管理人は超つらいよ   
マンション管理最前線

飲食店の「大盛り無料」から考える 管理委託費と最低賃金





 2018/9



よく行く、ファミレスの「ガスト」。
ここ、昼は「ランチのご飯、大盛り無料です!」というのをやっています。私は背が高いためか、こっちから何も言わないのに、「お客さん、大盛りですよね」とか勝手にウェイトレスさんに言われます。

たしかに若い頃は、「大盛りサービス無料」といえばうれしくて、大盛りにしていましたが、年取ると、そんなに「ご飯をいっぱい食べたい」とは思いません。なので、「大盛り? けっこうです」と断るのが常です。

そして、貧乏性なので、「大盛り無料」の飲食店に行くと、なんか、「損をした気がする」ので、そういうところにはあまり行かないようになってしまいました。飲食店側は「たくさんの客を呼ぶため」に「大盛り無料」サービスをしているでしょうが、逆効果になる客層もある、ということを知っておくといいと思います。

そんな話を管理人仲間にしていたら、「大盛り無料っていうけどさ。結局、大盛りにしても儲かるような高い料金を払っているってことなんだよ。だから、本来は、普通盛りならお金を返すべきなんだよ」とか言い出して。「なるほど~」と思いました。

携帯電話の料金プランでも、「3000円分の無料通話がついています」なんて宣伝文句だけど、あれも、無料じゃなくて、その分のお金をそのプランに対して払っているわけです。



さて、そんなことがあったうえで、管理委託費と管理費の話をします。

私のネット仲間のマンションの管理組合では、「管理費」を「消費税自動連動制」に切り替えています。今度また消費税が上がりますが、税が上がれば、区分所有者から引き落としする「管理費」も上げないとおかしいです。でも、実際のところ、「管理費を上げる」ことは、管理組合運営上、手続き的にも意思決定的にも面倒なことなので、消費税が5%から8%に上がった際に、管理費をそれに連動して上げたところは非常に少ないです。そのマンションは、そういう面倒な手続きを不要にして、税率に連動して管理費も上げることができるように、管理規約を改定して、そういう制度を作ったのです。えらいと思います。

さて、管理費を、消費税連動値上げしない場合でも、管理会社に払う「管理委託費」は、管理会社として、税に連動して値上げしています。管理会社サイドとしては、国が決めた税率に連動させることですから、納得してもらいやすいですし、税上昇分を自社内で吸収するのは苦しいですから、当然、値上げを組合に伝えて了承してもらっています。これを断る管理組合はないでしょう。


この問題、「消費税」だと、みんな納得できるのですが、今回の焦点は「
最低賃金」です。


当県では「2009年 685円」だったのが、697 700 705 718 ・・・・ と細かく上昇し、今は、826円です。(2018年)


マンション管理業界は、世の中の最下層の業界と呼ばれていて、そこに働くものの多くは、パートとして、最低賃金の給料しか支払われないのが通常です。そして、いくら経験を踏んで、技術が向上しても、賃上げはありません。

しかし、管理組合からいただく「管理委託費」(税抜き)は、21世紀になってから、一度も価格改定が行われていません。
これをどう考えるか? 
普通であれば、労働集約型業態であるマンション管理業は「人件費」の占める割合が大きいですから、最低賃金が上がったら、人件費も上がり、そうなると、管理委託費を上げてもらわないと、企業として収益を上げられないということです。

実際のところ、うちの現場では、最低賃金が上昇しても委託費を上げていないため、会社としての儲けはなく、むしろ赤字であり、「修繕工事の手数料で損失補填する」ということをやっています。築年数が経過して工事がお多いので、それで息をしている状態です。

さて、逆に、最低賃金が上昇して人件費が上がっても、委託費がそのままで、かつ、「それでも利益がある」というマンション管理会社は、「最低賃金が低かった昔は、ぼったくりだったんじゃないか?」ってことになります。

適正な利益を上げているマンション管理会社であれば、本来は、最低賃金の上昇に合わせて、その都度、管理組合に申告し、「最低賃金が上がったので、管理委託費もそれに並行して上げてもらえませんか?」と頼むべきなんです。そして、管理組合側も、「そうですね、上げましょう」と対応すべきなんです。でも、なかなかそうはいかないのが現実社会です。

特にこの業界は、「マンション管理士資格」が創設されてから、アホな管理士が「管理費を下げます!」と宣伝しています。
(※正確には、「管理委託費を下げさせます」なのに、「管理費を下げます!」と宣伝する時点で、アホ管理士決定ですが)

アホの一例  こんなところ

その時流の中で、「値上げ」は言い出しにくい雰囲気でした。そして、管理会社の中には「値上げ」できずに、「音を上げた」ところもでてきて。。。。。

最近は、「お宅の仕事は赤字なんで、撤退させていただきます」と言い出すケースが増えているそうです。実際、うちの会社も、それを検討しています。「儲からない」「スラム化がひどい」「高齢者が増えるばかり」「問題住民ばっかり」「建物がひどくなり管理が面倒」という状態では、「大規模修繕工事が3年に一回行われている」というのでもないかぎり、管理会社が適正な利益を上げることはできません。
特に東京五輪招致決定以降、いろいろなもののコストが急上昇しているため、そういう動きが加速しています。

アホなマンション管理士さんたち、もう、「管理費を大幅カット!」とか言ってる時代じゃないよ。よく考えたほうがいいと思う。

これを読んでいる管理組合関係者も、「”お客様は神様です”なんてのは通じない時代」「これからは管理委託費は値上げの時代」ってことをよく肝に銘じるほうがいいと思います。







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