管理人は超つらいよ   
マンション管理最前線

知ってる人は知っている 南京錠の秘密
&エレベーターの鍵の疑惑&配電盤の鍵も





  2018/2
こういうことを書けるマンション管理士はいないでしょうね。現場の管理人だからわかることです。


「南京錠」

南京錠という鍵があります。上記イラストのような鍵であり、皆さん、いろいろなところで見かける有名な鍵ですから、よくご存知だと思います。

マンションというのも、「鍵」がいっぱいある場所でして、当マンションにも、20個以上の南京錠が使用されています。(このマンションは「東棟」と「西棟」の2棟からなる建物なので、エレベーター機械室も、屋上の貯水タンクも2個ありますから、必然的に鍵の数も倍になります)

「南京錠が20個以上もあると、その錠前を開ける”鍵”の数も20個以上あるんですから、保管とか使用方法とか大変じゃないですか?」



っていうふうに、読者の皆さんはお思いになるでしょうが、実は、これが、全然大変じゃないんです。

実は、20個以上の錠前が、たった、1個の鍵で全部開けられるんです。

「そんなバカな?  それじゃあ、鍵の意味がないじゃないですか?」って、皆さんおっしゃると思います。はい、私も同感です。
では、なぜ、こんなことになったのか? 順序建ててお教えします。

実は、南京錠の鍵はもともと「数種類」しかないのです。まあ、実際にはたくさんの種類があるようですが、現場で使うのは「数種類しか」ありません。

「なんで種類が少ないのか? 鍵の波型の形を変えれば、何百種類も作れるはずでしょ?」って言うかもしれませんが、これは、現場サイドの要求なんです。

たとえば、大きな工場があるとします。その工場の周辺を囲うフェンスがあり、そのフェンスには、6箇所の出入口があります。6箇所全部鍵が違うと、その工場の職員は、外周フェンスに関するものだけで、6個の鍵を持たないといけません。工場といえば、外周フェンスだけでなく、その他にもいろいろな南京錠があるでしょう。それらすべてを「別のもの」にすると、鍵を数十個持っていないといけないことになります。警備員なんかは、その工場内の全部の鍵を持って巡回したりしますから、それこそ、100個とかの鍵になってしまい、持ち歩くのも、使うのも大変です。

このため、現場サイドの要望で、「外周フェンスに関してはすべてAタイプという同じ鍵にして欲しい」「工場内の倉庫や物置の鍵はすべてBタイプの鍵にして欲しい」といったことで、結果的に、共通の鍵を使用することになります。





マンションも同様で、大きなマンションになると、錠前が多数あり、鍵をたくさん持っていないといけなくなります。最低賃金で働く、かつ、頭のボケた老人管理人では、そんな難しい管理はできません。鍵は少ないほうがいいです。

また、マンションの場合、「夜間とか休日とかの緊急時のこと」を考えないといけません。
「深夜に、水道ポンプの故障が発生した」といった場合、管理人ではなく、深夜対応できる外注の設備業者が緊急出動することがあります。この時に、「まずは管理室に入ってもらって、その管理室のデスクの鍵を開けて、デスクの引き出しの中に入っている鍵の束の・・・・のところから・・・・を取り出して・・・・」なんていうのは大変なんです。
それよりも、「あそこのマンションのポンプ室の鍵はAタイプだからよろしく」「はい、Aタイプですね。了解です。出動します」っていうふうにしたほうが迅速に動けます。そう、そういう緊急出動業者というのは、ある程度の種類の南京錠を持っているため、管理会社から借りたり、管理室の中に入って、それ専用の鍵を取り出して使用する、といったことが不要で、自分たちであらかじめ持っている鍵で、現場の鍵を開けることができるのです。

