、不況という面もあり、なかなか契約にいたりません。特に、当地域のことをよく理解していない、東京の業者が仲介を取り扱うと、世間相場とはかけ離れた無理な価格設定をすることがあり、そうなると、簡単には売れません。さらに、うちのような古いマンションでは、売却の際に、ほぼ100%の率で、大掛かりな「リノベーション」(=大規模リフォーム)が行なわれます。これによる売却価格の上昇がものすごいので、築40年以上の老朽化マンションなのに、「もうちょっと足せば、近くの新築が買えるじゃん!」という高額な価格になっており、これじゃあ、売れないのは当たり前です。まして、東京五輪決定後、リノベーション工事の費用も高騰してますし、中間業者のピンハネ金額もすごいんで、びっくりするような価格になってしまうのです。



そうなると、すぐに成約しないため、販売期間が長くなり、見学客の数も増えます。以前なら、「2〜3人見に来れば、そのうちの一人が決める」状態だったのが、今は、「50人見学に来ても決まらない」なんてことが、よくあります。そういうわけで、管理人としては、管理室の前を通過していく「不動産業者の社員&見学客」をたくさん見ていることになります。

こういう人たちって、まともな社会常識があれば、玄関ホールに「ご来訪の方は管理室にお立ち寄り下さい。無断立ち入りは禁止です」と書かれているのですから、管理室に顔を出してから中に入るはずですが。。。 
不動産業界の人間に、まともな社会常識など期待できるわけもなく、「挨拶なしに無断で中に入る人」が9割です。また、販売が長期になると、仲介不動産業者も、最初は三井さんだったのが、住友さんに変わり、長谷工に変わり、無名会社に変わり・・・・ など、めまぐるしく変わるため、当然、営業マンの顔も知らない人ばかりです。名札もIDカードもありませんから、ちょっと見には「不審者数名」というふうに見えるわけで、他の住民からは「怪しい人たちが来て、いろいろ見てるわよ。警備をちゃんとしてよ」とか文句を言われます。(実際、「不動産屋と見学客」を装って、空き巣が下調べすることもあり、警察から「注意してください」と言われています)

そう、不審者対策としても、こういう見学客が無断で入ってくるのは、管理人的に困るのです。また、こういう人はたいてい「車」で来て、目の前の市道に、駐車違反で置いておきます。これも困ります。頭のいい不動産屋は、取締りから逃げるために、わざと、「ボンネットをあけて」「故障中という手書きの紙を貼り」、そうやって違反駐車をすることもあります。「なるほど、うまい考えだなあ」と思いますが、世話焼きの、うちの住民が、「目の前の道路で、車が故障してるわよ。助けてあげなさいよ」と管理室に言いに来たりするので迷惑なんです。

さて、案内をする不動産屋ですが、これも、「今回、この部屋を取り扱うことになった**社の++です」という自己紹介をする人は皆無です。そういう挨拶があれば、「何か知りたい情報とかない? 教えてあげるよ」ってことで、いろいろと詳しく教えてあげられるし、私が作った「@@マンションの概要」という書類を渡すこともできるのですが、挨拶もないくらいですから、そういう対応はできません。でも、あとで、私にではなく、管理会社の本社のほうに、「自転車は何台置けますか?」という質問が電話で来たりします。現地で管理人に聞けばすぐにわかるのにね。アホだね。
そんな状況ですから、不動産屋の持つ当マンションの情報はたいしたことはなく、部屋の中の状況とか、「徒歩何分のところに小学校があるか?」くらいしか、見学客に説明できません。でもね、マンションで生活するってことは、そうじゃないんだと思うのです。

いきなり、読者に質問ですが、

新築マンションと違って、中古マンションの有利なところって何でしょうか?

私は、「すでに人が住んでいること」だと思います。そして、
「上下左右の部屋にどんな人が住んでいるか?」ちょっと調べれば、ある程度のことはわかること、これが有利点だと思います。

いっぽう、新築では、実際に入居が始まらないと、「お隣はどんな人なのか?」わかりません。このため、「いざ新築マンションに住んでみたら、隣室住民がすごく嫌な人で、それが原因で結局引っ越した」なんていう悲劇が起きます。でも、中古マンションであれば、(将来、その住民が出て行く可能性もあるが)「どんな隣人なのか?」わかりますから、そういうトラブルの起きる可能性は低くなります。



