管理人は超つらいよ   
マンション管理最前線 部屋番号7805

大規模修繕工事の闇の世界
コンサルだけじゃないよ、悪いのは 





2017/10


マンション管理組合コンサルタント 須藤桂一さんという、頭はいいけど、頭が薄い人がいて、建築士さんだから、マンションの大規模修繕工事とか詳しくて、https://ameblo.jp/cipslim/ 私もこのブログを見て勉強させてもらっています。

さて、最近のマンション管理業界で騒がしいのは、「大規模修繕工事にハイエナのように群がる、悪徳コンサルタント」のことで、いろんなところで取り上げられ、17/10/19夜のNHK「クローズアップ現代プラス」でも放送されました。

まあ、皆さん、商売ですから、お金のためにはなんでもするんでしょう。今の世の中、悪人ばかりですしね。

今、話題になっているのは「仲介役になるコンサルタントがいろいろと悪さをする」ということですが、管理会社が主体になって実施する大規模修繕工事でも、こういう「不適切なこと」が行われているっていうのをご紹介します。

そのマンションでは、大規模修繕工事を実施するにあたり、「管理組合で一から全部やりとげる気持ち」はさらさらないので、他の一般的なマンションと同様に、「管理会社さん、よろしく」ってことになり、管理会社に任せました。

ただ、「実際に工事を任せる施工業者の選定には口を出すよ」という方針で、「管理会社が推薦する業者」や「役員の中から紹介された業者」とかいろいろ出て、それで、その中から選ばれたわけですが、この管理会社は、不正をするような会社ではないため、ここまでの経緯では、比較的まともにちゃんとした選考が行われました。

そうやって、実質上中心となって工事を行なう「施工業者」が選抜されました。この選考過程は、そこの管理人さんもずっと見ていて、営業の人間と話をしていても、「なかなか、いい会社じゃないかな?」という印象を持ったそうです。その管理人さんが重要視していたのは、「住民向けの案内に、どのような文書を作成するのか?」という点だったのですが、「うちではこういう文書を配布&貼り出します」という「見本帳」みたいなのがあって、その中の文書は「イラスト多用でわかりやすい」「専門用語が少なく、住民にもわかりやすい平易な用語が使われている」「準備段階の細かなことも丁寧に告知している」というもので、彼はこれにすっかり騙されて、「こういう文書を作れる会社なら問題ない」と、この会社の選定に賛成してしまいました。




さて、管理組合の年次総会で、「この会社に任せて大規模修繕工事をする」ということが可決された日の翌日月曜日のこと、そこの管理会社の社長がマンションを訪れ、その時には、その施工会社の社長もいっしょで、「今から、工事の安全祈願を行なうから、君もつきあいなさい」と命令され、まだ、勤務中なのに、車に乗せられ、その管理人さんは連れ去られてしまいました。そして、行った先は、なんかちょっと高級な料亭でした。
そこには、管理会社の社長を始めとする幹部連中、そして担当フロントと管理人、反対側には、施工会社の社長以下社員の面々、全部で20人くらいでしょうか? それと、この工事の「全体的な監理」をする役目の、管理会社の中の有資格者である「Aさん」もいました。

「安全祈願」ということでしたが、実際はただの「宴会」でした。管理人さんは、勤務時間中に、マンションを離れ、お酒を飲んでしまいました。「社長、まずいですよ、こんなの」と断りましたが、社長は「固いことをいうな」「業務命令だ」と彼を脅しました。そして、「この場は、施工会社さんが全部持つんだから、遠慮なんかしなくていいんだ。飲め飲め!」とも言いました。

まあ、彼も今までそれなりに会社員生活をやってきましたので、「接待」の経験もありますが、まさか、管理人やってて接待を受けるとか思いませんでした。

そんなこともあって、実際の大規模修繕工事が開始されたわけですが・・・・

ちょっと驚いたのは、その「監理役」である、管理会社側の社員である「Aさん」の待遇です。




大規模修繕工事では、マンションの敷地内に、プレハブで現場事務所を作ります。そこは300世帯超の大きなマンションなので、敷地に余裕があり、わりと大きなもの(2階建てです)を設置できますが、とはいえ、そこはあくまでも「仮設の建物」であり、そんなに豪華なものは作れません。
それなのに、Aさんのために、2階の一部を区切って、なんと、
「個室」が用意されました。ここは、「エアコン完備」で「立派な机と椅子(ふんぞりかえれるやつ)」もありました。FAXもありました。ソファもありました。更衣用ロッカーもありました。そして、Aさん専用の携帯電話も施工会社から渡されました。(管理会社が支給したのではなく、施工会社です) テレビもありました。ネットに接続したPCもありました。
なんか、すごい待遇だと思いませんか? それに、これはあとでわかったことですが、このAさんには、工事期間中、「Aさん専用特注豪華弁当」が毎日、無料で支給されていたそうです。また、週に1回程度は、飲み会もあったらしいです。



ちなみに、そこの管理人さんに対しては、なんの接遇もありません。タオルを3本もらっただけだそうです。普通、たまに缶コーヒーとかくれるもんですが、それもなかったそうです。

