管理人は超つらいよ   
マンション管理最前線 部屋番号7801

居住者の「管理組合への参加意識」
それをどう高めるか? 意外に簡単な方法があります
小さなことからコツコツと  「寄付を募る」





2017/9


これを読んでいる人は、「管理組合理事長」とか「管理会社の人間」とか、そういう人が多いと思いますが、ここに来ているということは、そこの管理組合にはなんらかの問題を抱えていることだと思います。

「管理組合の役員が全然何もしない」
「組合員が管理組合にまったく関心を持たない」

といったことに悩んでいるところは多いと思います。


心ある管理組合では「コミュニティ活動」に力を入れて、「夏祭り」「クリスマスパーティ」「御餅つき」「防災訓練」「マンション内設備探検クルーズ」・・・・ いろんなことをやって、理想的な管理組合を構築しているところもありますが、これもなかなか簡単にはいきません。

「花好きが集まって自主クラブを作った」なんてところもありますが、「俺がリーダーになる」「あいつがリーダーじゃ、嫌だ」といった権力争いや、「必要経費は管理組合に請求しよう」「いや、こういうのは持ち出しでやるものだ!」なんていう費用負担に関わるいざこざなんかもあります。そう、「組織」というのは難しいのです。

「雑草が目立つんで、みんなで草刈をしましょう」と、人を集めたものの、「え? 報酬は出ないのか? だったら、そう書けよ」とか「飲み物くらい出すのが道理だろ」「なんで全員参加じゃないんだ、ずるいだろ!」とか、これもいろいろと問題が起きたりします。 

そして、こういうので一回失敗すると、それに関わった人は「もう二度とやりたくない。あたしは無料奉仕で、あんなに一生懸命がんばったのに」とヘソを曲げてしまうことが多いです。

この原稿を書いている今日(17/9/28)は日本の政治の仕組みがものすごい変革(民進党が小池ナチス党に吸収)をしていて、「何を信じたらいいんだ?」って頭が混乱しているくらいなんですが、政治家もこんな有様ですから、マンション内のコミュニティだって、いろいろな人がいて、大混乱したりするものです。

でも、そうやって、「もうやりたくない」っていう「無関心層」(選挙に行かない有権者みたいなもん)を増やすと、管理組合は確実に悪い方向へ向かいます。そう、「スラム化」です。

でも、世の中の人は実は「私もなにかやりたい」「お金なんかいらない。少しは世の中に役に立ちたい」と考えている人が潜在的にけっこういるもんなんです。
管理組合活動というと、どうしても、「その期の役員だけが働いて、非役員の一般組合員は何もしなくていい」とか思いがちですが、その考えを切り替えて、役員かどうか関係なく、活動したい人を上手に使うことが大事だったりします。

「じゃあ、具体的に言えよ」って思うかもしれません。具体的に言います。


「誰か、雑巾を寄付してくれませんか? 清掃作業でたくさん使うんです」


このレベルの話です。簡単でしょ?
くだらないことのように思うかもしれませんが、雑巾なんていうものは我々清掃作業に関わる者にとって、何枚あってもいいものです。もちろん、基本的には「管理会社が備品として購入」「管理組合が購入して清掃員に支給」(これは管理委託契約書の中に、「備品購入の負担」のことがどう書いてあるかで異なります)というのが普通ですが、現場の人間からすると、「会社が不景気で諸手当もカットしている状況で、会社の負担になる雑巾購入をあまりしたくない」とか、「組合さんに許可をもらって購入するのは手続き的に面倒で、いやな気持ちになる」なんてことがあり、じゃかすか好きなように使えるものではなく、どうしても不足がちになるのです。
そこで居住者から寄付してもらいます。寄付ですから無料であり、その分の経費節減になります。住民側からすると、「無駄なものを断捨離できた」「管理組合のために何かをいいことをした優越感にひたれる」「なんか、社会参加した気分になれる」というもので、一石三鳥の効果があります。
なんか、ちょっとでも、管理組合に参加した気になれば、その人は次から、「もうちょっと掲示板をちゃんと見ようかしら」と思うかもしれません。

「お歳暮やお中元でもらった缶詰や保存食品で、自分は嫌いだからこれはいらないというものはありませんか? 管理組合の防災倉庫に入れて、非常用食料にします」



こういうのも、廃品利用みたいなもので、元手はゼロだし、管理組合が高価なお金を支出する必要がなくなるし、「寄付したぜ!」って満足感が大きいでしょう。そして、防災訓練などで、備蓄倉庫の見学をした時に、自分の寄付した缶詰がそこにあれば、「これ見てよ、これ、うちで寄付したんだよ」って自慢できます。

逆に、

「防災備蓄倉庫に保管してある食料が、まもなく消費期限が切れそうなので、どなたかもらっていただけませんか?」
という手もあります。
これって、管理がいい加減で、期限切れになってしまい、しかたなく「捨てるしかない」ってことがよく起きますが、期限ギリギリの時点で「もらってください」と展示とかすれば、すぐになくなります。なお、この時のポイントは、「ご自由にお持ち帰り下さい」という文調ではなく、あくまでも「(困っているので)もらってくれませんか? (助けてください」という感じで「お願いする」ということです。人間、誰かにお願いされるのは悪い気持ちではないです。そして、できれば、展示して勝手に持って行ってもらうのではなく、管理人室の中に置いておいて、管理人と、対面で、「じゃあ、これをもらっていきます」として、管理人は、その際に、「もらっていただき、ありがとうございます」とお礼を述べることです。感謝されるってのは気持ちいいことですから。

こうやって考えると、「集会室や管理室に貼る、カレンダーが必要なので、誰か寄付してくれませんか?」ってのもありだし、事務仕事でなにかと使う「クリアファイル」を寄付してもらうのもありだし、いろいろと考え付くと思うのです。

ポイントは、
◆「寄付をして下さい」と、「管理組合理事長」が「居住者」に対して、お願いをする立場関係で文を書くこと
◆寄付をもらったら、たとえ、それが使い物にならないもので、即ゴミ箱直行であったとしても、「ありがとうございます。助かります」と言って受け取ること。
◆「募集期間」が終了したら、必ず、理事長名で「お礼の挨拶」を掲示板に貼りだす事です。(お祭りの寄付なんかも、神社の境内に、その金額と氏名を貼り出すから、みんなお互いに張り合って寄付するのです。)

これ、実際にやってみると、意外と効果ありますよ。スラム化マンションであったとしても、「良心のある人」は2割くらいはいますから。


「即効性」や「劇的な効果」というのを期待してはいけない方法ですが、じわじわと効果の出る方法だと思います。良かったら、お試し下さい。