こういう「住民に関する情報」を一番持っているのは、そこの管理人です。
「今は、個人情報保護がうるさいから、管理人は何も教えてくれないのでは?」と思う人もいるでしょう。たしかにそういう面はあります。

しかし、ベテランの管理人になると、「このマンションのことをきちんと理解して、納得したうえで入居して欲しい。あとから変な苦情を言わないで欲しい」「入居してから他の住民とトラブルを起こさないで欲しい」ということを考えていて、「そのためには与えられる情報は極限まで与えたい」とも考えており、上手にオブラートにくるんで、法律違反にならないようにうまく教えることが可能です。

それでも杓子定規に「規則だから一切教えられない」という管理人もいるでしょう。こういう場合は、近くの自販機でジュースの1本でも買ってきて、「暑いですねえ。これでもどうぞ」と渡してから(要するにワイロですけど、加計学園の80億円に比べればたいしたもんじゃないです)、聞くという手もあります。

一番最初の「冷やかし」「予備調査」的な見学の時は不要ですが、「ここ、いいなあ、本気で検討しよう」と思った段階の見学では、上下左右の部屋の人となりを知るのは大事だと思います。



※マンション内の騒音問題が議論される際に、よく言われることですが、「誰だか知らない人の騒音はうるさい」「誰だか知っている人の騒音はさほど気にならない」というのがあります。例えば、「自分の真上の部屋にはかわいい小さな子供が2人いて、時々、元気すぎて部屋の中でばたばたしている」ということがわかっている場合、多少の騒音や振動は我慢できるものです。

左右の部屋も大事ですが、漏水事故などの時は、上下の関係がとても大事になり、かつ、上下の場合、距離は近いのに、ふだん、顔を合わせることもほとんどなく、「誰だか全然知らない」ということが多いので、事前に上下の住民の「人となり」を知っておくことが大切です。


そこで一番いい方法は、管理室に行って、「ここに住むことになるかもしれない人間なので、事前に、上下左右の部屋の住民に挨拶がしたい。いきなり行くと不審者扱いされてドアも開けてもらえないと思う。なので、管理人さん、ちょっとつきあってくれないか?」と頼むことです。私だったら、喜んでおつきあいします。面倒がる管理人も多いと思うので、ジュースの2〜3本のお土産はあったほうがいいかもしれません。
管理人がいっしょであれば、それだけで、住民側は「この人は不審者じゃない」っていう判断ができますから、在室していれば、最低でも「インターホンで会話」くらいはしてもらえます。ここで多少の会話をして、ついでに、「どうですか? このマンションって住み易いですか?」とか聞けば、いろんな情報も手に入るでしょうし、その住民のある程度の人格も把握できます。管理人が「個人情報だからだめ」と断った、「職業」とかも聞けるかもしれません。

こうすれば「あんな人が隣室なのか。気持ち悪いなあ、このマンションやめておこう」と思うかもしれないし、「意外といい人だったな。これならいいかも」と購入を決めるかもしれません。いずれにしろ、正しい判断がしやすくなるような「材料」を得ることができるわけですし、事前に顔見知りになっておけば、実際に住んでからもなにかといいことがあります。

「土日の、休日しか見学に行けない」という人もいます。それでも、平日に、電話で管理人に話を聞くこともできるでしょうし、電話で「管理人さん、明日の土曜日にそちらにうかがって、隣室の住民に挨拶をしにいきたいんですがいいですか?」と断っておけば、「だめです」という管理人もいないでしょうし、管理人に一言通しておけば、実際に訪問する際に、「管理人の前川さんに許可を取ってあります」(固有名詞を加えることがポイント。これで信用度がアップする)という口実で、ドアを開けてもらえるかもしれません。(住民サイドとしては万一に備えて、チェーンは必要) 私だったら、「籠池さん、明日ね、明恵さんという人が来るかもしれませんから、話相手になってあげてください」と声をかけておきます。
(これも、防犯対策として、事前に、不動産業から管理員への挨拶が必要です。不動産屋からの情報なしで、いきなり、「見学客です」と言われても、私は信用できません)


なお、管理人サイドの裏事情ですが、その見学客がひどそうな人で「うわあ、こんな人にこのマンションに来て欲しくないなあ」と思ったときは、引率の不動産屋には悪いですが、良いことは言わず、「ここは治安が悪くてね。この前も近くで強盗があったし、ひったくりもあったし・・・・」的な、「追い払い策」を講じる場合もあります。ひどい話ですが、ろくでもない住民がやってくると、管理人はものすごく大変なので、ご理解下さい。