さて、Aさんの役割は、「発注者側である管理会社の人間」として、施工会社の仕事の様子を常駐で監視する仕事です。つまり、「そこはだめだろ、ちゃんとやれ!」ってことを言わないといけないわけです。

しかし、こんな「特別待遇」を受けたら、人間というのはどうなるでしょうか? 皆さん、当然わかりますよね。そう、Aさんは何の監視もせず、毎日、自分の個室でテレビを見て、ソファで寝そべっているだけ。PCでオンラインゲームして遊んでいたり・・・・・
いちおう、時々、現場を見回りますが、特に口を出すわけでもなく・・・・

なるほど〜 このための接待かあ・・・・

さて、そんな仕事が続くと、その管理人さん(設備関係は素人)から見ても、「それ、手抜きだろう?」とか、「そういうやり方は住民の生活に支障が出る。やめてほしい」といった不具合もたくさん生じるわけでして。本来なら、現場のことを一番よく知っている管理人の意見を、Aさんは聞いて、それをもとに、施工会社に指示や改善命令を出さないといけないわけですが・・・・ Aさんは管理人の意見にはまったく耳を貸さず・・・
(そりゃそうだ、完全に取り込まれてるんだから)

しかし、「明らかに住民に迷惑をかけているもの」とか、「手抜き工事の結果、あとあと困ることがわかっているもの」とかに関しては、管理人は見過ごせないわけで、彼は強硬にAさんに対して、「それじゃだめだ!」と怒鳴りますが、Aさんは完全無視。さらに、施工会社の強面の現場監督が、今までは管理人に対して敬意を持ってニコニコしていたのに、完全に態度が変わり、「Aさんがいいと言ってるんだから、何も問題はないだろ! Aさんがこの工事の責任者なんだぞ! お前みたいな素人は黙って入ろ!」と恫喝してくる始末。

管理人さんは、このことを会社に伝えるも、会社側は現状をろくに調べることもなく、「Aさんが責任者だから」とつっぱね、彼の主張を取り上げません。

このため、「ゴミ収集車がマンションに入ろうとしているのに、工事用車両がそれを邪魔した」なんてことがあり、その日のゴミ収集が行われずに、そのままゴミが放置されるとか、いろんな不具合が続出。でも、管理組合側は、全部管理会社に任せて、自らが監視することはせず、こういう不具合に関心も持たず、「管理人さんの方でなんとかしておいて」でおしまい。
おまけに、実際に工事を始めてから、その施工会社の発案で、「集合ポストも新しいものに変えたほうがいいんじゃないですか?」とか、もともとの案になかったことを言い出して、工事費用をあげようとします。Aさんは、それに加わり、管理人の意見も聞かず、フロントやら理事長に進言し、その工事は実行することに・・・・ そんなわけで、なんやかんや、追加工事が加わり、工事費用も予定よりも随分上昇したそうです。(総会で決めた案と違うことを突然やっていいのでしょうか???)
まあ、たしかに、ボロイ集合ポストを新しくすることは、悪いことではないので、その管理人さんも反対はしなかったそうですが、そのやり方に問題がありました。集合ポストには、各区分所有者が自分で発注して取り付けた「プラスティックのネームプレート」とかがあります。それがついている状態で、住民の意見も聞かずに、突然、勝手に、ポストを取り替えてしまったものだから、「うちのネームプレートはどうしたのよ?」「捨てました」「え? じゃあ、何、新しいポストには、管理組合の方で新しいネームプレートをつけてくれるの?」「いいえ、そういうことはしません」「何なのそれ! ふざけないでよ!」っていう混乱が生じ、その苦情の矢面に立たされた管理人さんは大変だったそうです。

そんなことがあったため、もともとの集合ポストには、約9割は名前がちゃんと表示されていたが、新しく交換したら、名前を出してくれる人は2割しかいなかったそうで。今、そこのマンションの集合ポストは名無しばっかりだそうです。

そうやって、行われた工事ですから、工事終了後の不具合もたくさんあり、ほんと、ろくなもんじゃない、ひどい、大規模修繕工事でした。ただ、その管理人は、工事期間中、通常の「コンパクトデジカメ」だけではなく、「遠くの様子も撮れる望遠レンズのついた一眼レフカメラ」も持ち込んで、とにかく、なんでも写真を撮りましたから、手抜きの証拠もいっぱいありました。それで、やりなおしをたくさんさせました。

そして、そういう「後始末」とか「尻拭い」の時点では、Aさんはいないわけで。何の責任もとらず、おいしい思いだけをして去っていきました。
施工会社側にしたって、あとでやり直しをする手間を考えれば、最初からちゃんとやればいいのにね。

こういう、現実の事例があります。みなさんも注意して下さい。とにかく、「他人に任せっきり」というのが一番悪いです。管理組合側も、きちんと毎日監視しないとだめです。いくら、超優秀な管理人がいても、こういう事態になるのですから。上記のマンションにしても、管理組合の役員が、一回でも、その「Aさんの豪華個室」を見れば、「これはおかしい」と思ったはずです。

「手抜き工事を見逃してもらう」「追加工事をプッシュしてもらう」などの、Aさんの役割。個室や接待にかかった費用は十分回収できたようです。

無関心な管理組合が、結局は損をするのです。