そういった「利便性」も考えて、「実は数種類しかない」ってことになっています。

そういうわけで、当マンションも、南京錠に関しては、以前は「数種類」あったのですが・・・・・・ これが、ある出来事をきっかけに変わってしまいました。

それは「
大規模修繕工事」です。
大規模修繕工事というのは、実は、鍵もたくさん使用する工事です。もともと、そのマンションにあった鍵の他にも、外壁に足場をかけると、そこから侵入する泥棒がいるから、そこの入り口にも新たに南京錠を設置する、仮設の資材置場の鍵も必要、といったように、鍵が増えるのです。
さらに、こういう工事は「下請け」「孫請け」など多層構造になっており、「元請け会社に鍵を預ければそれでOK」というわけではありません。下請けにも鍵を渡さないといけません。こうなると、ますます鍵の管理が複雑になるため、当マンションの大規模修繕工事を担当した工事会社は、自分たちが作業しやすいように「鍵を全部交換させていただきます。一種類のものだけに」と言って、勝手に鍵を「Aタイプだけ」に全部変えてしまったのです。こうすると、下請けの出入り業者にも、鍵を渡すことなく、「Aタイプで全部開くから」と一言伝えるだけで済むのです。
これ、「費用は工事会社のほうで負担します」ってことだったので、設計監理会社の現場監督者も、「いいですよ」ってGoサインを出しました。というか、管理人である私には、なんの断りもなく無断でやられたことで、私はあとから「変えたよ」って聞いただけです。なんともひどい話です。

そして、工事が終了したら、元に戻すのかと思っていたら、「え? 古い鍵は捨てちゃいましたよ」とか、ふざけたことを言って、結局、今現在でも、当マンション内の20個以上の南京錠はすべてAタイプであり、ひとつの鍵で全部開くのです。

これは、私ら管理会社サイドにとっては、「非常に楽」なことですが、防犯のことを考えると、「
非常に危険」です。なんたって、容易に手に入る「汎用の鍵」1個で、すべての南京錠が空いちゃうんですから、泥棒からしたら、こんな楽なことはないです。

というわけで、現在、当マンションンの「防犯体制」は非常に脆弱な状況です。でも、これ、管理人の責任じゃないですから。


今、世間では「大規模修繕工事における不正(主にお金に関すること)」が話題になってますが、大規模修繕工事では、上記のようなことも行なわれます。設計監理する人は、そういう点もちゃんとチェックしないといけないと思います。
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続いて、エレベーターのお話。これは知り合いの管理人仲間から聞いた話なので真実かどうかは定かで無いです。話半分でお読み下さい。

エレベーターって、上記イラストの中にもあるように、扉の右側(もしくは左側)に呼び出しボタンがありますが、実はこの部分の下の方に鍵穴があることが多いです。この鍵穴には「運転」「休止」という文字が書いてあって、この鍵は、エレベーターの点検とかする際に、「休止」にして、エレベーターを止めるのに使われるのです。

そして、この鍵なんですが、当然、エレベーター会社は持っているとして、各マンションの管理室でも保管しています。話をしてくれた管理人さんによると、「あの鍵って、エレベーター会社ごとにほぼ決まった共通の鍵じゃないの?」ってことです。というのも、彼が実験した結果、「勤務先のマンションのT社製のエレベーター用の鍵を、たまたま、自分の自宅のマンションもT社製のエレベーターで、かつ、鍵穴の形状が似ているので、試しに、勤務先の鍵を自宅に持ち帰って差し込んでみたら、使えた」ってことなんです。

こういうのも、「点検係員が多数の鍵を管理しなくていい。手持ちの鍵で、どこでも、全部解錠できる」っていう、エレベーター会社側の利便性を考えてのことだと思いますが、その鍵は管理人も持ってますので、管理人が悪意を持って、他のマンションのエレベーターを勝手に停止することができるって、ちょっと怖いと思います。テロリストが、悪用したら大変なことになります。

上記2点、鍵に対する信頼性がなくなる話でした。何事も盲目的に信用してはいけませんな。


<追記>
ついでに電気関係の鍵のことも調べてみましたら、これまたすごいことを発見してしまいました。

https://electric-facilities.jp/denki8/key.html

タキゲン製造のNo200キーは、極めて広く普及しており、国内の分電盤の鍵のほとんどが「No200」で開くといわれるほどに普及している。電気管理者にとっては、同じキーで管理できるのは非常に便利であり、緊急時でも持参したキーで盤を開け、内部機器の点検や修理が可能となる。



え? 「ほとんどが200番?」って、そんなんでいいの???

東京五輪に向け、テロ対策が叫ばれている今、現実社会はこんなだったんですねえ。まさに、日本人の「性善説信仰」のなせる技かもしれません。公安の人、これ、大事なことかもしれないよ。配電盤の中に爆弾仕込むとか、簡単にできるってことだよ。








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